JR九州とNSDとHOYAのMD部門ReadSpeakerは、筑肥線の一部列車のワンマン化に併せて、スマートデバイスを用いた運転士向け支援アプリの拡張機能として列車内自動放送アプリを開発し、使用開始することを発表した。

JR九州では、2018年より安全性の向上、ユーザーサービスの向上、異常時の運転再開迅速化、検査効率の向上等を目的に、鉄道事業の各部門において、スマートデバイス(iPad、iPhone)の導入を進めてきたという。

その中で、運転士のヒューマンエラー防止のため、iPad上で動作する『運転士支援アプリ』を独自開発し運用。

一方で、JR九州のワンマン列車では、車両内に設置された専用機器を運転士が手動で操作することで列車内自動放送を行っているが、機器の操作性に加え、多言語対応や放送内容の柔軟な変更対応などのユーザーサービス向上やコストが課題となっていたとのことだ。

これらの課題を解決し、今後も持続可能な移動サービスを提供すること、また『運転士支援アプリ』の品質向上および機能拡充を目的としたNSDへの開発アウトソースに併せて、同じくiPadで動作し、専用の放送装置を必要としない『列車内自動放送アプリ』を開発。

運転席にタブレットを設置した様子
運転席にタブレットを設置した様子
アプリ画面イメージ

【導入日、導入線区】
導入日:2021年3月13日
導入線区:筑肥線・唐津線(姪浜~西唐津)の一部の列車(車掌乗務列車も含む)
導入車両:303系 3編成18両、305系 6編成36両
なお、今後は他路線への適用拡大を図っていくとしている。

列車内自動放送アプリの開発概要

同アプリケーションは、HOYAの音声作成ソフト『ReadSpeaker』による音声合成を活用するとともに、2020年3月にJR九州システムソリューションズと資本業務提携し、先端技術を活用しDX分野で共創を行う独立系SIerであるNSDと共同開発。

これにより、列車内自動放送を専用機器から置き換えることとし、操作性の簡素化、音声編集の低コスト化を実現するとともに、フレキシブルな放送内容変更や、幅広い地域での多言語放送によるユーザーサービスの向上を実現。

開発したアプリの特徴および各社の役割は以下に記載の通り。

<列車内自動放送アプリの特徴>

自動放送機能のイメージ

<各社の役割>

◆JR九州
これまでの鉄道運行の豊富な経験と知識を生かし、システムの要件定義・設計を実施。

◆NSD
専用機器からiPadをベースとしたアプリケーションへ置き換えることで低コスト且つ高品質なサービスを実現。

◆HOYA
音声作成ソフト『ReadSpeaker』を活用し、放送内容の変更や修正を容易にし、インバウンド対応にも優れたフレキシブルなアナウンスを可能とした。

今後は、運転士用の時刻表電子化などの機能拡張を行うとともに在来線に加え、特急、新幹線への適用に向けた汎用化を進めるという。

また、同様のニーズがあるグループ会社(JR九州バス)への展開ができるか、検討をしていくとのことだ。