JR東日本と西武ホールディングス(以下、西武HD)が包括的連携を行い、新たなライフスタイルの創造×地方創生に向けて取り組むと発表した。

両社は、新型コロナウイルス感染症をきっかけとした人々の価値観・生活様式の変容と、そこから生まれる新たなニーズに対応するべく、両社が持つ有形無形の資産を組み合わせた包括的な連携を行うとのことだ。

これにより、今までにない新しいライフスタイルを生み出すとともに、この取組みを首都圏から地方へとつなげ、移動の活性化や関係人口の増加を図り、地方創生につなげていくとしている。

具体的には、新しい働き方・暮らし方の提案、まちづくりに向けた長期的な連携、沿線活性化に向けた連携の3つを軸として、包括的に様々な取組みを進めるという。

新しい働き方・暮らし方の提案

新たなライフスタイルの創造を進めていくうえで、新しい働き方・暮らし方を実現するワーケーションを提案してくという。

これは企業にとっては企業やその社員のウェルビーイングを実現していくことにつながるとし、企業も個人も健康で幸せな状態を作るウェルビーイングへの取組みが、企業の業績を上げ、優秀な人材を継続的に確保できるため、長期的には企業価値を上げることにつながるとのことだ。

ウェルビーイングをベースに置いた、新しい働き方・暮らし方のひとつがワーケーションであり、企業や個人にとって自分らしく働ける環境、ワーケーションの推進が有益であることを社会に提案し、そのライフスタイルの浸透を応援していくとしている。

1.ワーケーションの浸透拡大

「ワーケーション」という言葉自体は注目を集めているが、大きな潮流とまでは言えず、十分なサービスを提供できていないことが課題だと捉えているという。

今回、既存のワーケーションの更なる発展性を追求することに加え、新機軸のワーケーションも提案し、「利用者」と「企業」だけでなく、「地域」も含めた三方の目的を達成する新たなワーケーションのスタイルを創出するとのことだ。

JR東日本と西武HDが連携することにより、ワーケーションにおける移動と宿泊の手配の利便性が向上することに加え、両社が長年にわたり培ってきた地域社会とのネットワークを基盤として、“地域課題の解決“や、”地方創生”の要素を取り込み、ワーケーションに新たな価値を付加する提案を行っていくという。

働き方改革やニューノーマル社会への対応を背景として、ワーケーションへの注目が集まる中で、両社のリソースを活用して様々なモデルケースを創り、法人・個人のワーケーションデビューをサポートするとともに、その需要を地域の活性につなげる役割を担っていくとしている。

①新機軸ワーケーション

<ボランティアワーケーション>

JR東日本と西武HDのリソースを活用し、法人のお客さまに対して、ボランティア活動を取り入れたワーケーションを提案。

ワーケーションに「ボランティア」という要素を新たに取り入れることで、地域社会への貢献につながり、SDGsへの取組みとして企業のブランド向上に寄与。また、ワーケーション時の「仕事」を「ボランティア活動」にすることで、従業員の労働時間管理などの課題解消にもつながるという。

プリンスホテルは、ホテルが所在する地域でボランティアを斡旋し、企業と地域社会をつなぐ役割を担っていくという。例えば、軽井沢プリンスホテルに宿泊し、いちご農園での農業体験などを行うワーケーションを提案するとのことだ。

<移住トライアルプラン>

地域が過疎化という課題を抱えている一方で、現在のコロナ禍において都会から日本各地の人口流入が増加傾向にある。

しかし、各地への移住には都会生活とのギャップや交通機関の不便さなど多くの不安があるとのことだ。

その中で、まずは両社の持つ資産を活用し、移住トライアルとしてユーザーに提案することで地方創生につなげる取組みが「移住トライアルプラン」であるという。

現在都市圏に住み、将来的に地域への移住を検討している人を対象に、利用するホテルの周辺の住環境を実体験してもらうという。

例えば、プリンスホテルでの宿泊と、JR東日本の新幹線往復チケットやレンタカーがセットになった移住トライアルプランを提案。

新幹線利用では、えきねっとポイント還元により実質的な移動コストの低減を図るとともに、ホテルでは移住トライアルをより楽しく体験できる様々なアクティビティーを用意するほか、ユーザーの要望に応じて現地で「移住アドバイザー」に移住に対する不安や疑問を相談することも可能であるとしている。

②更なるワーケーションの発展

<企業向けワーケーション(研修プラン)>

軽井沢プリンスホテルを会場とし、様々な業種への研修プランをそろえているJR東日本グループのJR東日本パーソネルサービスが研修メニューの構築を行うという。

同グループのコンテンツ(オレンジページの食体験・料理のコンテンツやJR東日本スポーツが展開するスポーツアクティビティなど)を織り込み、企業向け健康経営・チームビルディングをテーマとした独自性のある研修メニューを提案。

また、オプションとして、企業によるワーケーション活用の効果測定などに活用できる、端末を使用した「心の状態の可視化」も行う予定としている。

個人テレワークの普及に伴うチームワーク能力低下、コミュニケーション不足、心身の健康不安といった課題解決を図り、生産性向上や健康経営に寄与するとのことだ。

<テーマ型ワーケーションプラン(スポーツ)>

軽井沢プリンスホテルでの毎日のゴルフハーフプレーがセットになったグリーン商品の第2弾として、3つのプリンスホテル(軽井沢、苗場、雫石)に、往復の新幹線がセットになったワーケーションのウインター商品を発売。

この商品には、各ホテルに併設したスキー場の滞在期間中のリフト券が付属するほか、2月28日出発分までの商品を購入した、えきねっと会員(代表者のみ)に、もれなくえきねっとポイントを贈呈するなど、特典満載の商品。

なお、苗場プリンスホテルの商品に付属するリフト券の1枚は、GALA湯沢スキー場のリフト券となっていることから、例えば、最終日にGALA湯沢スキー場を利用すれば、帰りは直接「ガーラ湯沢駅」から新幹線に乗車可能であるとのことだ。

<付加価値商品の提案>

JR東日本の新幹線における極上のプライベート空間「グランクラス」と、プリンスホテルの特別な客室を組み合わせたラグジュアリー志向の旅行プランを造成​し、新たな付加価値商品を提案。

2.ステーションワークの拡大

時間や場所にとらわれない働き方、自分らしく働ける環境整備のため、STATION WORKを拡大させるという。

JR東日本のシェアオフィスSTATION WORKは、「働く人の“1秒”を大切に」を事業コンセプトに多様な働き方をサポートしており、ブース型「STATION BOOTH」を中心に、約50か所のネットワークを有している。

新型コロナウイルスを契機として、人々の働き方が大きく変化する中で、三密を避け、ゆったりと仕事ができるテレワーク拠点として、新たにプリンスホテルの各施設において、STATION WORK会員向けプランを展開するとのことだ。

STATION WORKは、こうした提携拠点を含め、2023年度1,000か所の展開を目指すとのことだ。

都心や軽井沢のプリンスホテルにおいて半日単位で快適テレワーク

2021年1月5日より、プリンスホテル各館で半日単位からリーズナブルな料金で利用可能なテレワークプランを提供。

新宿プリンスホテルをはじめとした首都圏のビジネスハブに立地する各館や、ワ―ケーション拠点として注目を集める軽井沢など、まずは6館にてサービス展開していくとしている。

②西武鉄道沿線駅の「STATION BOOTH」の展開について

駅における完全個室空間として、JR東日本沿線に展開している「STATION BOOTH」を西武鉄道沿線駅にも展開を検討。WEB会議や三密を避けたテレワークに最適な「STATION BOOTH」がさらに広がるとのことだ。

【まちづくりに向けた長期的な連携

1.MaaSを活用したモビリティサービスについて

ポストコロナ社会を見据え、JR東日本と西武HDのリソースを生かし、場所や時間にとらわれない働き方やくらしをサポートするMaaSを活用したモビリティサービスの実現を目指すとのことだ。

例えば、軽井沢を舞台とした「観光にも生活にも使っていただける地域の足づくり」や、JR東日本が2024年度頃のまちびらきを目指す「品川開発プロジェクト」と近隣の各プリンスホテルとの連携など、それぞれのエリアにふさわしい新たなサービスの提供を検討するとしている。

2.拠点開発の推進

両社の駅や、それぞれの事業エリアが結節・近接する拠点におけるまちづくりにおいて、駅やまちの活性化や価値の最大化を目指して、これまで単独では解決が難しかった取り組みを両社が連携することにより、新たな実現可能性を検討するとのことだ。

【沿線活性化に向けた連携

1.SDGsをテーマとしたスタートアッププログラム連携

JR東日本スタートアップと西武HD内の西武ラボとの連携を強化し、SDGsや地方創生などをテーマとしたオープンイノベーション推進を今後、共同で実施するとのことだ。

また、JR東日本スタートアップの事業共創プログラム「JR東日本スタートアッププログラム」や西武ラボの新規事業創出イノベーション・プログラム「SWING」の採択事例についても、相互のインフラでの活用など連携を強化していくという。

「レスキューデリ」によるフードロスの削減

フードロス削減を目的とした「レスキューデリ」を池袋エリアで来春実施予定。まだ安全に美味しく食べられるにもかかわらず閉店時に廃棄せざるを得ない食品を従業員向けに提供することで、エリア全体でフードロスの削減を目指すとのことだ。

また、サスティナビリティな取組みである傘のシェアリングサービス「アイカサ」を両社沿線への設置拡大に努めていくという。

多くの人が利用する駅や駅ビルは傘のニーズが高く、利用者の傘を持ち歩く負担や置き忘れの解消につながるほか、ビニール傘の使い捨て削減も目指すとしている。

2.イベント共催

JR東日本が高輪ゲートウェイ駅で開催している「高輪ゲートウェイ駅ポケマルシェ」と、西武鉄道が石神井公園駅で開催している「西武グリーンマルシェ」がコラボレーション。

まず3月に開催予定の高輪ゲートウェイ駅でのマルシェと西武グリーンマルシェで、新幹線を活用して商品を届け、鮮度抜群の食を楽しめる試みを企画。

さらに今後は、JR東日本各線と西武鉄道各線の相互乗換駅などにおけるマルシェの共同開催を進めるとしている。

3.JR東日本品川駅と品川プリンスホテルとの連携プロジェクト立上げによる品川エリアの価値創造

JR東日本品川駅と品川プリンスホテルは、これまで防災、各種委員会など多方面にわたって連携してきた。

今回、東海道「品川宿」といった歴史ある品川エリアに、新しい時代にも多くの人が訪れ、そして地域の人にも愛され続けるようなまちを、両社が連携して創っていくとしている。

具体的には、JR品川駅、品川プリンスホテルの各々が持つ強みの融合、事業のマッチングなどにより化学変化を起こすことで、品川エリアのさらなる活性化による価値向上を図るとしている。

取組みメニューについては、営業最前線のJR品川駅社員、品川プリンスホテルの社員で構成された「品川エリア価値向上プロジェクト(仮称)」のメンバーで決定し、順次推進していくとのことだ。

4.グローバルMICEによる地方創生

アフターコロナの社会を見据え、JR東日本とプリンスホテルのノウハウを活用したMICEの地方分散による地方創生に取り組んでいくという。

また、プリンスホテルは都内において「PRINCE TOKYO MICE CITY」として数々のMICEを実施している。

さらに、リゾートエリアにおいても、軽井沢や箱根など、その土地ならではのロケーションを生かした数々の国際会議を誘致するなど、多くの実績を持っており、JR東日本も品川駅周辺の再開発において大型のコンベンションセンターの建設を計画するなど、MICE事業への取組みを進めている。

こうした豊富なノウハウを活用し、両社でグローバルMICEをすべく、首都圏と地方を結び付けたより多様性のある提案を行い、地方創生につなげていくとのことだ。