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オンラインゲームでの対戦をスポーツ競技として行う「eスポーツ」は、オリンピック種目の候補になるなど、世界的には注目を集めている。eスポーツの世界大会の中には、賞金総額が数十億にのぼるものさえある。
世界のミレニアル世代以下の若者を熱中させ、市場規模は膨れ上がる一方のeスポーツだが、日本では浸透しているとは言えない。実際、日本人はeスポーツについてどのくらい知っていて、どのように感じているのか。
直近1年間でゲームをプレイした人は全体の4割
インターネット調査の大手「マイボイスコム株式会社」では、2018年7月にeスポーツに関するインターネット調査を実施し、10,514件の回答を集めた。
その調査によると、直近1年間でゲームをした人は全体の4割で、傾向としては男性や若年層の比率が高かった。男性10・20代では8割弱、男性30代・女性10~20代はそれぞれ6割強だった。
このことから、若い層を中心として、日本でもゲームをする人は一定数以上いることがわかる。確かにスマートフォンの画面を見ながらゲームをプレイしている人の姿は、街中でも見かけることは多い。ちなみにゲームを「ほとんど毎日」プレイするという人も、全体の20%にのぼっている。
eスポーツの認知率は43.9%
eスポーツを知っているか聞いたところ、「どのようなものか知っている」との回答は18.5%にとどまった。また「名前を聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」という人は25.4%で、これらをあわせても認知率の合計は43.9%だった。
白熱する世界に比べると、日本でのeスポーツの認知率が低いことが分かる。なお直近1年間にゲームをした人に限ってみると、eスポーツの認知率は6割、逆にゲームをしていない人では3割強だった。
eスポーツに興味がある人は6.0%
eスポーツの興味度について聞いたところ、興味がある(「興味がある」「まぁ興味がある」と答えた人の合計)のは全体の6.0%に過ぎなかった。逆に「興味がない」「あまり興味がない」の合計は81.3%にもなっており、日本でのeスポーツに対する関心の薄さを露呈したかたちだ。
なお、興味があると答えた人の比率は男性や若年層が高く、たとえば男性10~20代では3割強となっている。まずはこの層に向けてマーケティングを実施すれば効果はありそうだ。またゲームを月に2~3回以上する層では、10%台だったが、ゲームをしない層では約2%とごくわずかだった。
eスポーツについて観戦したい、情報収集したいという人はごくわずか
eスポーツに関してしてみたいことを聞いたところ、「試合を、テレビで観戦する」「eスポーツに関することをインターネット等で情報収集する」「試合を、ネットの実況動画、ストリーミング配信で観戦する(YouTube、Twitchなど)」との回答は、それぞれ3~4%にとどまった。
なお男性10~20代に限定してみると、「eスポーツに関することをインターネット等で情報収集する」が2割、「試合を、ネットの実況動画、ストリーミング配信で観戦する(YouTube、Twitchなど)」が1割強となり、他の層よりは比率が高かった。とはいえ、比較的興味があるという人が多かったこの層でも、eスポーツに対して何らかのアクションを起こそうとする人がまだ少ないといえるだろう。
eスポーツは「スポーツ競技と考えにくい」という人が多い
eスポーツについてどのように考えるかいくつかの選択肢をあげて聞いたところ「ゲームは遊びのひとつであり、スポーツ競技とはとらえにくい(20.1%)」「eスポーツという名前からは、ゲームの対戦競技をイメージしにくい(19.3%)」「実際に身体を動かすことがメインではないので、スポーツ競技とはとらえにくい(15.4%)」を選択した人は、それぞれ約2割ずつ存在した。
一方「将棋やチェスのようなマインドスポーツ(頭脳スポーツ)である(8.3%)」「反射神経、動体視力、瞬発力などの能力が求められるので、スポーツ競技である(7.0%)」との回答は、それぞれ1割未満だった。
eスポーツ自体は、他にスポーツ競技と認められているビリヤードなどと同じように、長時間に及ぶ集中力や体力、さらには反射神経も必要とされる。そのことが理解されていないようだ。
ちなみに、eスポーツが「どのようなものか知っている」層に限ってみると、「将棋やチェスのようなマインドスポーツ(頭脳スポーツ)である」「反射神経、動体視力、瞬発力などの能力が求められるので、スポーツ競技である」と答えた層もそれぞれ2割ずつ存在した。
eスポーツの普及の賛否について「どちらともいえない」との回答が約7割
同調査では、eスポーツの普及についての賛否についても聞いている。結果、賛成(「賛成」「どちらかといえば賛成」の合計)は1割強、反対意見(「反対」「どちらかといえば反対」の合計)は2割強と、どちらも少数派にとどまった。
最も多いのは「どちらもいえない」(67.1%)という回答であり、この回答にもeスポーツに対する世間の興味の薄さが象徴されていると言えるだろう。
eスポーツに関する世間の考え方もさまざま
eスポーツのイメージについて、自由な回答を求めたところ上記アンケート結果と同様に「身体を動かさないのでスポーツではない」というような超えが散見した。また「暗いイメージ」や「無理にスポーツにしなくてもよい」というように、ネガティブな回答が目立つ。
一方で、「日本人でもゲームが上手な人は多いので普及すればいいと思う。」や「ゲーム好きが活躍できるいい場所だと思う」とうポジティブな回答も中には含まれていた。
日本では2019年度からeスポーツのプロリーグが始動
日本での関心は薄いことは紹介したアンケート調査の結果からもわかるeスポーツだが、日本では2019年度からプロリーグ「Zリーグ」が始動することはご存じだろうか。このリーグでは、日本各地に点在するクラブチームが1年間のリーグ戦を行い、優勝を目指すという。
なおプロリーグの運営にあたって、規定以上の順位だった個人・チームに対してはプロライセンスも発行される予定。このライセンスを取得すれば「プロ選手」として登録され、賞金がかかった大会へも出場できるようになる。
さらなるファンを獲得するため、公式チャンネルでは月に1度クラブチームごとの「企画生放送」が行われたり、視聴者からの「いいね」の数を競ったりといった企画も予定されているようだ。日本でeスポーツが普及する足掛かりとなることを期待したい。
世界的にはeスポーツ市場の規模が700億円以上に膨れ上がっている
日本では低調なeスポーツだが、世界的にみると2017年のeスポーツ市場規模が6億9,600万ドル(約730億円)にのぼった、との推算もある。前年比でみると41.3%増と激しい勢いの伸びをみせており、2020年の予想市場規模は14億88万ドルと現在の2倍以上にもなるとされている。
ちなみに2017年のeスポーツ市場規模に関し、国・地域別にみると北アメリカが37%(2億5,700万ドル)で最も多く、中国(15%)・韓国(7%)がそれに続く。残念ながら、日本はこの波に乗り遅れている。国内でも、今後のeスポーツ普及に期待しところだ。
なお、世界でのeスポーツ市場・ゲーム市場に関する詳細は以下記事でも紹介しているので、興味のあるかたは合わせて参考にしてほしい。
eスポーツの普及には、競技に対する正しい理解が不可欠
今回のアンケート調査では、残念ながら国内でのeスポーツの認識率の低さ・関心の低さが目立っていた。「eスポーツはスポーツとは言えない」という誤解も多く見受けられる。
日本でもプロリーグが始動するなど、これから普及に向けて進んでいくが、そのためには、何よりこの競技に対する正しい理解が不可欠になるだろう。まずは、この認識の低さを改善していくことが求められる。
img:PR TIMES