INDEX
スマートスピーカーは日本では2017年を境に盛り上がりを見せている。この年にはGoogleとLINEが日本でもスマートスピーカーの販売を開始し、Amazonも「Amazon Echo」の国内展開を発表した。
一方、海外では2017年以前から米国を中心に注目されており、2016年に米国内だけで650万台の音声アシスタントデバイスが出荷されている(「The 2017 Voice Report by Alpine (fka VoiceLabs)」)。また、米調査会社Strategy Analyticsによると、2018年1月~3月におけるスマートスピーカーの世界出荷台数は940万台を突破したという。
このようにスマートスピーカーが盛り上がりを見せる中、株式会社スマート・ソリューション・テクノロジー(SST)が運営する快適なスマートフォンライフを創造するために研究調査しているスマートサウンドラボ(SSL)では、スマートフォンの音声アシスタントの利用について北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県在住の20代~50代の男女200人に実態調査を行った。今回はその調査結果をご紹介する。
SiriまたはGoogleアシスタント利用者は42.7%
この「スマートフォンの音声アシスタント実態把握調査」の調査方法はインターネットリサーチで、調査対象は北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県在住の20代~50代の男女200人。調査は2018年5月に実施した。
まず、全員にスマートフォンの音声アシスタントSiriまたはGoogleアシスタントを利用したことがあるかを聞いた。その結果、どちらか一方、または両方を利用したことがあると回答したのは全体の42.7%だった。
総務省の「平成29年版『情報通信白書』」によると、スマートフォンの世帯普及率は71.2%であり、日本はiPhoneシェア率が約70%であるという。これにより、同社ではSiri利用者がGoogleアシスタント利用者より高いという結果は予想通りとしている。
次に、音声アシスタント利用者に、音声アシスタントを日常的に利用しているか聞いた。その結果、日常的に使用していると回答したのが、Siriで18%、Googleアシスタントで21.3%という結果になった。
ここで注目されるのは「最初は利用したが、だんだん使わなくなった」の結果だ。Googleアシスタントは14%にとどまったのに対し、Siriは20%である。性能や機能に大きな差はない中で、このような結果がでた理由が、利用目的を調査して明らかになったとしている。
ただ、この二つについては、他の調査や比較ではGoogleアシスタントのほうが、使いやすさや性能などでSiriを上回るとの声も多く、全世界的にみると、また違った結果になるかもしれない。
普及のためには音声のみならずさらなる機能追加が必須
そして、音声アシスタント利用者に、「どんなときに音声アシスタントを利用しているか」について聞いたところ、Siriの利用者は「検索・調べもの」が一番多かったものの、2位が「暇つぶし」という結果になった。
それ以下も「タイマー」「天気」など全体を見ても、用途にばらつきがあることがわかる。対してGoogleアシスタント利用者は「検索・調べもの」が圧倒的に多い。
この結果は、Googleという世界最大手の検索サイトを有している会社の製品であるGoogleアシスタントに検索機能を求める、という当然の結果なのかもしれない。
この結果から、「検索といえばGoogle」という企業イメージがユーザーに定着・浸透していることで、音声アシスタントの利用目的が明確だったことや、定着度に差が出たことが考えられるとしている。
米国におけるスマートスピーカー市場においても、シェア1位のAmazon Echoを2位のGoogle Homeが猛追している。「音」というインターフェースの波は確実に浸透しつつある。
こういった現象についてSST所長の安田寛氏は「マイクとスピーカーは唯一残されたライセンスフリーのレガシー」と表現。さらに音の新時代を強調している。また、「これにAIといった新しい技術が加わることで、ユーザーの生活はもっと便利になりうるがまだ課題もある」とコメントしている。
安田氏によると、SSLでは、google Home、SONY スマートスピーカーLF-S50G W、LINE Clova WAVE、Amazon Echo Dotを購入し、スマートスピーカーを実際に利用しその実態を調査したという。
天気、タイマーセット、検索、メッセージの送信、音楽の再生など、音声認識に関してはどのスマートスピーカーも高性能であることは間違いない。しかし、音声コマンドの制御だけでは、スマートスピーカーが日常生活に浸透することは難しいというのが安田氏の見解だ。
この課題について安田氏は「普及させるには、スマートスピーカーと会話が成立し、その中から情報や楽しみが得られる機能が必須」とコメントしている。
トヨタの「Concept-愛i」が示すAIの在り方
この調査の結論として、スマートスピーカーが日常生活に普及するためには音声コマンドの制御だけではなく会話の成立などが必要であることがわかった。では、具体的にはどのようなものになるのであろうか。その一つの形としてトヨタ自動車の取り組みがある。
トヨタ自動車株式会社は、コネクテッドカー分野でLINE株式会社と協業し事業展開している。これは、LINEが開発するクラウドAIプラットフォーム「Clova」と、トヨタをはじめとする自動車メーカーや自動車周辺機器メーカー各社が推進する車載機器とモバイルアプリの連携規格「Smart Device Link(SDL)」を活用し、協業の可能性を探っていくというものだ。
トヨタ自動車はこれまでに、同社が考える自動車におけるAIのあり方について何度か方向性を示してきた。その一つとして、2017年1月に米ラスベガスで開催された民生用最新技術の見本市「CES 2017」にて、同社の考える次世代の運転体験を体現したAI搭載のコンセプトカー「Concept-愛i(コンセプト・アイ)」を発表した。
このコンセプトカーに搭載されるAI「Yui」は表情や動作、覚醒度といった運転中のデータからSNSの発信や行動・会話履歴といった周辺情報までを収集し学習する。
ドライバーを理解した上で、車側から会話を誘導したり、ドライバーの趣向に応じた話題や関心の高いニュースを提供したりといった運転中の情報提供や、趣味趣向に合わせた運転ルートの変更。疲労などのドライバーの運転時の状況に合わせて、自動運転への切り替えを促す。
これらは自動車と「話す」システムで自動運転を行うという、まさにスマートスピーカーの進化した一つの形態といえるのではないか。
AIの進化がカギを握る音声アシスタントの普及
今回の調査から日本においては、スマートフォンの普及率の割には音声アシスタントの利用率がまだ低いことがわかった。日本人の国民性なのか、スマホに「話しかける」という行為に抵抗を持つ人がまだ多いのかもしれない。
普及のカギを握るのは、やはり安田氏の見解のようにAIの進歩だろう。今後音声アシスタントの精度の向上と、できることの広がりがみられれば、さらなる拡大が見込まれる。
img:Dream News , TOYOTA