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人材の採用に関して、ソフトバンクやサッポロビールは書類選考をAIで行うことを発表している。感情や主観を省いた、客観的かつ過去のデータからの一貫性を持った選考ができるなど、これを機に導入を検討する企業が増えるだろう。現在の対面形式の選考は人工知能に代替され、面接官がAIになる日はそう遠くはないのかもしれない。
株式会社タレントアンドアセスメントは、アルバイトや専門職、一芸一能採用に特化したAI面接サービス「SHaiN EX(シャインイーエックス)」を2018年7月より提供を開始すると発表した。
これに先立ち、ティザーサイトである「SHaiN EX」を公開している。
AIが人代わりに採用面接を実施。求職者の資質を分析
SHaiN EXはAIを使用し、アルバイトや専門職、一芸一能採用に特化した日本で初のAI面接サービスだ。AIが人間の代わりに採用面接を実施し、企業が求める資質を持つ人物かどうかの分析を行い、診断結果レポートを提出するサービスである。
EXには以下の3つの意味が含まれているという。
- Express / 面接時間が早い
10分ほどの面接で分析することができる。 - Expert / 専門分野の採用に特化
企業が求める人物像や職種に合った資質を限定し、合否の判断ができる。 - Excellent / 一芸一能採用
分析項目を一つに絞り込み、企業が求める資質に沿った人物を採用することができる。
具体的な特徴としては、企業ごとに求める人物像が異なるため、応募者へヒアリングしたい質問項目を選ぶことができる。 面接時間も対面で行うより短く、いつでもどこでも受検が可能なため、応募者は手軽に受けることが可能だ。これにより面接を受けるハードルが下がり、応募者の増加を見込めるという。
また、これまで応募者管理や日程調整にかかっていた時間が、実質ゼロになる。SHaiN EXは企業が定めた期間内で、応募者の都合に合わせて、24時間365日いつでもどこでも受検することが可能。応募者と面接官の日時の調整や面接会場の調整が不要になるだけでなく、応募者の面接キャンセルがなくなる。これにより、面接官の拘束時間もなくなり、業務効率が向上する。
さらに、SHaiN EXでは面接風景の録画を行なう。面接時の動画データや音声データ、評価レポートを企業の担当者へ提供する。これにより、応募者と直接対面せずとも、身だしなみや表情、声のトーンなどを確認することが可能だ。
同社は2017年10月25日に新卒採用向けのAI面接サービス「SHaiN(シャイン)」の提供を開始し、現在は大手、中堅、中小企業問わず、既に20社以上の企業で導入され、大学や専門学校におけるキャリア教育への活用や、地方行政でも導入が開始されているという。
人間による採用面接で課題視されてきた評価のばらつきが改善され、採用基準の統一が図れるようになる。また、SHaiNと連携したスマートフォンやロボットで24時間場所を問わず採用面接が可能となり、他社と選考がバッティングするなどの機会損失を減らせるようになる。
SHaiNが収集した回答データは、戦略採用メソッドに基づき、11項目の資質項目ごとに評価される。さらに総合評価を加え、9ページの「面接評価レポート」として企業の担当者へ提供する。
AIが人材を評価するHR Techとは
AIによって人材を評価するというサービスは、すでに行われている。企業の人材育成や採用活動、人事評価などの人事業務をテクノロジーの活用によって変えるというHR Tech(Human Resources×Tech)と呼ばれるサービスがある。
その典型的な一つにAIを活用した人材評価ツール「マシンアセスメント・フォー・コンピテンシー・デベロップメント」がある。これは、株式会社ヒトラボジェイピーが提供しているAIによる社員の人事評価・能力評価システムで、日本初のサービスだという。
「マシンアセスメント」では社員に対して、業務遂行能力の高いハイパフォーマー社員が有する行動特性・思考特性を見極めながら、社員の育成やキャリア開発、評価や選抜に活用する“コンピテンシー・アセスメント”を、ビジネス目標や経営戦略に合わせて、効率的かつ戦略的に行うことが可能だ。
たとえば専門家による従来型の方法で、対象者一人にインタビュー型アセスメントを行う場合、大手人事コンサルティング会社で、実施からレポート納品まで約10日、費用は30~40万円程度かかるという。
しかし、「マシンアセスメント」では、テキストを受け取ってから納品まで最速で1日、費用は4万円でのアセスメントサービスの提供が可能であるという。
現在、提供しているマシンアセスメント・フォー・コンピテンシー・デベロップメントは、自然言語処理技術をメインとした「バージョン1」だが、随時、アップデートを進め、バージョン2では対話型システムを提供していく予定だ。
他の事例としては、リクルート傘下のIndeedがPrehireを買収することで獲得した、採用プロセスにおけるスキル評価をオンラインで行える「Interviewed」がある。
Prehireは、2015年にサンフランシスコで設立されたスタートアップだ。2015年に200万ドル(約2億1,800万円)のシードラウンド調達を実施しており、IndeedもPrehireの初期フェーズで投資を行っている。
Prehireが提供する採用アセスメントサービス「Interviewed」は、プログラミングテスト、職業技能テスト、語学スキル、パーソナリティなどをオンラインで評価できるツールだ。
ジョブスキルテストには、教育、保険、製造業などの産業ごとの分類と、会計、営業、翻訳などの職業の種別ごとの分類によって、異なるテストが用意されている。職種ごとに測るべきスキルの項目が細かくカスタマイズされており、テストの中には実務に近いシミュレーションを通じてスキルを計測するものもある。
同サービスを活用すれば、求人への応募時に実務体験のシミュレーションができるため、求職者の応募職種への正しい理解を促すことができる。求人企業はシミュレーションを通じて、求職者の資格や能力などを知ることで、マッチングの精度が高まることが見込まれるという。
人の感情によるマイナス面を払拭するAI
おそらく、今後今回のようなAIを利用した面接は広がっていくことだろう。AIだからこそ正確に、そして効率的に判断できるというメリットがあり、そこには人間の感情による偏見や根拠のない好き嫌いといった「マイナス」要素もなくなる。それだけではなく、面接機会の創出と損失を防ぐという面では採用者、被採用者ともにWinWinとなりうる。
AIが面接官になる日はそう遠くなさそうだが、最終的に採用を決めるのは人だ。AIによって自社にフィットする人材を獲得できる可能性が広がったとしても、人を見る目を養うということは変わらず重要であるのだろう。
img:SHaiN EX