INDEX
このところ日本のYouTube界隈では「ヒンディー語どっきり動画」をきっかけに、日本人が英語以外の言語を流暢に話し、現地の住民を驚かせる企画がトレンドとなっている。
こうした動画の影響で、英語以外の言語に興味を示す視聴者も少なくないようだ。
しかし、ヒンディー語などの言語を学ぶ際、障壁となるのが、学習リソースの少なさだ。いざ学習したいと思っても、体系的に学ぶためのテキストや音声リソースを探すのに一苦労することがほとんど。語学学習アプリも多数あるが、数が多すぎることに加え、ハイクオリティと呼べるものが少なく、期待値は低いものになりがちだろう。
一方、バイリンガル/トリリンガルが珍しくない欧州では、EdTech企業によって世界の様々な言語を効率的かつ体系的に学ぶ、語学学習のスマート化が進んでいる。ロボットやアプリを活用した語学学習がニューノーマルになりつつあるようだ。
ヒンディー語も学べるエストニア発の語学学習アプリ「Drops」
エストニア・タリン発の「Drops」は、2018年のグーグル・ベストアプリ、2019年のファストカンパニー世界革新企業アワードなどを受賞した注目の語学学習アプリだ。
語学学習にゲームの要素を盛り込んでいることや魅力的なビジュアルデザインなどが評価されている。同アプリで学べるのは35以上の言語。英語やスペインなどの欧米諸国の言語に加え、日本語、タイ語、ベトナム語などアジア圏の言語もカバーしている。特徴的なのは、ヒンディー語やハワイ語など、通常独学するのが難しいと思われる言語を含んでいることだ。スタートアップメディアVetureBeatによると、iOSとアンドロイド含め多言語学習アプリとしてハワイ語が学べるのはDropsが初めてという。
Dropsは様々な言語をカジュアルに学びたいという人向けのアプリといえるだろう。毎日5分のセッションでボキャブラリーを強化する。
デザインに対する評価が高いDropsでは「ビジュアル・ディクショナリ」という辞書機能を用意しており、イラストと音声とともに単語の練習/確認が可能だ。デザインのカジュアルさや一貫性が単語学習のストレスを幾分か軽減してくれる。
「ビジュアル・ディクショナリ」は、街/ショップやビジネス/テックなどのシーンごとに単語項目を分類しているが、昨今の環境意識の高まりを反映し、その中に「Climate Awareness(環境意識)」の項目を設けている。
2020年、Dropsは8〜17歳向けにデザインされた姉妹アプリ「Droplets」をローンチ、若い世代の多言語学習も促進する構えだ。
2020年8月5日時点、DropsのAndoroidアプリのレビュー数は20万件以上、レーティングはほぼ満点の5に近い高評価。iOSアプリも、4万1,800件のレビューが寄せられており、こちらのレーティングも4.8と非常に高い数値となっている。
フィンランドの小学校では、ロボットによる語学学習導入?
フィンランドでは、早期の外国語学習にロボットの活用が進んでいるようだ。
同国発のEdTech企業Utelias Technology(2017年創設)が提供する語学学習ロボット「Elias Robot」がフィンランド各地の小学校に導入され始めているという。
ロボットのハードウェアは、フランス発の「Nao」やソフトバンクの「Pepper」を採用し、Utelias社はそのロボット上で動く、インタラクティブな語学学習アプリを開発している。
このロボットとアプリを活用することで、これまでにない語学学習が可能となる。
具体的にElias Robotは5つステップで子供たちの学習効率を促進する。
まずはウォームアップ。歌、ゲーム、読み聞かせなどで、子供たちの関心を高めるとともに、学習のためのウォームアップを行う。
2つ目は反復練習。ロボットがイラストやジェスチャーによって単語のヒントを示しつつ、子供たちの反復練習をサポートする。
3つ目は反復練習に続き、単語を記憶するためのエクササイズを実施。
4つ目は、ロボットとの対話形式で覚えた単語・表現を使うエクササイズを行う。
5つ目、仕上げとして、ロボットとの自由なディスカッションを行い、応用力を鍛える。
欧州メディアEU-Startups(2020年2月10日)によると、Elias Robotはフィンランドの小学校で広く導入されているとのことだ。
AR/VRを活用した語学学習のかたちも
VRとARを活用した語学学習プログラムを開発するルーマニア発のMondly。30以上の言語をAR/VRによるイマーシブ空間の中で学習することが可能だ。
2016年にはAppStoreの「ベストアプリ」に選出、2017年にはフェイスブックの「App of the Year」とGoogle Playの「Editor’s Choice」に選ばれるなど、数年前から注目されたきた同アプリ。現在、Google Playでのレビュー数は31万件以上に上る。最大5ポイント中、4.7ポイントの高評価を獲得している。
Mondlyウェブサイトによると、同アプリは190カ国以上で3,000万回ダウンロードされたとのこと。
この先、語学学習の学習効率を高めてくれるアプリが一層普及すれば、日本でもバイリンガルやトリリンガルはニューノーマルとなるのかもしれない。
[文] 細谷元(Livit)