インドネシアにおけるドローン活用の可能性

2018年、インドネシアに東南アジア初となるドローン工場がお目見えした。

インドネシアの大手メディアが伝えたところでは、ドローン工場は同国複合企業ファミンド・グループ傘下のファミンド・イノファシ・テクノロギ社がジャワ州に開所。この工場にはインドネシア初となるドローンパイロット養成学校も併設されている。

この工場では、産業向けと警察/軍事向け2種類のドローンを製造する計画という。
これまでインドネシアではドローンを中国と米国から輸入していたが、国内生産できる体制を整え依存度を低減することが狙いのようだ。

インドネシアは広大な土地を有する島国であることを考慮すると、ドローン導入による経済効果は非常に大きなものになる可能性がある。

たとえば海上保安。『ワールド・ファクトブック』によると、インドネシアの沿岸総延長は5万4,000キロと世界3番目の長さを有している。世界1位はカナダで20万キロ、2位はノルウェーで5万8,000キロだ。日本は2万9,000キロで世界6番目の長さだ。

インドネシア沿岸・沖では、海賊、密航、密輸など数多くの問題が発生しており、インドネシア政府はこうした問題への対策を急いでいる。しかしロイター通信によると、シンガポールを除く東南アジア各国では海上保安能力を高めようとしているものの、実際は予算が厳しい状況にあるという。

日本の海上保安庁は巡視艇(小型の船舶)238隻、巡視船(大型の船舶)127隻の計454隻を保有している。一方、ロイヤルインスティテューション・オブ・ネイバル・アーキテクツによると、インドネシアの巡視目的の船舶数は2016年9月時点で150隻と伝えている。沿岸総延長が日本の2倍となるインドネシアにとって、十分な数でないのは明白だろう。


巡視船(マレーシア海軍)

インドネシアは警備・監視能力を高める必要があるものの予算が限られているという状況だが、ここにドローン活用の大きな有効性があると考えられる。

2016年にスウェーデンの企業から偵察用ドローンを購入しているようだが、予算が厳しい状況を考慮すると、国内生産にシフトしていくのかもしれない。

農業大国インドネシア、ドローン活用で食糧危機打開なるか

沿岸距離世界3番目のインドネシアは、コメの生産でも中国、インドに継ぎ世界3番目だ。さらに名目GDPに占める農業分野の比率でもナイジェリア、インドに継ぐ3番目となっている。

インドネシアの名目GDPに占める農業分野の比率は14.3%。コメのほかに、パーム油、ゴム、ココア、お茶、キャッサバなども生産する農業大国である。ちなみに日本の名目GDPに占める農業比率は1.2%だ。


インドネシア・バリのコメ収穫の様子

農業分野のドローン活用の有効性が説かれて久しいが、インドネシアでも農業へのドローン導入は進んでいるようだ。

ドローンやIoT技術を活用したスマート農業がどこまで食糧生産を高めることができるのか。数十年後に起こるといわれている世界の食糧危機を回避できるどうか、インドネシアの取り組みが大きく左右する可能性があり、その動向は注目に値する。

2017年に改訂された国連「世界人口予測」では、現時点で世界人口は76億人とされている。この先毎年1億人近く増えていき、2030年までに86億人、2050年までに98億人に達する見込みだ。

ここまで人口が増えると現在の食糧生産規模では、世界人口すべてに必要な食糧を与えることができないといわれている。2050年までに現在の食糧生産高を60〜100%増加させる必要があるという試算もある。

このことはあまり知られていない事実かもしれないが、着実に忍び寄っている危機であり、各国対策が求められているのだ。

ドローンなどを活用するスマート農業では、農産物の健康状態を的確に検知し、水や肥料の量を最適化し、無駄を省くことが可能となる。このため環境への影響を低減しながら生産性を高めることができるのだ。

農業大国インドネシアがドローンなど活用して、どこまで食糧生産高を拡大できるのか、その成果に期待したいところである。

このほかインドネシアでは、火山の監視、交通渋滞、森林火災などの課題を抱えているが、これらの分野でもドローンの活用が見込めるかもしれない。