株式会社オプティムは6月9日、固定翼ドローンによる補助者なし目視外飛行の実証実験を実施すると発表した。本取り組みは農林水産省との連携によるもので、農業用ドローンの補助者なし目視外飛行の実証実験は2020年6月10日に佐賀県で実施予定だ。また、オプティムの実証実験で使われる機体は固定翼ドローン「OPTiM Hawk」というもの(本稿一番上の画像)。オプティムが開発した機体で、航続距離100km以上、滞空時間1時間以上を実現する。

人手不足の解消、そして「空の産業革命レベル3」の実現へ

昨今の農業分野においては、現場の人手不足が深刻な問題となっている。この課題の解決のために、ドローンの補助者なし目視外飛行を活用することで農作業の省力化や、生産性の向上などにつながると考えられている。

そこで農林水産省は2019年7月に、農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会の枠組みを活用し、「農業分野における補助者なし目視外飛行実証プロジェクト」の実証プランを募集した。この募集の結果、オプティムのドローンが農業分野において初となる補助者なし目視外飛行の実証に選ばれた。

ドローン、つまり無人航空機においては、国土交通省が補助者なし目視外飛行に関する要件(外部サイト)を取りまとめている。

要点をまとめると以下だ。

目視外飛行をするための技術基準は、機体に自動操縦システムを装備し、機体のカメラ等で機外の様子を監視できること。地上において無人航空機の位置・異常の有無を把握できること。電波断絶等の不具合発生時に危機回避機能が正常に作動することだ。ほかにも、操縦技量や安全確保の体制などの面で技術基準が設けられている。

また、ドローンにおける補助者の役割は、「第三者の立入管理」「有人機等の監視」「自機の監視」「自機の周辺の気象状況の監視」があたる。

そして、今回の実証実験でも活用される補助者なし目視外飛行をするためには、先述した目視外飛行の技術基準を満たし、補助者の役割を機体もしくは地上設備などで代替することが必要だ。しかし、現在の無人航空機の機体や地上設備などの技術レベルでは、補助者の役割を完全に担うのが困難なことから、第三者が存在する可能性が低い場所での飛行や、想定される運用で十分な飛行実績を有することなどが条件に付けくわえられている。

今回のオプティムの実証実験は、佐賀県杵島郡白石町にある北有明場外飛行場で実施される。飛行経路は、北有明場外飛行場より離陸し、北東に6km飛行し、対地高度145mの上空から約225haの農地を数往復し撮影。撮影後は同飛行場まで戻り着陸となっている。実証内容は、農業用ドローンの補助者なし目視外飛行による農地の空撮だ。

ちなみに、オプティムの実験では「空の産業革命レベル3」の実現が目的のひとつである。空の産業革命レベル3とは、無人地帯(今回で言えば飛行場から農地)での補助者なし目視外飛行のことだ。経済産業省が2019年6月に発表した「空の産業革命に向けたロードマップ2019 ~小型無人機の安全な利活用のための技術開発と環境整備~」(外部サイト)では、2022年度以降に次のステップである「空の産業革命レベル4」を目指している。レベル4は、有人地帯での飛行を指しており、都市の物流や警備への活用を狙っている。

キャベツ農家の出荷量をドローンとAIで予測

農業におけるドローン活用は、すでに着手している企業も少なくない。

Ledge.ai編集部では2018年に株式会社スカイマティクスに対して取材している。同社では取材当時、ドローンとAIを活用してキャベツ収量予測の実証実験を進めていた。

農業現場では、いまだ農家の勘による収穫量を取引先に伝えることがある。だが、勘である以上、外れることもあった。

ドローンを活用したスカイマティクスによる実証実験は、2週間に一度、圃場での撮影で実施していた。1回の飛行で150~200枚程度の写真を撮影した。

スカイマティクスのシステムエンジニアは「数百枚の写真をつなぎ合わせることで、圃場全体を1枚の高解像画像にまとめることができます。その画像は、キャベツを1個ずつ分析できるほどの解像度があります」と語る。

実際にドローンが撮影した写真を見ると、広大な圃場を巡回するよりも、効率的に育成状況を把握できたそうだ。また、育成状況をAIが分析したデータをもとに肥料を追加するなどで、作業自体の効率化も向上したという。

オプティムと農林水産省との取り組みも含め、AIやドローンを使って農業における人手不足問題を解決させる動きは広がっている。

いずれは、農作業自体をドローンやAIが担い、ドローンや農場を人間が監視もしくは管理するという役割分担する日が来るかもしれない。