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サステナは“意識”から“習慣”へ──Levi’sが仕掛ける、Z世代のリペア文化再設計

サステナビリティは、いつの間にか特別なテーマではなくなりつつある。日用品の選び方から食の好みまで、環境配慮は生活の中に入り込み、「関心の高い人だけがやるもの」ではなくなってきた。

ファッションも例外ではない。Z世代の間では古着やリユースといった選択肢が広がり、サステナビリティを“正しさ”として掲げるよりも、自然に取り入れる感覚が強まっている。

ただ、古着を選ぶ、リユースを活用するという選択肢が浸透してきた一方で、「今手元にある服をどう扱うか」という視点は、まだ十分に広がりきっていない。特に“長く着る”という行動は、意外とハードルが高い。

「ほつれた」「ボタンが取れた」「丈が合わない」「穴が空いた」といった小さなトラブルは日常的に起こるが、そのたびに「直して着続ける」ことが自然な選択肢になるかというと、そう簡単ではない。

自分で直すのは難しそうだと感じられることに加え、修理店がどこにあるか分からず、その費用感も想像しにくいため、“まだ着られるのに着なくなる服”が増えていく。

この“気持ちはあるのに行動につながりにくい”ギャップに向き合うのが、Levi’s(リーバイス)の新プロジェクト「Levi’s® Wear Longer Project(以下、Wear Longer Project)」だ。これは、服の直し方や手入れ方法、カスタマイズを学べる機会を提供し、「捨てない選択肢」をより身近なものにしていく取り組みである。

本記事ではWear Longer Projectを起点に、Z世代のサステナブルファッションが“意識”だけでなく“習慣”として根付くために何が必要なのかを整理し、日本市場への示唆も含めて読み解いていく。

“サステナな選択”は浸透したが、「長く着る」は意外と難しい?

ファッションにおけるサステナビリティというと、以前は「環境にやさしい素材を選ぶ」「エシカルブランドを選ぶ」といった、“購入時点”の意思決定が中心であり、現在もそれは重要な視点だ。ただ近年、古着やリユースといった選択肢が以前より身近なものとして語られる場面が増えている。

理由は1つではない。価格面の合理性のほか、1点もので“自分らしさ”が出せることも魅力になっている。新しさを追いかけるだけではなく、既にあるものからスタイルを組み立てる感覚が広がっているともいえる。

ただ、その流れの中で見落とされがちなのが、「買った後」のフェーズだ。服は買った瞬間がピークではない。むしろ、着続けることで形が馴染み、素材の表情が変わり、持ち主の生活に溶け込む。デニムはその象徴だ。履き込むほどに色落ちやアタリが出て、「時間」そのものがデザインになる。

それでも現実には、小さな破れやほつれがきっかけで“着なくなる”服は少なくない。直せば着られるはずだと分かっていても、直すことが生活の中に組み込まれていないからだ。

「長く着る」は、エコな精神論というより、行動の設計の問題であり、必要なのは善意よりも手段である。

Z世代が感じているのは、意識の低さではなく“スキル不足”という現実

Wear Longer Projectが興味深いのは、Z世代に対して「もっとサステナビリティを意識しよう」と呼びかけるのではなく、「長く着るためのスキルが足りない」という課題に焦点を当てている点だ。

Levi’sが2025年に米国で委託実施した調査では、Z世代の35%が「修理やパーソナライズの方法を知っていれば、服をより長く着る」と回答した。一方で、41%は修理やカスタマイズのスキルがないと答えている。

この数字は、意識の高低を測るものではなく、むしろ「やりたい気持ちはあるが、方法が分からない」現実を映している。つまり課題は、“関心の不足”ではなく“実践のハードル”なのだ。

このハードルは個人の責任に還元できない。針と糸に触れる機会がなければ、修理はますます遠いスキルになる。修理店の場所や料金体系が見えにくければ、頼むことも難しくなる。結果として、服は「捨てないが着ない」状態になり、クローゼットの奥で役割を失っていく。

サステナビリティの議論が“意識の話”で終わってしまうと、ここが見落とされる。Wear Longer Projectは、その落とし穴を埋めにいくプロジェクトだ。

Levi’sが始めたWear Longer Projectとは?

Wear Longer Projectは、若い世代が「repair, refresh and reimagine(修理し、よみがえらせ、再解釈する)」ためのスキルを学べるよう設計された取り組みである。若い世代の間で存在する知識のギャップを埋め、服の修理やケアをより身近にすることを目的としている。

プロジェクトの特徴は、教育の仕組みを丁寧に組み立てている点にある。Levi’sは米国の教育テクノロジー(EdTech)企業のDiscovery Educationと提携し、学校や地域コミュニティ向けに無料の教材やプログラムを提供する。

具体的には、以下のような接点が用意されている。

・デジタルカリキュラム
学生やファシリテーター向けのガイドをオンラインで提供

・学校での授業(インクラス)
研修を受けた教師や、Levi’s社員のボランティアが参加

・コミュニティワークショップ
社員や地域パートナーが中心となり、修理・アップサイクル・カスタマイズを体験できる場をつくる

ここで重要なのは、プロジェクトが“情報提供”だけで終わっていないことだ。修理やケアは、知識として知るだけでは身につきにくい。実際に手を動かし、失敗しながら覚えていく領域だ。だからこそ、学校やコミュニティというリアルな場で体験をつくる設計が効いてくる。

サステナを“努力”から“習慣”に変える、ブランドの新しいアプローチ

企業がサステナビリティに取り組む方法は多様化している。再生素材の採用・製造工程の改善・排出量の削減、いずれも重要だ。ただ、生活者にとって分かりやすく、日常の行動に直結しやすいのは、「使い方」に関わる提案かもしれない。

Wear Longer Projectが示しているのは、“買い替えないための教育”というアプローチだ。言い換えるなら、サステナビリティを倫理の話ではなく、生活スキルの話へ引き寄せる試みである。

Levi’sはこの取り組みについて、ファストファッションが支配的な世界で「スローダウンし、クリエイティブになり、自信をつける」ことを優先すると説明している。

ここに含まれるニュアンスは大きい。修理は“元に戻す”だけの行為ではない。直した痕跡を隠すのではなく、あえて見せる。パッチを貼って遊ぶ。丈を変えてシルエットを調整する。ボタンを付け替えて気分を変える。これら修理の内容は、“延命”であると同時に、“再編集”にもなり得るのだ。

サステナビリティを続けるうえで、人はどうしても負担を感じやすい。「環境のために我慢しよう」という方向だと、モチベーションは持続しにくい。だが、修理やカスタムが“楽しい”ものになれば、努力ではなく習慣として回り始めるという点で、捉え方は大きく変わる。

日本で広げるなら?「リペア=特別」から変えるためのヒント

Wear Longer Projectの思想は、日本にも応用可能だろう。日本にはもともと「直して使う」文化があり、服の修理も決して馴染みがないわけではない。ただ、日常の中で“自分ごと”として定着しているかというと、そこには距離がある。

都市生活では特に、修理は専門店に任せるものになりやすい。いわゆる「お直し店」に頼めば確実だが、料金や納期が想像しづらいと足が向きにくい。さらに、修理を頼むほどの思い入れがある服かどうかを考え始めると、判断が面倒になってしまう。

そうした背景からも、日本で「捨てない選択肢」を増やすのであれば、必要なのは啓発より導線といえる。

例えばブランド側ができるのは、修理やケアを“特別なサービス”として扱わないことだ。購入後のケア情報をもっと分かりやすく提供する。修理の目安価格を提示して安心感をつくる。店頭で簡易リペアの体験会を開く。動画やガイドを体系化し、「SNSで断片的に知る」状態から「学べる」状態へ引き上げる。

その他にも、「文化の翻訳」も重要になる。リペアを「節約」や「我慢」の文脈で語ると、若い世代は受け入れづらい。むしろ「自分の服を育てる」「スタイルを更新する」という自己表現の言語に置き換えたほうが、Z世代の価値観に合いやすい。

“サステナブルであるべきだから”ではなく、“サステナブルであるほうが楽しいから”という設計ができる企業ほど、リペアを日常へ押し戻せるはずだ。

「買う」よりも「手入れする」が主役になる未来

サステナブルファッションは、買い物の選択肢を増やすだけでは完成しない。次に問われるのは、“今ある服”とどう付き合うかだ。長く着ることは環境負荷の軽減につながるだけでなく、スタイルを育てる行為でもある。手を入れるほどに愛着が増し、服は消耗品から相棒へ変わっていく。

Wear Longer Projectが提示しているのは、「捨てない」という選択肢を増やすための現実的な道筋だ。修理やケアを“誰でも学べるもの”として再設計し、サステナビリティを意識ではなく習慣へ変えていく。

新しく買うことは否定しない。だが、捨てる前にできることはある。直せるのであれば直す。変えられるなら変える。そうした1つひとつの行動が積み重なることで、ファッションはもっと長い時間軸で楽しめるようになる。

これからのサステナビリティは、“買い方”だけではなく、“着方”そして“手入れの仕方”が主役になっていくのではないだろうか。

文:中井 千尋(Livit

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