帝国データバンクは、全国2万5,111社を対象に「雇用過不足」に関するアンケート調査を実施し、結果を公表した。調査は2006年5月から毎月行われており、今回は2025年10月の結果をまとめたもの。

正社員不足は51.6% 「建設」が70.2%でトップ、受注を控える企業も

調査の結果、2025年10月時点で「正社員が不足している」と回答した企業は51.6%にのぼり、前年同月(51.7%)から0.1ポイント低下したものの、10月としては4年連続で半数を超えた。依然として高水準での「人手不足」が続いているとのことだ。一方、「非正社員の人手不足」を感じる企業は28.3%で、前年同月から1.2ポイント低下し、10月としては2年連続で3割を下回った。

正社員不足は51.6%

正社員の人手不足割合を業種別にみると、「建設」が70.2%(前年同月比+0.6ポイント)で最も高かった。

企業からは、「人手不足の影響により案件があっても受注できない。人件費や資材費などの値上がりを価格に反映できていない」(土木工事、奈良県)、「案件は多いが発注者予算と工事費が合わず、資材高騰や職人不足が進むと受注を控えざるを得ない」(木造建築工事、長野県)といった声が寄せられたという。

次いで高かったのは、ソフトウェア開発や情報処理サービスなどを含む「情報サービス」(67.7%、同−2.5ポイント)。「AIやDXの進展で求められるスキル水準が高まり、案件とエンジニアのマッチングが難しくなっている」(ソフト受託開発、東京都)という声があり、専門スキルを持つ人材の確保が課題となっているとのことだ。

このほか、「運輸・倉庫」(67.1%、同+1.3ポイント)や「メンテナンス・警備・検査」(63.6%、同−6.1ポイント)なども高水準を示し、51業種中8業種で6割を上回った。

業種別人手不足割合

非正社員不足は28.3% 「旅館・ホテル」が59.0%でトップも全業種6割未満

非正社員の人手不足割合では、「旅館・ホテル」が59.0%(同−1.9ポイント)で最も高かった。2023年11月以来のトップとなり、インバウンド需要の高まりによる人手不足感が表れたという。

次いで「人材派遣・紹介」(57.4%)、「各種商品小売」(54.2%)、「メンテナンス・警備・検査」(53.8%)が続いた。派遣人材の確保難や小売現場での人材不足が影響しているとしている。

ただし、非正社員の不足割合は全51業種で6割を下回り、全体的には改善傾向にあるとのことだ。前年同月にトップだった「飲食店」(53.4%)は、2年前から28.6ポイント低下し、DX化やスポットワークの導入による生産性向上が背景にあるとみられるという。

業種別人手不足割合

若手流出とスキルミスマッチが顕在化 「人手不足倒産」はすでに年間最多を更新

帝国データバンクは、こうした人手不足の影響が企業経営に及んでいると指摘している。2025年度上半期(4〜9月)の「人手不足倒産」は214件で、上半期として3年連続の過去最多を更新した。さらに、2025年1〜10月の累計では359件に達し、2024年の通年件数(342件)をすでに上回ったという。通年でも3年連続の過去最多となる見通しとのことだ。

調査では、若手人材やハイスキル人材の採用難を訴える声が多く寄せられた。「若い人材は大手企業に流れ、求人を出しても応募がない」(舗装工事、岩手県)、「案件はあるが、スキルの合う要員が不足して受注できない」(ソフト受託開発、新潟県)など、地方企業を中心に人材確保の難しさが目立った。

同社は、若手人材の都市部流出やスキルマッチの問題が続く限り、正社員の人手不足割合は高止まりすると予想している。

<参考>
帝国データバンク『人手不足に対する企業の動向調査