オーナーズは、後継者候補としての「社内承継」の打診を辞退、または保留にした経験がある人を対象に「社内承継における後継者の意識調査」を実施し、結果を公表した。

「社内承継」を辞退した人の30%、「責任の重さが理由」と回答

◼️社内承継を辞退する最大要因は「責任の重さ」

「社内承継」とは、親族関係のない社内の役員や幹部社員に事業承継することで、近年の後継者不足に対応する承継手段となっているという。

同調査にて対象者に社内承継を辞退・保留した理由を聞いたところ、「責任が重いと感じた」が29.2%で最多となり、次いで「他に優先すべきことがあった」が26.4%、「経営スキル不足」が24.5%と続いた。

社内承継を辞退・保留した理由

◼️資金面では「生活の安定」「家族への負担」に不安 家庭への影響が承継の壁に

社内承継における資金面の課題を聞いたところ、「収入や生活面での安定が不安」が22.6%、「家族への負担が心配」が21.7%、「詳細が分からず不安」が18.9%という結果に。

一方で「特に気にならなかった」と回答した人も34.9%で、資金面の受け止め方には個人差があることもわかった。

社内承継における資金面の課題をどう感じたか

◼️72.6%が、適切な支援があれば承継を引き受けていた可能性あり

適切な支援があれば社内承継に前向きになれたと思うか聞いたところ、72.6%が「はい」と回答。制度や支援が後継者の意思決定を左右する可能性があることが示された。

適切な支援があれば社内承継に前向きになれたと思うか

◼️求められる支援、1位「資金調達支援」2位「承継プロセスの情報提供」3位「メンター制度」

承継を引き受ける可能性を高める支援を聞いたところ、「資金調達支援」が36.4%で最多、「承継プロセス情報提供」が32.5%、「メンター制度」が29.9%と続いた。(n=77/適切な支援があれば、承継を受けていた可能性がある人)。

承継を引き受ける可能性を高める支援はなにか

また、具体的にあればよかったと思う支援内容は以下の通り。

<具体的にあればよかったと思う支援内容/一部抜粋>
・経営スキルを身に付けるためのセミナーや外部講習について何を選べばよいか事前に知っていればよかった
・自社の経営事情に即した経営コンサルタント
・経営リスクの事前の説明と、その最善となる対処法のレクチャー
・承継を意識した権限の段階的移譲
・バックグラウンドの明瞭化

◼️家族からの「心配」と社内幹部の「後押し」 二分する周囲の反応

承継打診を受けた際の周囲の反応を聞いたところ、家族からは「心配された」が37.7%で最多、社内幹部からは「後押しされた」が48.1%で最多となった。外部の知人、取引先、従業員については「打ち明けなかった」が最多に。

同社が9月に発表した前回調査(※)では、「会社を継いだ後継者」は40.6%が家族からの後押しがあったと回答したのに対し、今回の「承継を保留・断念した人」は同回答が8.5%となっている。

承継打診を受けた際の周囲の反応

◼️従業員・取引先・社内幹部など 業務上の関係者の反応が意思決定に影響

承継を辞退・保留とした判断に周囲の反応が影響したかを聞いたところ、「影響があった」と回答した割合は、従業員が54.2%で最も高く、金融機関・取引先が48.6%、社内幹部が47.0%と続いた。

前回調査の「会社を継いだ後継者」と比較すると、全体的に高い傾向が見られ、特に日頃から業務上で関わりのある社内外の関係者の反応が、判断に影響を与えやすいことが明らかになっている。

承継を辞退・保留とした判断に周囲の反応が影響したか

また、判断に影響を与えた周囲からの反応を一部紹介する。

<判断に影響を与えた周囲からの反応/一部抜粋>
・やはり家族からの理解が得られなかった
・家族の後押しが強ければ、また金融機関からの支援がもう少しあれば踏み切った可能性があった
・従業員から先々の見通し、環境による変化を理解しない旨を伝えられた
・専門家からの意見、リスクの可視化、リスクに見合った報酬等の処遇への保障がマスト

<参考>
オーナーズ調べ『社内承継における後継者の意識調査
(※)前回調査:『会社を継いだ後継者の8割超が、社内承継に「満足」。一方で9割以上が準備に不安を抱え、後継者育成・支援体制の不足が課題に。』