人生100年時代の到来により、いかに健康寿命を延ばすかが私たちにとって大きな課題となっている。そこで注目されるのが、スポーツの力だ。スポーツは心身の健康の保持・増進に加え、交流人口の拡大や経済・地域の活性化にもつながる可能性を秘めている。

こうしたなか、スポーツ庁は9月3日〜8日の6日間にわたり、大阪・関西万博にて『Sports Future Lab〜スポーツがつくる未来〜』を開催。コンセプトは“未来社会の実験場”。スポーツにおける先進的な取り組みを通じて、スポーツ庁が目指す社会像を体現する発見の場となった。本記事では、オープニングセレモニーの模様を中心に、イベントの内容をレポートする。

2025年はスポーツ庁発足10周年の節目

スポーツ庁は、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現を目指した「スポーツ基本法(2011年制定)」に基づき、2015年に発足した。2025年は、その10周年の節目にあたる。

オープニングセレモニーでは室伏広治スポーツ庁長官が登壇し、次のように挨拶した。

「スポーツ庁は2015年の創設以来、トップアスリートの強化だけでなく、子どもたちのスポーツを地域で支えていく取組や、共生社会の実現、健康の増進、地域・経済の活性化など、スポーツを通してより良い社会を目指してまいりました。10周年の節目となる今年、スポーツ庁の想いや関係機関の様々な取組を改めて知っていただく機会になることを願っています。我々スポーツ庁は、すべての人がスポーツを通じて心身ともに健康になり、楽しさや喜びを感じられる社会の実現を、この万博から発信してまいります。ぜひ楽しんでください」

写真提供:スポーツ庁(室伏広治スポーツ庁長官)

永尾柚乃さんとミャクミャクも参加。新聞紙&紙風船エクササイズ

セレモニーには、特別ゲストとして永尾柚乃さんと、万博公式キャラクター「ミャクミャク」が登壇。室伏長官とともに親子で楽しめるエクササイズに挑戦した。

室伏長官は「エクササイズは身近なものを使っても十分に行えます」と語り、自らが考案した新聞紙と紙風船を使ったエクササイズを紹介。

新聞紙エクササイズは、片手で新聞紙を丸めることで握力を鍛えるトレーニング。紙風船エクササイズでは、膨らませた紙風船を両手で抱え、背伸びやひねり運動を行った。紙風船を潰さないようにすることで、自然と体幹を意識できるという。

室伏長官によれば、日常生活で意識することの少ない「上下・左右・ひねる」動きを取り入れることで、普段使わない部位に刺激を与えることがこのエクササイズの目的だ。

なお、紙風船エクササイズは、スポーツ庁の公式YouTubeチャンネルでも紹介されている。

写真提供:スポーツ庁(来場者も交えて行われたエクササイズ)
写真提供:スポーツ庁(紙風船エクササイズに挑戦する永尾柚乃さん)

エクササイズを体験した来場者は「簡単そうに見えたけれど、思ったよりも身体の中心に効きました」とコメント。永尾さんは「身体を使うのはいいなと思いました。ちょっと難しいところもあったけれど楽しかったです!」と笑顔で感想を語った。

また、室伏長官は「年齢とともにいろんなものが硬くなってきてしまうので、頭と身体と心を柔軟にしていくことが大事だと思います」と来場者へメッセージを送る。

スポーツの未来を学び体験できる4つのコーナー

イベント会場には、「オープニング」「Lab(ラボ)」「ステージ」「シンボルゾーン」の4つのコーナーが設けられ、来場者を迎え入れた。

なかでも「Lab(ラボ)」には、ウェルビーイング・ダイバーシティ・エンパワーメントの3つのテーマに基づき、22の団体・企業が出展。サッカー・自転車・武道などの競技をはじめ、AI・VR・音響映像といった最新技術を活用した体験型コンテンツが並び、スポーツの未来とその可能性を体感できる場となった。

また、「ステージ」や「シンボルゾーン」では、6日間で延べ23本のプログラムを実施。各スポーツ関連団体が好事例や最新技術をプレゼンテーションし、スポーツがもたらす持続可能な社会や未来のスポーツ像について考える場が提供された。

このイベントは、大阪・関西万博のなかでも数少ない「体を動かせる体験型イベント」として注目され、盛況のうちに幕が下されている。

生活の基本となる衣・食・住に加え、スポーツは私たちに活力を与え、日々の暮らしをより豊かにしてくれる。人生100年時代を健やかに生き抜くためにも、今一度スポーツの価値を見直し、日々の暮らしに取り入れることが求められるだろう。

取材・文:安海まりこ