本コラムは、企業・団体などから寄稿された記事となります。掲載している取り組みやサービスの内容・品質、企業・団体などをAMPが推奨・保証するものではありません。

若年層向けに企業が実施したプロジェクトへと焦点を当てる企画「新世代攻略ガイド」。施策の戦略、視点、そして、どのように訴求したか具体的な手法をコラム形式で共有することにより、若年層にどうアプローチすべきなのか、彼・彼女らの考え方にどう寄り添うべきなのか、その理解を深めていく。

今回はヤマト運輸株式会社の取り組みを紹介する。

実施プロジェクト:「クロネコみっけ」

目的・テーマ 若年層とのデジタル上での接点を創出し、ネコを主役にしたエンタメコンテンツを通じて、自然にヤマト運輸のサービスや取り組みを認知させる。
戦略・手法 「クロネコマーク」×「SNSで人気のネココンテンツ」を掛け合わせたオウンドメディア「クロネコみっけ」を展開。YouTubeで「検証シリーズ」を定期配信、TikTokでは週2~3回のトレンド動画投稿、noteでは記事・インタビューを掲載。
成果 YouTubeチャンネル登録者数10万人を達成。SNSコメント数の増加やファン獲得に加え、情報番組やネット記事でも取り上げられ、マス広告に頼らないリーチを実現。

プロジェクトの概要

「クロネコみっけ」は、若年層をメインターゲットとしたオウンドメディアとして、2022年6月よりスタートしました。

「クロネコみっけ」を始めた背景は2つあります。1つは「お客様と相対する機会の減少」です。宅急便は、ネットショッピングやフリマアプリの拡大により若年層の利用が増えています。しかし、新型コロナウイルスの拡大をきっかけに、宅急便を非対面で受け取る人が増えたことや、近年の宅配ロッカーの普及から、ヤマト運輸の顔であるセールスドライバーがお客様と相対する機会が減っていました。ヤマト運輸のセールスドライバーは、全国に約5万人おり、日々それぞれの担当地域に密着して、地域のお客様にサービスをお届けしています。ヤマト運輸の顔であり、ブランドとも言えるセールスドライバーとの接点が減ることで、印象も薄れてしまうのではないかという危機を感じていました。

2つ目は「メディア環境の変化」です。若年層のメディア環境はTVよりスマートフォンへと移行しており、広告色の強いコンテンツは敬遠されがちな一方、質の高いコンテンツはSNSを通じて拡散させてくれる特徴があると思います。

こうした背景を踏まえ、ヤマト運輸ではデジタル上での接点を創出し、若年層の関心に寄り添ったコンテンツを発信することで、話題化や拡散につながる流れを生み出すことを目指し、「クロネコみっけ」を立ち上げました。

施策の戦略とアプローチ手法

「クロネコみっけ」は、ヤマト運輸が企業ロゴとして掲げるクロネコマークと、SNS上で常に高い人気を誇る“ネココンテンツ”を掛け合わせ、ネコを主役にしたコンテンツづくりにこだわって制作しました。

動画・ショート動画・記事・漫画と、さまざまなコンテンツを制作し、それぞれにエンタメ要素を盛り込み、飽きさせないコンテンツを目指しました。

開始から半年ほど経った頃、「100匹中何匹のネコが“ヤマト運輸の環境への取り組み”に興味を持つの!?」という動画が、YouTubeとTikTokで大きな反響を呼びました。この動画はいまでも再生数が伸び続けており、「クロネコみっけ」を代表するコンテンツとなっています。

この企画をきっかけに、コンテンツ「検証シリーズ」としてフォーマット化されました。

シリーズのコンセプトは、ネコに関連する検証企画をメインコンテンツとして、さりげなくヤマト運輸の商品・サービスや取り組みを紹介することです。若年層に対しては、広告色の強いブランディングは評価されないという課題に対応する企画として生まれました。

SNSはYouTube、TikTok、noteを主軸に展開し、告知媒体としてXを運営しており、それぞれのプラットフォームに合わせたコンテンツを配信しています。

YouTubeでは、「検証シリーズ」を3カ月に1本のペースで更新。コメント欄にも多くの反応が寄せられるようになり、それがエンゲージメントの向上にもつながっています。

TikTokでは定期な情報接点を作ることが重要であると考え、週2~3回の投稿を維持するようにしています。また内容はトレンドの楽曲や人気のフォーマットを取り入れつつ、その中でも特にネコ関連で流行しているコンテンツを積極的に取り入れています。

noteではブログ型SNSという特徴を活かし、ネコにまつわる記事を掲載しています。ネコに関連した著名人のインタビュー記事なども掲載することで、親和性を感じてくれる読者が増えてきています。

施策から得られた成果

同プロジェクトを開始して3年が経ったタイミングで認知度調査を行ったところ、20代の4分の1が「クロネコみっけ」のコンテンツを見たことがあるという結果が出ました。さらに、2025年8月にはYouTubeのチャンネル登録者数が10万人を達成するなど、着々と認知を拡大しています。

なかでも1番の成果は、SNSのコメントで、普段聞くことができないお客様の声を得られるようになったことです。もちろん「さりげなくヤマト運輸のサービスや取り組みを伝える動画」であるため、コメントの多くはサービスそのものではなく、動画自体を楽しんでいる内容ですが、動画を視聴したことでヤマト運輸のファンになってくれた人が多いと実感しています。

コメント数が多い要因として、起用しているキャストにも人気が出てきたことや、次回作を望む声も多くなってたことが挙げられます。さらに、「クロネコみっけ」の検証動画を情報番組やWEB記事で取り上げてもらう機会もあり、マス広告では得られないリーチの成果も生み出すことが出来ています。

今後に向けて

デジタル上での接点を創出するSNSアカウントというプラットフォームを構築できたので、今後も企画コンセプトは変えずに、日々変化する最新のトレンドを取り入れながら新たなターゲット層への認知拡大を目指していきます。

また、SNSは次々と新しいサービスが登場するなど、日々変化しています。そのため、各プラットフォームの動向やメディア全体のトレンドにも継続的に注視する必要があります。他社様のSNS運営などにも注目しながら、変化の波に乗り遅れないようにしていきたいと考えています。