インテージは、全国の15歳から79歳の男女5,000人を対象に、「防災意識」に関する調査を実施し、その結果を公表した。

■防災対策費用、1人当たり2,892円で微増 「今後かけたい費用」は前年から減少

調査によると、過去1年間での1人あたりの防災対策費用は前年より微増し、2,892円だった。一方、今後かけたい費用は5,473円(前年比95.2%)と、2023年の調査開始以降初めて、前年からの減少に転じた。

また、「今後1年でかけたい防災対策費用」は、「過去1年でかけた実際の対策費用」の約2倍という差も依然埋まらない結果に。物価高騰の影響や2024年初頭の能登半島地震後に上昇した防災意識が、徐々に薄れていることが要因ではないかと、同社は推測している。

同社は、2024年2月と8月にも防災対策費用に関する緊急調査を行っており、いずれも「今後かけたい費用」は5,674円、5,930円と高水準を示していた。特に昨年8月の一時的な伸びは、南海トラフ地震臨時情報発令による影響と同社は推測するが、今回の調査ではそこから450円余り減少した。

防災対策費用(1人当たり)

■家庭での防災対策実施率は51.8%で過去最高 防災対策は徐々に浸透傾向に

防災費用の支出変化の裏付けともいえる「実際の対策状況」にも、変化が見られた。

家庭で何らかの防災対策を実施している人の割合は51.8%に達し、過去最高に達した。「分からない」と回答した人は1割を下回り、わずかながら減少。前年から大幅な増加はないものの、経年で比較すると防災対策が進んでいる様子がうかがえる。

家庭での防災対策状況

■「主に自分が防災対策」、女性は3割超で積極化 男性も増加も、受動傾向続く

男女別にみると、男女ともに防災対策への関与は増加傾向にあり、特に女性の積極性が目立った。「主に自身が防災対策をしている」と回答した女性は年々増加し、2025年には30.1%に達した。

一方で男性は、防災対策に対して受動的な傾向が続いており、対策は女性主導で進められていることがうかがえる。

家庭での防災対策状況【男女別】

■簡易トイレの備えは前年比123.6%で増加 断水、猛暑など具体的対策が浸透傾向 

家庭での防災対策が広がる中、具体的な取り組みにも変化が見られた。2025年は「簡易トイレ」の準備が前年比123.6%と大幅に増加し、断水や避難生活への備えが強化されていることがわかった。

また、「避難所を確認・家族で共有」や「生理用品」、「持病の薬・常備薬」など、家族構成や健康状態、生活環境など個々の事情に応じた“個別ニーズ”への対応も進んでいる。

さらに、近年の猛暑を背景に、「冷房がきいた施設での高温対策」や「緑のカーテンによる暑さ対策」など、熱中症予防の取り組みも拡大。猛暑対策や防災訓練への参加も増加傾向にあり、災害の多様化に応じた備えが浸透していることがわかった。

家庭での防災対策内容【前年比TOP10】

■防災対策が「できている」人はわずか1.8% 「できていない」層も43.2%

防災対策に関しては、「できている」と回答した人はわずか1.8%にとどまり、前年と比較してもほぼ横ばいとなった。

「できている」「どちらかといえばできている」との回答の合計は増えているものの、「できていない」「どちらかといえばできていない」と感じている人も前年より増加し、全体の43.2%を占める結果に。

防災対策ができているか、できていないかの自己評価

■対策ができていない理由は「実感湧かない」が最多 知識・経済的ハードルも

防災対策が「できていない」と感じる理由を複数回答で聞いたところ、「実感が湧かず優先度が低い」が最多となり、災害の非日常性が備えの後回しにつながっていることがわかった。

次いで「何から始めればよいか分からない」、「費用が高くて難しい」、「備蓄スペースが足りない」など、知識・経済・住環境面でのハードルも目立った。

防災対策ができていないと思う理由

<参考>
インテージ『「防災意識」に関する調査結果