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2022年、「スタートアップ育成5か年計画」が日本政府より発表された。2027年度に投資額を現在の10倍、10兆円規模に拡大、さらに将来10万社のスタートアップを創出し、時価総額10億ドル以上のユニコーン企業を100社にするという計画だ。
現時点で日本のスタートアップへの投資総額は米国・中国・欧州と比べ経済力対比で少ないが、スタートアップの調達額は急激に拡大しており、1回で数十億円規模の資金調達も増えている。
こうした活況に伴い、とくにシード期のスタートアップにおいてはCOO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)、CSO(最高戦略責任者)、CHRO(最高人事責任者)など、社長の右腕となる様々な業務執行役「CxOポジション」のニーズが高まっている。実際、株式会社StartPass代表取締役ファウンダーCEOの小原聖誉さんによると、スタートアップの創業3年以内において、創業者と同じぐらい熱い気持ち、同じ目線でワークできる人材が企業の成長にとても重要とのこと。しかし、同ポジションを担える人材は不足しがちであり、スタートアップ企業の躍進のハードルとなっている。
現状を打開すべく、アクシスコンサルティングはスタートアップ経営加速クラウドを提供する株式会社StartPassと共同でマッチングサービスを開発。2024年9月にサービスを開始した「CxO-Pass」は、優秀なコンサルタントへ、スタートアップのCxOポジションを副業として提案するのが特徴だ。「ハイエンド人材にとっての副業」と「スタートアップ創業者のパートナー」という両者のニーズを汲み取ったうえで、人材不足を解消できるサービスとなっている。
今回は、アクシスコンサルティング代表取締役会長COO伊藤文隆氏に現状のスタートアップのCxOポジションの採用状況や最新動向、今後の業界動向についてうかがった。

創業者の右腕「CxO」が不足している理由
「スタートアップは幅広い役割を担える即戦力人材を求めていますが、大手企業のような高い報酬を簡単には提示できません。創業者やチームとの相性、カルチャーフィットなどソフト面も重視するため、採用にも慎重です。またCxO経験者は限られており、未経験者には挑戦の機会が限られているうえ、スタートアップ特有のスピード感や不確実性に対する不安もあります。現職で高い報酬を得ている場合は収入が下がるリスクもあります。スタートアップとCxO候補人材との間にある多面的なギャップが、CxO人材の確保を難しくしているのです。」
アーリーミドルフェーズの報酬は1,000万円前後が目安。大手企業からの転職者にとっては満足な収入ではなく、優秀な人を取り込むのが難しい実情がある。

※1 出所:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」Copyright 2023 IPA
※2 出所:独立行政法人労働政策研究・研究機構「人への投資と企業戦略に関するパネル調査」2023年10月Copyright 2003- 独立行政法人労働政策研究・研修機構
各比率は小数点以下四捨五入で表記しております。
しかし、アクシスコンサルティング株式会社が主にコンサルタントのハイエンド人材を対象に実施した調査「コンサルタントが副業として魅力に感じる副業内容」によると、「新規事業」が1位で20%、「CxO」が2位で13%だった。CxOはコンサルタント副業としては主戦場なのだ。
結果を踏まえ、副業でスタートアップのCxOを経験してみたいか尋ねたところ、「はい」が76%と興味関心の高さがうかがえる。ハイエンド人材にとってスタートアップ企業のCxOポジションでの副業はニーズが高いと判明した。

CxOポジションのマッチングサービスが増えて競争が激化している中でのCxO-Passの競合優位性
「CxO-Passには、20年以上にわたりハイエンド領域の人材のキャリア支援をしている弊社とスタートアップの10%以上とリレーションを持つStartPass、それぞれのノウハウが活かせています。2社ともに幅広い業種のCxO求人を取り扱っており、求職者のスキルや希望に合う企業との最適なマッチングが可能です。また、CEOとの直接面談を通じた決定プロセスを採用しているためスムーズな参画が実現します。一般には公開されていない求人にもアクセス可能です。副業や業務委託から関わり、相性を確認しながら次のキャリアを慎重に検討できるのも強みですね。」
副業開始後もStartPassの担当者が月次面談を実施しており、スタートアップでの就労や副業の経験がなくても安心して始められる。

ハイエンド人材にとって、CxOとして副業することのメリット
「未経験の方でも、副業を通じて実績を積むことで、将来的なキャリアアップやフルタイムでのCxOへの転職の可能性を広げられます。また、大手企業のみでの経験をお持ちの方にとって、スタートアップの働き方やスピード感を体験できる機会になるはずです。現職で高い報酬を得ている場合でも、収入を一気に下げることなくキャリアチェンジを検討できるのも副業ならではですね。」
スタートアップ創業者のパートナーとしてコンサルタントがジョインすることに対してのスタートアップ側の意見
「スタートアップの経営陣として参画する際、企業側はスキルのみならず、カルチャーフィットや価値観の一致を非常に重視します。事業を共に成長させるCxOには、専門的なスキル以上に、創業者と同じ目線と熱量でビジョンを共有できることが求められます。」
副業や業務委託から関与することでお互いに相性を見極める期間を確保できる。経験豊富な人材を早期に迎え入れることで事業の成長スピードを加速させることも可能。スタートアップ側にとっても「CxO-Pass」はニーズに合致したサービスだ。

「スタートアップ育成5か年計画」が完了する2027年度のスタートアップ業界の展望
スタートアップ育成5か年計画に基づく政策支援や、スタートアップ・エコシステムの一層の整備により、日本のスタートアップ市場はかつてない成長フェーズに突入していると予想されます。資金調達環境の改善や、起業インフラの拡充を背景に、ユニコーン企業の誕生が相次ぐ可能性も高まっています。一方で、グローバル市場での競争力の確保や、大企業との連携による新たな価値創出といった課題は依然として残るでしょう。そうした壁を突破するためには、単なる経営層の補充ではなく、成長を牽引できるCxO人材の「質」と「量」の両面での供給が、今後のスタートアップの命運を大きく左右すると考えます。今後は、優れたCxO人材をいかに早期に確保・登用し、企業フェーズに応じた経営体制を構築できるかが、スケールアップを目指すスタートアップにとって極めて重要です。実現すれば、将来的には日本発スタートアップがグローバル市場で存在感を発揮できると期待しています。」
スタートアップの成長を支えるのは制度や資金だけでなく、それらを動かす「人」の力によるところが大きい。次世代を担うリーダーたちが信頼できる人材と連携し、挑戦を恐れずに新たな価値を創出していくことこそが、日本のスタートアップ企業を世界市場へと押し上げる原動力となるだろう。