三菱電機は、AIを活用したプラスチックリサイクル向けの「スマート静電選別」技術を開発し、検証実験を開始したと発表した。

検証実験を開始する「スマート静電選別」検証機の外観

同技術は、プラスチックの種類ごとに摩擦帯電傾向が異なるという静電気の特性を利用して、選別するもの。同技術の市場投入に向け、これまで多種多様な業種の企業約30社の廃プラスチックのサンプル評価試験を実施し、高純度に選別できることを確認してきたという。

一方で、実際のリサイクルでは回収される廃棄物によって得られる混合プラスチック片の組成がさまざまに変化するため、プラスチックの組成に応じて選別装置を都度調整する専門知識やオペレーションノウハウが必要なことが課題だったとのことだ。

この課題を解決するために、同社はAIを駆使することで専門知識やオペレーションノウハウが不要な「スマート静電選別」技術のコンセプトを2023年8月に確立し、検証機の開発を進めてきたとしている。

今回、「スマート静電選別」のキー技術となる、プラスチック片の選別前・選別後組成識別センサーおよび識別アルゴリズムや、プラスチック片の比電荷(※1)をセンシング可能な独自の比電荷分布評価システム、センシング結果に応じて選別機を最適な条件に自動制御するAI技術を開発し、これらを搭載した検証機を製作。

この検証機を用いて、あらゆるプラスチックの組成に応じて、専門知識やオペレーションノウハウがなくても自動で高純度に選別できることを検証するとのことだ。

同社は、2027年度以降の「スマート静電選別」の実用化と市場投入を目指し、プラスチックリサイクル率の向上に貢献するとしている。

■開発した「スマート静電選別」技術の特長

プラスチック片の種類を99%の精度で自動識別し、選別前後の組成をリアルタイムに見える化
・プラスチック片に赤外線を照射し、反射の仕方からプラスチック片の種類を識別する近赤外式のハイパースペクトルカメラと、PLS-DA(※2)を使用した識別アルゴリズムを搭載。プラスチック片の種類を99%の精度で自動識別(※3)可能

・ハイパースペクトルカメラを混合プラスチック片の投入側と回収側に設置。選別前と選別後のプラスチックの組成をリアルタイムに見える化し、選別結果データを取得・AI学習データとして蓄積

独自の比電荷分布評価システムでプラスチック片の比電荷を高精度にセンシングし、AIで選別装置を自動制御
・静電誘導(※4)方式による独自開発の比電荷分布評価システムにより、既存の表面電位計では対応できないプラスチック片の比電荷を高精度にセンシング可能

・比電荷のセンシング結果から、混合プラスチック片の選別軌道を予測。組成に応じて電極の電圧や分離回収器の仕切り位置など、選別装置の条件をAIで高精度に算出し、自動で制御

各種センサーとAIにより、オペレーションノウハウ不要で静電選別が可能
・さまざまなサンプルの評価試験や同社の家電リサイクル事業の中で蓄積したオペレーションノウハウをDX化した各種センサー(※5)とAIにより、専門知識がなくても静電選別装置のオペレーションが可能

・選別前の混合プラスチック片の組成と、選別結果の組成、比電荷分布をAIに学習させることで、より高純度に選別できる条件を算出し、自動選別能力を向上

「スマート静電選別」検証機の構成図

■検証実験の概要

期間:2025年2月19日~2026年9月30日(予定)
場所:三菱電機先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市)
内容:プラスチック片の組成の変化に応じた自動静電選別の検証