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帝国データバンクは、2024年の首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)と地方間における本社所在地の移転状況を分析した結果を発表した。
■首都圏企業の本社移転、4年連続の転出超過
2024年に首都圏から地方へ本社を移転した企業は363社となり、1990年以降で最多を更新した。2023年(347社)と比較して16社(4.6%)増加し、4年連続で300社を超えた。一方、地方から首都圏へ移転した企業は296社で、2023年(310社)から14社(4.5%)減少し、2年ぶりに300社を下回った。
その結果、首都圏の「転出超過社数」は67社となり、前年の37社から30社(81.1%)増加した。転出超過は4年連続で記録されており、企業の「脱首都圏」傾向が一段と強まっているという。
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転出企業の移転先としては、大阪府(51社)、静岡県(34社)、兵庫県(21社)などが多く、富山県(6社)、石川県(5社)、福井県(3社)を含む北陸3県への移転も1990年以降最多となった。北陸新幹線の開業によるビジネス環境の変化が要因の一つとみられるという。
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■首都圏の転出・転入、「サービス業」が最多
業種別では、首都圏から転出した企業のうち「サービス業」が151社で最多となった。「経営コンサルタント業」(22社)、「受託開発ソフトウェア業」(18社)、「パッケージソフトウェア業」(6社)など、IT関連の企業が上位を占めた。また、「旅館・ホテル業」(6社)の転出も目立ち、地方の観光業に関連する動きがうかがえるとしている。
一方、地方から首都圏へ転入した企業のうち、最も多かったのは「サービス業」(131社)で、前年(118社)を上回り、1990年以降で最多を記録した。「受託開発ソフトウェア業」(23社)や「製造業」(37社)の移転が目立ち、地方企業が首都圏での営業拠点を強化する動きが続いている。
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■首都圏から転出、中堅規模以上の企業で増加
企業の売上高規模別では、首都圏から転出した企業の中で「1億円未満」の企業が176社と最も多かった。次いで「1-10億円未満」が136社、「10-100億円未満」が45社と、中堅企業の移転も増加傾向にある。一方、首都圏へ転入した企業では「1-10億円未満」(121社)が最多となり、「1億円未満」(116社)が続いた。
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首都圏から地方へ転出した企業のうち、前年から売上高が増加した企業の割合は37.8%で、前年(35.9%)を上回った。成長を続ける企業が地方移転を選択するケースが増えていることが示唆される。一方、首都圏へ転入した企業のうち売上高が増加した企業の割合は48.6%で、前年(50.3%)をやや下回ったものの、高い水準を維持している。
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■首都圏から地方へ分散の動き、2025年も継続する可能性
政府の地方創生政策やBCP(事業継続計画)対策の観点から、首都圏から地方への企業移転の動きは2025年も継続する可能性があるという。首都圏の高コスト環境からの脱却や、地方都市の生活環境の優位性が企業の移転判断に影響を与えているとみられるとのことだ。
<参考>
帝国データバンク『首都圏「本社移転」動向調査(2024年)』