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1992年「全米No.1サンドイッチチェーン」の触れ込みで日本に上陸したサブウェイは、2024年10月に新たな局面を迎えた。外食大手のワタミが日本におけるマスターフランチャイズ契約を締結し、今後20年間で国内3,000店舗の展開を目指すという。
サブウェイの店舗数は2014年の約400店舗をピークに一時は半数以下まで減少したが、再び増加傾向にあり、既存店の売上も42カ月連続でプラス成長を遂げている。その背景には、スタッフ教育の充実やフランチャイズ加盟店へのサポート体制の強化が見られた。
今回、4店舗のフランチャイジーである株式会社ライズビーチの代表・白浜奈都紀氏と、日本法人本部で中日本統括マネージャーを務める河合大介氏を取材。サブウェイのV字回復を支えるフランチャイズ戦略について迫った。
スタッフ教育の見直しとデリバリー需要へのマッチングで回復
サブウェイは現在、100カ国以上で3万7,000店舗あまりを展開する世界最大級の飲食チェーンだ。河合氏は、サブウェイが支持される理由について「欧米はパン食文化。主食を好きなようにカスタマイズできるのが最大の魅力です」と語る。
一方で、ヘルシー志向が強い日本では、生野菜を手軽に摂れる点が愛される理由だと分析している。しかし、日本国内では一時期閉店が相次いだ。これは、ファストフード業界で発生した価格競争の影響に加え、出店スピードにスタッフの教育が追いつかず、結果として顧客体験の質が低下したことが原因だという。
では、どのようにしてV字回復への軌道を築いたのか。河合氏にその経緯を伺った。
河合氏「2015年に日本でのマスターフランチャイズ権がアメリカ本部に戻ったことを契機に、本部が使用する教育アプリを導入し、効率的にスタッフを育成できるようになりました。人材の確保が厳しい状況でも、スタッフ全員に一定の教育ができるシステムを手に入れたことが、生産性の向上につながったと思います」
さらに、コロナ禍で加速したデリバリー需要にも応えたことが回復に大きく貢献した。
河合氏「サードパティデリバリーは、我々のビジネスに欠かせない存在となりました。温かい食事ではないため、多少時間が経ってもフレッシュさを保てるのがサブウェイの強みです。デリバリー需要が拡大したことで改めて実感しました」
本部とフランチャイジーが二人三脚で推進
スタッフ教育の強化やデリバリー需要への対応が功を奏し、サブウェイの業績は右肩上がりとなっているが、その支えとなっているのがフランチャイジーの存在だ。
白浜氏は、サブウェイでアルバイトを経験したのち、現在は4店舗を運営する女性経営者である。一時はサブウェイから離れて他の飲食店で働いたこともあったが、サブウェイのオペレーションや接客の魅力に惹かれて復帰したという。
白浜氏「サブウェイで働く魅力は、お客様のニーズに合わせた自由な接客ができることです。店舗ごとに個性はありますが、どの店舗でもマニュアルに縛られない接客ができることに変わりはありません」
アルバイト時代に見つけた課題を解決するには、自身が経営者として挑戦する必要があると感じた白浜氏。未経験ながらもフランチャイズ経営に乗り出した背景には、「フランチャイズであればこそ」という安心感があったと振り返る。
白浜氏「品質管理やオペレーションの基盤が整っており、安心安全が担保されていることは非常に大きいと思います。また、サブウェイのネームバリューを最大限に活かせることも魅力でした。ゼロから飲食店を立ち上げるよりも、フランチャイズならではのメリットをたくさん感じます」
フランチャイズ経営では、商品の提供やオペレーション、新人研修などがある程度パッケージ化されているが、白浜氏がアルバイト時代から感じていた “自由度”も経営に生かされているという。
白浜氏「経営の基盤は初めから整っていますが、そこからどう店舗を盛り上げていくかはオーナー次第。本部の良きビジネスパートナーとして経営している感覚です」
新規オープンの際には、物件探しを本部と一緒に進めることもあれば、本部側からフランチャイジーに新店の提案がある場合もあるという。
河合氏「サブウェイではオーナーさんの起業家精神を尊重しています。みなさんがサブウェイでのビジネスを通してどんな未来を描いているのか、その方向性を共有しながら、ビジネスパートナーとして一緒に進めていくスタンスです」
実際に、白浜氏が2店舗目としてオープンしたアスナル金山店(名古屋市中区金山)は、「地元にお店を持ちたい」という白浜氏の思いを受け、本部側からの声掛けで実現したものだ。本部とフランチャイジーは、互いを“ビジネスパートナー”と位置づけ、二人三脚で歩んでいる。
プロフェッショナル人材が健全な経営をサポート
サブウェイでは、飲食業や経営の未経験者でもフランチャイジーとして活躍できるよう、充実したサポート体制を構築している。開店準備段階で提供するパッケージ化されたサービスや経営ノウハウだけでなく、店舗運営開始後の成長支援も行っている。
その支援を担うのが、河合氏をはじめとするエリアマネージャーの存在だ。エリアマネージャーは、フランチャイズ経営の成功に欠かせない役割を果たしている。
河合氏「QSC(クオリティー・サービス・クリンリネス)のチェックや変動費の管理など、数字に課題が見られる場合は、必ず現場に問題が潜んでいます。目に見えない要因が影響していることもあるため、一緒に解決策を探り、健全な経営へとサポートしています。日本ではエリアマネージャーと呼んでいますが、世界共通の役職名はフィールドコンサルタントです。我々は独自のカリキュラムを受講し、フランチャイジーへのコンサルティングを可能にしています」
河合氏のようなプロフェッショナル人材がフランチャイジーを支えることで、経営者の負担を軽減している。経営者は孤独であるとされるが、白浜氏は「売り上げはもちろん、常にスタッフのことまで気にかけてくれる存在がありがたいです」とエリアマネージャーがいる安心感を口にする。
そのほか、多くの飲食業でフランチャイズが存在するなか、サブウェイのフランチャイジーとなるメリットはどこにあるのだろうか。
河合氏「サブウェイでは火や油を使わないため、安全でクリーンなオペレーションが可能です。また、店舗の坪数が比較的少なくて済むため、初期投資を抑えられます。他の飲食店が数千万〜1億円の初期投資が必要な場合、サブウェイなら2,000万〜3,000万円に抑えられます。複数店舗の展開を考えるうえでも、リスクヘッジしやすい業態ではないでしょうか。さらに、世界的チェーンであることが挑戦への間口を広げていると思います」
河合氏は、フランチャイジーには「なるべく長く携わってほしい」と願う一方、その先に叶えたい夢がある場合「サブウェイが夢の入り口であってもいい」とも述べる。フランチャイズビジネスは対経営者のビジネスであるため、マーケティングを含め、経営者にとって魅力的なビジネスであることが重要だとしている。
“LOVEWAY”人口を増やし、フランチャイズ戦略を加速
サブウェイは「Make them happy(お客様をハッピーにする)」を理念に掲げ、お客様とのコミュニケーションを大切にしてきた。
しかし、昨今の人材不足や多様なニーズに応えるため、タッチパネル式セルフオーダーシステムの導入を進めている。白浜氏が新たにオープンさせた栄スカイル店(名古屋市中区栄)も、セルフオーダーシステムを採用。ただし、今後すべての店舗に導入するわけではなく、立地や客層に応じて従来型の運営も並行する方針だ。
白浜氏は「好きなように食材をチョイスできるのがサブウェイの魅力なので、店舗での体験もお客様が選択できるのは良いことだと捉えています。ただ、セルフオーダーによって気遣いが希薄にならいよう、接客のかたちを模索しているところです」と語る。セルフオーダー時代でも「Make them happy」な店舗づくりが求められている。
また、「国内3,000店舗」を目標に掲げるワタミの計画実現には、白浜氏のように複数店舗を運営するフランチャイジーの活躍がなくてはならない。どのような人材がビジネスパートナーに求められるのだろうか。
河合氏「白浜オーナーのように細かな気遣いができる方が向いていると思います。飲食店でありながら、サブウェイは“ピープルビジネス”です。人を大切にできる方に加盟していただきたいですね」
最後に、お二人に今後の展望を伺った。
白浜氏「目標は『サブウェイで働いて良かった!』と思える仲間を一人でも多くつくること。一緒に働くからには、意味のある時間を過ごしてほしいと思います。私個人の目標は全国展開です。全国を飛び回るためには土台づくりが必要なので、安心してお店を任せられるスタッフの育成にも力を注いでまいります。今後増えていく新規のオーナーさんとも情報共有していきたいです」
河合氏「サブウェイを愛してくださる“LOVEWAY”人口を増やすことです。3,000店舗の目標には、お客様もフランチャイジーも “LOVEWAY”な人々で溢れることが欠かせません。まずは、商品や店舗体験を通して、サブウェイビジネスに関心を持ってもらえる人を増やすことが私のミッションです」
低迷からV字回復を遂げたサブウェイは、ワタミ傘下のもとでさらなるフランチャイズ強化に乗り出す。3,000店舗が達成されれば、国内トップのポジションに躍り出るだろう。今後、街中で“SUBWAY”の看板を目にする機会がますます増えていくはずだ。