帝国データバンクは、全国の企業を対象に「カスハラに関する企業の意識」に関する調査を実施し、その結果を公表した。
■直近1年でカスハラ被害が「ある」企業は15.7%、B to C業界で目立つ
直近1年以内に自社もしくは自社の従業員がカスハラや不当な要求などを受けたことがあるか聞いたところ、「ある」とした企業は15.7%だった。
規模別でみると「大企業」が21.0%、「中小企業」が14.8%、「小規模企業」が14.4%という結果に。
また、直近1年以内にカスハラなどを受けたことが「ある」企業を業界別でみると、「小売」が34.1%でトップとなり、次いで「金融」が30.1%、「不動産」が23.8%、「サービス」が20.2%と主に個人を取り引きの対象とする業界が比較的高い割合となった。
一方で、カスハラなどを受けたことが「ない」企業は65.4%となり、「ある」企業よりも4倍以上高かった。規模別では、「大企業」が49.7%、「中小企業」が68.3%、「小規模企業」が71.6%で、規模が大きい企業ほどカスハラを受けている結果に。
企業からは、「自分のわがままを押し通そうとし、思い通りの結果にならないと罵倒する年配の方が多い」(金融、鹿児島県)や「近年はネットに書くと脅されるほか、一方的に事実無根の悪評を書き込まれ、対応に苦慮している」(専門商品小売、大阪府)などの声があがった。
また、「ない」「分からない」と回答した企業からは「どこまでの発言・行為がカスハラに該当するのか不明なため、判断しづらい」(情報サービス、東京都)のように、判断の難しさを訴える声が多数あがった。
さらに、主に企業間での取り引きが多い企業からは、「BtoBの事業会社であり、表立ったカスハラ経験がなく、遭遇する機会もない」(建材・家具、窯業・土石製品製造、愛知県)のように、そもそもカスハラなどを受ける状況がないといった声もあった。
■カスハラへの対応策や取り組み有無はほぼ半々、「顧客対応の記録」が最も高く20.1%
カスハラや不当な要求などへの対応策や取り組みについて聞いたところ、電話に録音機能をつけるなど「顧客対応の記録」が20.1%で唯一2割を上回り、トップに。
次いで、「カスハラを容認しない企業方針の策定」や「カスハラ発生時のサポート体制の構築」「被害者への相談・通報窓口の設置」「警察や警備会社、行政との連携」が続いた。
総じて何らかの「取り組みあり」とする企業は50.1%、「特に取り組んでいない」が47.4%とほぼ二分する結果に。
また、業界別では直近1年以内にカスハラ被害が多い業界では取り組みも多く、被害が少ない業界では取り組みも少ない傾向だった。
その他、具体的な対策としては、「顧問弁護士と迅速な連絡・相談する体制を整えている」(旅館・ホテル、神奈川県)や「カスハラをしてきた企業との取り引きを停止している」(建設、香川県)のように、毅然とした態度でカスハラに対応する声が多くあがった。
【調査概要】
調査期間:2024年6月17日~30日
調査対象:全国2万7,159社
有効回答企業数:1万1,068社(回答率40.8%)
調査機関:帝国データバンク
<参考>帝国データバンク『「カスタマーハラスメント」に関する企業の意識調査』