日本の現代アートは、草間彌生、奈良美智、村上隆といった著名なアーティストの活躍もあり、市場は活気づいている印象がある。しかし、実際の市場(販売額)シェアは世界の1%程度といわれており、現代アート界は国内市場の拡大に向け働きかけている。そのひとつが国際的なアートフェアの開催だ。

そして、今年の7月5日(金)~7日(日)に国際アートフェア『Tokyo Gendai』がパシフィコ横浜にて開催される。初回となった昨年は、国内外から約21,000人が集まり盛況のうちに閉幕。今年は18カ国から70もの厳選されたギャラリーが参加予定だという。

なぜ今日本で開催されるのか。同フェアの開催意義とその魅力を見ていく。

アート市場を活性化する国際アートフェア

アート市場の活性化を図るうえで、国際的なアートフェアの開催は欠かせない。著名なアーティストの展示はもちろん、新しい才能のお披露目の場でもあり、国内のアーティストが海外進出への足がかりを掴むためのプラットフォームの役割も担う。
また、アートフェアは美術館での鑑賞とは異なり、実際に誰でも作品を購入できることが大きな特徴だ。

The Art Basel and UBS Art Market Reportによると、現在世界のアート市場のシェアはアメリカが45%と約半数を占め、イギリスが18%、中国が17%、フランスが7%と続いている。前述のとおり日本のシェアは1%ほどであるが、東京が多様なカルチャーを有する世界都市であることから、世界中のコレクターやギャラリストが注目。日本のアート市場はポテンシャルを秘めているとして『Tokyo Gendai』の開催へと至った。

『Tokyo Gendai』の共同創設者であるマグナス・レンフリュー氏は、第1回の開催後に「本フェアはアート界の新たな、そして重要なイベントとして確立されました。アジア地域の極めて大切なハブとして、この市場の持つ大きな可能性を物語っています」と語っている。

ハイクオリティな現代アートが並ぶ『Tokyo Gendai』

『Tokyo Gendai』は、文字どおり現代アートがテーマ。著名なアーティストから、新進気鋭の若手アーティストまで、実に多彩なラインナップで訪れる人々を迎え入れる。

多くのアートフェアでは開催国のギャラリーが多くを占めるなか、同フェアは日本を含む18か国から約70のギャラリーが一堂に会することも特徴のひとつだ。世界のアートシーンを牽引するTim Blumなど著名なギャラリストたちが選考委員を務めており、世界的な“お墨付き”を得たハイクオリティなアートに触れることができる。

展示は3つのセクターに分かれており、世界のトップギャラリーが並ぶ「Galleries」には、東京・麻布台での店舗出展を控えるPace Galleryも出展。そのほか、若手や中堅アーティストの出展ゾーンである「Hana ‘Flower’」、アジア出身の有名アーティストや注目の若手アーティストの作品を展示する「Eda ‘Branch’」など、好みに応じて作品を探しやすいようゾーニングされている。

現代アートの魅力を知る5つの見どころ

国内外のギャラリーが一堂に会する『Tokyo Gendai』では、優れたアート作品を新たな視点で探求するプログラムを実施する。たびたび「現代アートはどのように楽しむべきかわからない」と囁かれるが、そのような懸念を払拭してくれるものとなるだろう。

1. 社会課題を取り上げる Tsubomi ‘Flower Bud’

社会課題に焦点を当てた展示プログラム「Tsubomi ‘Flower Bud’」では、国籍や世代、文化的アイデンティティが異なる女性アーティスト4名の作品を紹介。昨今の分断する世界情勢の下、異なる物事につながりを見出すことで生まれる創造性や可能性を提示する。

2. 体験型インスタレーション Sato ‘Meadow’

現代アートの新たなテーマにスポットを当てた4つの大規模なインスタレーション「Sato ‘Meadow’」では、観客が作品づくりに参加したり、作品の中で遊んだりできる仕掛けが用意されている。

3. 特別展 Ne ‘Root’

特別展「Ne ‘Root’」では、日本を代表する複数の財団による展示が並ぶ。

4. トークセッション

アート界の第一人者を集めたトークセッションでは、現代アートを巡る対話を中心に、今日の主要トレンド、トピック、動向について議論が交わされる。

5. 子ども向けワークショップ ‘IntoArt’

子ども向けワークショップ「‘IntoArt’」では、世界レベルのアーティストと一緒に作品づくりの楽しさを体感。子どもたちの独創性を育んでいく。

観る、買う、つくる、学ぶ——。アート産業に関わる人はもちろんのこと、大人から子どもまで、アート初心者でも楽しめる内容だ。“食わず嫌い”であった人たちこそ、訪れてみると興味深い発見があるかもしれない。

現代を生きる私たちと共鳴するアート作品

第2回の開催に際し、レンフリュー氏は以下のようにコメントを寄せている。

「Tokyo Gendaiの役割は、海外の観客には日本のギャラリーやアーティスト、文化施設などを紹介し、日本のコレクターには世界の一流ギャラリーを通じてアーティストの作品を鑑賞する機会を提供することです。また、たくさんの作品に対する興味と議論を喚起する場でもあります。『現代アートは難しい』という声も聞きますが、日本のアート市場を拡大するためには、現代アートに対する恐怖心を取り除くことが非常に重要です。現代アーティストは、私たちがそうであるように、作品を通して世の中での自分の立ち位置や存在を理解しようとしており、その作品は私たちと共鳴しあえるのです。Tokyo Gendaiを通じて、このような現代アートの楽しさをさらにみなさんに感じていただきたいと思っています」

■第2回 Tokyo Gendai

【会場】
神奈川県横浜市西区みなとみらい 1-1-1
パシフィコ横浜 展示ホール C/B

【会期日時】
ヴェルニサージュ:2024年7月5日(木)17時〜20時
一般公開:2024年7月5日(金)〜7月8日(日)11時〜18時