理研食品と高知大学は、2018年よりJST-OPERAプロジェクト(低CO2と低環境負荷を実現する微細藻バイオリファイナリーの創出)に参画し、その研究成果として「緑藻ヒトエグサ」の陸上養殖を可能にする種苗生産技術を開発した。

緑藻ヒトエグサは葉状の大型緑藻の一種。全国各地で天然採取されるとともに三重県、鹿児島県ならびに沖縄県などの主に河口域において養殖されており、「あおさのり」や「あおさ」の名称で味噌汁や天ぷらなどで広く食されている。

しかしその収穫量は温暖化にともなう水温上昇や環境変動の影響を強く受けて減少傾向にあるという。

これに対して、長年緑藻類の研究を続けている高知大学の平岡教授は、ヒトエグサは共存するバクテリアなどがいない無菌状態で培養すると、まるで微細藻類のように単細胞状態で細胞分裂して増殖することを発見(特許第7353653号)。

また、ヒトエグサの仲間は、葉状体を形成するためには海産性のバクテリアが産生する物質「Thallusin」が必要であることが知られていたという(Matsuo et al. 2004, Scinece)。

理研食品と高知大学はこれらの知見をもとに、ヒトエグサを単細胞のままで増殖させるバクテリア(細菌A)と、単細胞から葉状化を促進させるバクテリア(細菌B)を選定。

これによって、単細胞状態で大量に増殖させたヒトエグサを葉状化させて、陸上養殖用の種苗としての活用が可能となったとのことだ(Kinoshita et al. 2022, Cytologiaに関連する研究成果を発表)。

ヒトエグサの種苗生産:単細胞状態で増殖するヒトエグサ(a:培養ビーカーの外観、b:細菌Aを添加して単細胞状態で増殖)、および細菌Bを添加して葉状化した藻体(c)

今後は、理研食品が2017年に整備した海藻類の種苗生産施設「ゆりあげファクトリー」および2021年に整備した海藻類の陸上養殖生産施設「陸前高田ベース」において、実生産に向けた養殖実証試験を行い、年間を通した生産性を確認して産業実装を目指すとしている。

ヒトエグサの成長:細菌Bを添加して7日目(d)、14日目(e)、20日目(f)の藻体と陸前高田ベースにおける屋外水槽での養殖風景(g)、陸上養殖で約30cmに生長した個体(h)。写真(d,e,f)のスケールバーは1cmを示す。

研食品と高知大学は、同研究成果がヒトエグサ養殖生産の安定化に貢献できるよう、引き続きを共同研究を続けていくとのことだ。