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帝国データバンクは、人手不足倒産の動向を分析し、結果を発表した。
2023年は累計260件、前年比で約1.9倍 特に建設業は約2.7倍と大幅増加
人手不足を理由に事業継続を断念するケースが、本格的に増加。2023年の人手不足倒産は累計で260件となり、年間ベースで過去最多を更新したという。
なかでも、この 4月に時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」によって人手不足のさらなる深刻化が懸念されている建設/物流業の件数は、全体の半数を占める高水準となったとのことだ。
とりわけ建設業は91件にのぼり、過去最多かつ前年から約2.7倍の大幅増。足元では、企業の人手不足感が高まり続けている現状を踏まえると、今後も人手不足倒産は高水準で推移する可能性があるとしている。
一時は落ち着いた人手不足倒産が急増、「2024年問題」の次は「2025年問題」も控える
2023年の人手不足倒産は260件となり、統計として遡れる2013年以降で最多を更新。これまで最多だったのは2019年の192件で、国内景気の上向きなどによって人手不足が顕著に表れていた時期だったという。2020年以降は新型コロナが拡大し経済活動が制限されたなかで、一時的に人手不足感も緩和されていたとのことだ。
2023年は新型コロナの感染症法上の分類が5類に移行され、本格的に「アフターコロナ」が到来し徐々に経済活動が本格化したことで、人手不足は再び重大な経営リスクとして顕在化するように。
4月には月次としては過去最多の30件に達し、8月以降は5カ月連続で20件以上を記録、これまでにないペースで発生し続けたという。
全体の半数を占める建設/物流業は、2024年4月に時間外労働の上限規制が適用される、いわゆる「2024年問題」が懸念される業種であり、さらなる深刻化も否定できない。
また、“団塊の世代”が後期高齢者に到達する「2025年問題」も大きな節目として控えるなど労働力人口の高齢化も進むなか、人材の確保がこれまで以上に事業継続を左右する時代が迫っている。
既に人手不足感はコロナ禍以降で最高水準、企業の喫緊の課題に
実際に、人手不足は企業の経営課題として急速に高まっている。帝国データバンクが実施した2024年の景気見通しに関する調査では、懸念材料として「人手不足」をあげる企業は40.5%となり全項目のなかで2番目に高く、前年からの上昇幅は14.4ptで最も高かったとのことだ。
さらに、正社員の人手不足を感じている企業は2023年12月時点で53.1%にのぼり、2020年4月からのコロナ禍以降で最も高くなった。
こうした背景を踏まえ、今後も人手不足の解消が大きく進まない場合には、踏ん張り切れずに事業を畳まざるを得ないケースが高水準で発生することが見込まれるとしている。