【寄稿】グローバルスポーツメーカーのサステナブルな未来の実現に向けた取り組みに迫る|株式会社アシックス

TAG:
本コラムは、企業・団体などから寄稿された記事となります。掲載している取り組みやサービスの内容・品質、企業・団体などをAMPが推奨・保証するものではありません。

各企業・一人ひとりのパートナーシップ構築の加速をサポートするため、サステナブル推進企業の取り組み事例をコラム形式で提供。

今回は株式会社アシックスの取り組みを紹介する。

アシックスの取り組み

アプローチ視点 1949年の創業より、アシックスの使命は人々の心と体を健康にすることです。 そのためには、 快適に走れる健やかな地球環境が不可欠です。 健全な心身、健やかな環境が将来世代まで続くよう、アシックスのブランドスローガン「Sound Mind, Sound Body」のもと、「People(人と社会への貢献)」と「Planet(環境への配慮)」の二つの柱を軸に取り組んでいます。
実施内容 「People(人と社会への貢献)」においては心身の健康や公正で倫理的なサプライチェーンの実現、「Planet(環境への配慮)」においては2050年CO2排出実質ゼロ、気温上昇を1.5℃未満に抑えることを目指し、気候変動への対応を最重要課題に位置付けています。
推進体制 当社は、サステナビリティを中期経営計画の柱とするなど、経営の中心にとらえ、サステナビリティ統括部を中心に、全社でサステナビリティに関する取り組みを行っています。また、CEOを委員長とするサステナビリティ委員会・リスクマネジメント委員会を設置し、2022年11月には人権委員会を新設しました。

取り組み実施に至った背景

1990年代前半、スポーツ業界全体で環境問題に関する取り組みが始まり、当社の研究目標にも環境に優しい素材の開発やより少ない材料で製品をつくることが加わりました。2010年にはフットウエア業界で初めて、シューズの環境負荷の計算・削減に関する研究をマサチューセッツ工科大学と共同で実施。2018年には世界のスポーツメーカーで初めて、国際的イニシアチブSBTiから承認を取得し、2019年には1.5℃およびCO2排出ゼロへのコミットメントを表明。社として、サステナビリティを、長期ビジョンVISION2030・中期経営計画の柱とし、全社で2050年ネットゼロに向けた取り組みを行っています。また、2030年までに事業所およびサプライチェーンにおいてのCO2排出を63%削減することを目指しています。

実施している取り組み

アシックスのサステナビリティは、事業活動を通じて人々の心と身体を健やかにする「人と社会への貢献」と、将来世代までスポーツができる地球環境を守る「環境への配慮」の2つから成り立っています。アシックスは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できるよう、17の目標と当社のサステナビリティ戦略が整合しているかを確認しています。

アシックスの事業活動は17の目標全てに関連しますが、下記の7つの目標に最も貢献できると考えています。

3:すべての人に健康と福祉を
事業活動(製品・サービス)を通じた人々の心身の健康への貢献。Right To Playとのプロジェクトを通じた青少年の心身の健康への貢献 など。

5:ジェンダー平等を実現しよう
国内の事業所で目標値を設定し、達成に向けて育成など女性活躍推進をすすめています。(開示は(株)アシックスのみ)

6:安全な水とトイレを世界中に

8:働きがいも経済成長も
公正で倫理的なサプライチェーンの実現に向けた工場監査、評価、改善、サプライヤー研修、ステークホルダーとの協働。

12:つくる責任つかう責任
ASICS REBORN WEAR PJ

13:気候変動に具体的な対策を
SBT目標 など

17:パートナーシップで目標を達成しよう

OUR APPROACH TO SUSTAINABILITY | 株式会社アシックス コーポレートサイト (asics.com)

バリューチェーン全体で、「作る・使う・捨てる」の一方通行型のビジネスモデルから循環型ビジネスモデルへの変革を進めています。製品の販売増だけに頼る事業成長ではなく、バーチャルでのコミュニティやマラソン大会、データを活用したランニング分析や診断等のサービスで価値を提供し事業拡大を図ります。こうしたデジタルの活用で利用者一人ひとりに合った製品・サービスを提供し、使う資源の最小化と製品寿命の延伸につなげます。

製品に関しては、アシックスが求める品質・機能性に妥協することなく、サステナビリティを実現することが非常に重要です。

品質・機能性とサステナビリティを両立した例として、2022年には温室効果ガス排出量を最も低く抑えたスニーカー※「GELLYTE Ⅲ CM 1.95」を開発し、グローバル向けの記者会見にて発表し、2023年9月に発売しました。

※2023年9月時点、製品ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量が開示されている市販シューズを対象としたデータに基づく

また、その知見・計算方法を活用し、2023年夏発売の「GEL-KAYANO30」では、製品のカーボンフットプリント表示を行っています。これらのカーボンフットプリントの計算方法は第三者の認証を受けており、web上で公開しています。

日米では、店頭での製品の回収プログラムも行っています。2021年には、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 では、全国から集まった約4トンのウェアをリサイクルし、日本代表選手のウェアにするプロジェクト「ASICS REBORN WEAR PROJECT」などを実施しました。

GEL-LYTE Ⅲ CM1.95

また、当社のCO2排出量の約70%は材料調達と製造段階が占めています。主要サプライヤーと、取引要件として気温上昇を1.5℃に抑えるための排出目標の設定や、再生可能エネルギーの導入を求める「グリーン調達方針」を発信。継続的な対話を通して主要サプライヤーの現状や課題を把握・サポートし、サプライヤーと連携しながらバリューチェーン全体で循環型ビジネスモデルへの移行に取り組んでいます。

世界で最も温室効果ガス排出量の少ないスニーカー「GEL-LYTE Ⅲ CM1.95」を開発できたことは、ネットゼロに向けた大きな一歩です。バリューチェーン全体で、パートナーと連携しながら、再生エネルギーの調達やバイオ由来材を一部活用した「カーボンネガティブフォーム」の開発、バイオ燃料を活用した輸送プランの採用など、16の削減施策を実施することで1.95kgという数値を実現しました。この知見を今後の製品に活かしていきます。

また、サステナビリティ部だけでなく、開発・デザイン・研究・生産・SCM・マーケティングなど、多くの部門が協力して取り組んだことで、全社のサステナビリティに対する意識や知見も向上したと感じます。実際に、グローバル全社員向けの調査において、業務でサステナビリティの推進を意識している社員の割合は2021年の44%から、2022年は73%と大幅に向上しました。

2023年夏発売の「GEL-KAYANO30」では、シューズの排出量の可視化を行っています。可視化を通じて、シューズ・アパレルなど当社の幅広い製品の温室効果ガス排出量の把握が自社内でできるようになりました。今後、カーボンフットプリントの算出を通じて、削減のポイントがどこにあるのかを確認し、次の製品の温室効果ガス排出量の削減を発展させていくことができると考えております。

サステナビリティ推進体制

アシックスは、全社および各部門の事業戦略にサステナビリティの考え方を取り入れています。全従業員の日々の活動を通して、企業活動全般にそれを浸透させ、体現することは、企業が当然果たすべき責任であると認識しています。

また、アシックスでは、サステナビリティ目標の進捗確認と次段階への方向性の決定を含むサステナビリティに関する最終責任を取締役会が負っています。サステナビリティ委員会は、リスク管理委員会と連携し、グループ全体のサステナビリティ戦略、ロードマップ、アクションプランのレビューおよび部門レベルでのサステナビリティ目標に対する進捗状況の報告が含まれます。また、2022年にはバリューチェーンの人権尊重の強化を図るべく人権委員会も設立しました。

2004年 総務部の中にCSR推進チーム
2005年 総務部CSR推進チーム
2006年 法務部CSR推進チーム
2010年 CSR推進室
2012年 CSR・サステナビリティ室
2014年 CSR・サステナビリティ部
2021年 サステナビリティ統括部 現在28名

今後の目標や展望

2050年ネットゼロに向け、モノづくりを循環型にすることが必要です。少ない材料・クリーンなエネルギーを用いて、長く使えて廃棄物を出さないモノづくりを目指します。また、サプライヤーの脱炭素化も不可欠です。グリーン調達を推進し、サプライヤーと連携しながら脱炭素化を進めます。

最大の課題は、機能性とサステナビリティの両立です。GEL-LYTE Ⅲ CM 1.95で得た知見をより多くの製品に展開し、機能性に妥協せず、イノベーションを生み出していきます。

また、ビジネスモデルの転換が必要であり、モノから,「アナリシスとダイアグノシス(分析と診断)」 「ファシリティとコミュニティ」の分野へシフトしていきたいと考えています。これまでモノづくりを通して行ってきたHuman Centric Design、つまり人々の動き・機能の研究によって得た知見やデータを活かし、人々の健康を支えるサービスを、デジタルを活用して提供していきます。例えば、ランニングエコシステムから得られた知見をヘルス関連のサービスに活用したり、運動だけでなく、睡眠・食のデータをも包括的に活用したサービスを提供したりすることにより、子どもから高齢者まで心身ともに健康な世界を目指します。

今村玲奈
株式会社アシックス 広報部日本地域広報チーム
当チームでは、日本国内の商品やサービス、事業に関する情報発信を行う。サステナビリティ、スポーツスタイル、トレーニング、事業関連などのカテゴリーを担当。
2011年入社。経理財務統括部を経て2013年4月広報部に異動。現在に至る。
▼お問い合わせ先
●株式会社アシックス
●お客様からのお問い合わせ
アシックスジャパン株式会社 お客様相談室 お問い合わせフォーム:
https://www.asics.com/jp/ja-jp/mk/support/contact/products
●URL:https://corp.asics.com/jp/csr

本特集(サステナライズ寄稿)に関してはこちらからお問い合わせください。

モバイルバージョンを終了