2023年6月、「LINE証券」は金融市場における新たな地平を開こうと、大規模な事業再編を行い、FX事業へ集中することを発表した。この戦略の背景には、事業の持続的な成長の追求と、ユーザー体験の更なる向上を目指す意図があるという。本公表は、LINE証券の今後の事業方向にも大きな影響を与える重要な決断であったが、なぜ同社のFX事業は好調なのか?今回、LINE証券で取締役執行役員を務める兵頭一摩さんに話を伺った。

LINE証券が展開するFX取引サービス「LINE FX」は、2021年にFX取引サービスにおける新規口座開設数No.1の地位を獲得。そして、国内に60社以上のFX取引プロバイダーが存在する中、LINE FXは最後に登場した新参サービスであったものの、現在では57万口座(2022年12月時点)と、上位に入り込む口座数にまで成長している。

投資サービスの中でも中々手を出しづらい特徴を持つFX取引で、LINE証券が順調に成長してきている背景について、兵頭さんは以下のように話す。

兵頭氏:LINE FXがこれまでユーザーからの支持をいただいている背景には、主に3つの要因が挙げられます。まず、リアルタイムで金融市場の急変動に関する通知が「LINE」で届くことです。迅速な情報収集が不可欠なFX取引において、この通知が日頃から利用しているLINEで、リアルタイムで届く、というのは大きな強みです。

また、ユーザーインターフェース(UI)も、初心者から経験豊富なトレーダーまで幅広いユーザーに「シンプルで分かりやすく、直観的に取引しやすい」と好評です。そして機能拡充にも注力しています。LINE FXは後発参入のサービスですので、スピード感を持った機能拡充に力を入れてきました。最近ですと、高機能チャートの「TradingView」や、スワップ振替機能を導入しています。このスワップ振替機能は、ユーザーからの要望に応える形で導入した機能です。

このように、定期的なユーザーヒアリングを活用した機能拡充を続けることで他社との“同質化”と、私たちの強みであるLINEを活かしたサービス展開という“差別化”が上手く嚙み合ってきていることが、着実な成長に繋がっているかと思います。

LINEを活かしたサービス展開により、ユーザー層にも特徴がありますか?

兵頭氏:LINE FXのユーザーは、主に20代から30代の男性が中心です。年代という点では、FX取引という特性上、他社サービスと比較しても大きく異なる点はないと思います。一方、取引経験歴という観点から見てみると、FX取引初心者による利用が多いです。この背景には、“リアルタイムでのLINE通知”や“見やすいUI”などLINE FXが強みとして持っているビジネスモデルと、LINEアプリのユーザー層がマッチしていることにあるかと思います。

また、比較的若いユーザーが増えていることは「貯蓄から投資へ」や「資産所得倍増プラン」など、社会的な動きによる後押しが大きいです。投資や資産運用への関心も高まり、金融知識を持った方も増えてきているので、FX取引=投機的という見方も一昔と比べると変わってきているのかなと感じています。

FX事業への集中を決めた“新生LINE証券”ですが、今後特に強化していきたいと考えている領域等はありますか?

兵頭氏:やること自体は、これまでと大きくは変わりません。FX事業への集中により、これまで以上にやるべきことが明確化しましたので、引き続き“ユーザーファースト”の視点を持って、サービスの改善や機能拡充に注力していきます。そして、LINE FXならではの強みを活かしたサービスアップデートを行うことで、更なる利便性の向上を図っていきたいと考えています。