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さまざまなプラットフォームやSNSが波及したことにより、企業では社内外におけるブランディングやファン獲得に奔走している。オンライン上でのコミュニケーションが加速する一方で、リアルの場でも人の心をつかむツールは欠かせない。ノベルティの制作もその手法の一つだ。取引先や顧客に向けて配布するほか、入社時や社内イベントなどで社員に配布し、企業への愛着を深め、帰属意識を高めるといったインナーブランディングにも貢献している。
多様なノベルティが作られる中、今ユニークなノベルティとして注目を浴びているのが、スペイン・バルセロナ発のアート・キャンディ『PAPABUBBLE(以下、パパブブレ)』である。ユニークで繊細な見た目や、たった1センチの世界に企業のアイデンティティをあしらうアート性が、味わいとともに記憶に残るノベルティとして活用されている。
これまでルイ・ヴィトンやMeta社といった企業や有名アーティストとのコラボをはじめ、年間300を超えるオリジナルキャンディを制作してきたパパブブレ。今回AMPではANAシステムズ株式会社の10周年を記念したキャンディの制作現場を取材。パパブブレ 外商室 室長 皆川真衣氏、キャンディ製造部 シニアマネージャー 森本修平氏、そしてANAシステムズ 総務部 鈴木浩美氏に話を伺い、さまざまな企業を引きつけるパパブブレの人気の秘密に迫った。
日本上陸18年、『PAPABUBBLE』が創造するアート・キャンディ
“世界一面白いお菓子屋さん”を掲げ、プレミアム・アート・キャンディをはじめユニークなお菓子を展開するパパブブレは、2003年にバルセロナで創業。現在日本では20店舗以上を展開している。職人技が光る手作りのアート・キャンディは、光沢感がありデザインやフレーバーも豊富で、ついつい目移りしてしまうほど。
一部の店舗では職人が手際よくアート・キャンディを作る様子を見ることができ、そのエンタメ性の高いライブパフォーマンスはSNSでも人気だ。伝統のあめ細工の技術を取り入れた、見て楽しい、選んで楽しい、食べて楽しい、新感覚のキャンディショップである。
デザインを再現する精巧な技術。アート・キャンディができるまで
ANAシステムズでは、飛行機(パッションフルーツ味)、尾翼(ライム味)、10周年アニバーサリー(コーラ味)、人気キャラクターそらっち(ピーチ味)をデザインした4種類の制作を依頼。また、特別に同社の10周年実行委員メンバーがキャンディ作りを体験した。
今回、オリジナルキャンディの制作の現場となるのは中野本店。ほんのりと甘い香りが広がる店内には、キャンディ作りのための長い作業台が置かれている。
まずは、160度まで熱した液状のあめが鉄板に流し込まれ、冷ましながら色付けや酸味などの味付けを加えて豪快かつ丁寧に練り上げていく。練り上がったあめでパーツを作り、デザインどおりに組み合わせると15キロほどの重さに。それを約1センチの太さになるよう細く伸ばして成形。最後にカッティングする流れだ。カチンカチンと小気味よくカッティングする音が店内に鳴り響く。おおよそ30分で宝石のように光沢を放つオリジナルキャンディが完成した。
「一人前の職人になるまでには2〜3年くらいかかり、オリジナルキャンディを作れるようになるまでは5年以上かかります」と語るのは、職人9年目の森本氏だ。
設計図は作るものの、基本的には職人の頭の中でデザインが組み立てられているという。オリジナルキャンディでも試作品を作ることはせず、一発勝負で作るそうだ。それでもデザインの再現性が高いおいしいキャンディに仕上がるのは、まさに職人がなせる技である。
オリジナルキャンディを作る際、企業側からデザインのリクエストをもらっているが、味や食感とのバランス、再現性などを考慮し、職人の知識と経験から最適なデザインへと落とし込まれている。森本氏「お客さまの前で作るときは作業に集中し過ぎず、笑顔で流れなどを説明しながら進めるようにしています。パパブブレの魅力は、パフォーマンスやデザインの再現性はもちろんのこと、キャンディとして味や食感も楽しいことです。サクサクほろほろの食感にこだわって作っています」
ANAシステムズが語る、オリジナルキャンディに込めた思い
今年で10周年を迎えるANAシステムズ。今回制作したオリジナルキャンディは、12月に予定されている社内イベントにて社員に配る予定だという。どのような思いからパパブブレに制作を依頼したのだろうか。同社の鈴木氏に話を伺う。
鈴木氏「見た目がかわいく味もおいしいので、私自身、以前からパパブブレさんのファンでした。今回制作をお願いしたのはオリジナリティが決め手です。ラベルや包装を企業ロゴなどに変えられる商品はあると思うのですが、中身そのものをオリジナルで作れるのはとても魅力的ですよね。思わず写真に収めたくなるような“映え”もありますし、社員も喜んでくれることを期待しています」
やはり気になるのはその完成度だが、鈴木氏は「依頼したデザインそのもので驚きました」と出来栄えにも満足の様子だ。既存品とは違い、作りたいものを作れるオリジナリティがアート・キャンディの大きな魅力の一つと言える。
制作フローに関しては、パパブブレ側と相談もしやすくスムーズだったと鈴木氏は振り返る。四つのデザインはANAシステムズ側から提案したものだ。10周年アニバーサリーのデザインは、クリスマスの時季に配ること意識しグリーンをベースにしていたが、視認性とクリアな発色を維持するため、パパブブレ側から白をベースにすることを提案されたという。
職人の森本氏は「キャンディとしてデザインも味も楽しんでいただけるよう、僕たちの経験から導き出したより良い提案をさせていただきました」と語った。
見た目・味・食感の三拍子がそろう。パパブブレだからこそできる企業貢献
年間300ものオリジナルキャンディを手がけるパパブブレ。そこにどのようなこだわりと工夫があるのか、森本氏と皆川氏に伺った。
森本氏「サクサク感にはバルセロナから伝わるレシピがあり、美しい光沢感は世界共通で大切にしている品質です。また季節や気候で材料の配合や加熱時間を変えています。大きさや味は日本独自の開発で、皆さまに親しまれる工夫を凝らしました。デザインにはロゴやキャラクターを扱うことが多いので、企業様は再現性の部分を気にされると思いますが、再現性の高さとオリジナリティを評価いただいております」
その品質の高さは、ラグジュアリーブランドや美術界も注目している。最近ではブランドの新店オープンを記念したノベルティや、東京では9月10日に閉幕した巡回展「ガウディとサグラダ・ファミリア展」のグッズとしてオリジナルキャンディを制作。また、食事後のお口直しとしてミシュランで星を獲得しているフレンチレストランにもキャンディを提供しているという。
「本当にいろんな場面で多くの企業様にキャンディを楽しんでいただいております。職人と連携するコンサルタントが最良のキャンディに仕上がるようご提案いたします」と語る皆川氏。見た目・味・食感の三拍子がそろっているからこそ人気を博し、企業からの信頼を獲得している。
記憶に残るユニークなノベルティが企業のブランディングに寄与
キャンディだけではなく、パッケージも企業ロゴや指定のデザインに差し替えができ、よりオリジナリティを追求したキャンディを作ることが可能だ。スタンダードなオリジナルキャンディは1デザイン30グラム(約25粒入り)で、300袋が最低ロット。キャンディの色は白+3色を色見本にて指定ができ、フレーバーは16種類ものラインアップから選べる。デザインを決めてから2週間〜1カ月程度で制作。賞味期限は納品から4カ月となっている。
- 見積もりイメージ(1デザイン300袋)
- キャンディ30gBAG×300袋 ¥550×300袋=¥165,000(税込)
- オリジナルラベル添付・印刷 ¥55×300袋=¥16,500(税込)
- 送料 ¥2,000 合計 ¥183,500(税込)
ANAシステムズの鈴木氏は「グループ会社にも今回のオリジナルキャンディの制作を報告し、お薦めしたいと思いました。普段からなじみのある自社のロゴや,そらっちのキャラクターがあしらわれているので愛着が湧きますし、思い出深いものになりました。まだ入社して日の浅い社員には、このキャンディを通して楽しい会社だと思ってもらえたらうれしいです」と期待を寄せた。
最後に、パパブブレの皆川氏にノベルティ制作を考えている企業に向けてメッセージを伺う。
皆川氏「オリジナルキャンディには企業の大切な世界観が表現されるので、社員は親しみを感じ、顧客には企業やサービスをさらに印象付ける側面があると思います。ぜひさまざまな場面でご活用いただきたいです」
一粒一粒に繊細な味わいとこだわりを感じることができるアート・キャンディ。その見た目の小ささに反し、ブランディングへの貢献は大きなものだ。
パパブブレのキャンディは、オリジナリティを表現できる見た目、フレッシュな香りと豊かな味、そして食感も楽しい。最後には食べてなくなってしまうかもしれないが、一粒一粒がまさに五感に働きかけるノベルティとして記憶に残るものになるだろう。
取材・文:安海まりこ
写真:西村克也