INDEX
帝国データバンクは、EV普及の影響や参入の意向に関するアンケート調査を実施し、結果を公表したとのことだ。
以下はその主要な結果である。
(1)EV普及による業績への影響
1-1. EVの普及による影響、「プラスの影響」「マイナスの影響」ともに10%台、実感乏しく
EVの普及による業績への影響を尋ねたところ、「プラスの影響」があると回答した企業は全体の11.1%で、「マイナスの影響」があるとした企業は13.6%。
なお、「影響はない」は41.0%、「分からない」は34.3%となった。
企業からは、「時代の流れについていくが…まだ情報収集の段階」「同業他社の動向をみている」との声が聞かれた。「2020年以降、完成車メーカーの内燃機関向け研究開発投資や設備投資は止まり、ほとんどがEVに振り向けられている」との指摘もあるという。
しかし、本当にEVが主流になるのか、10年後の自動車産業の勢力図がどうなっているのか、現時点で予測するのは難しいとみている企業が全体の7割以上を占めた。
1-2. 規模別、「大企業」ほど「プラスの影響」高く
EVの普及による業績への影響を規模別にみると、「プラスの影響」があると回答した「中小企業」が10.1%にとどまったのに対し、「大企業」は16.3%と6.2ポイントも高い結果に。
一方、「マイナスの影響」があると回答した「中小企業」は13.7%、「大企業」は13.2%と、大きな差はみられず、「影響はない」「分からない」は、ともにわずかながら「中小企業」が「大企業」を上回る結果となった。
1-3. 地域別、「プラスの影響」は『北関東』、「マイナスの影響」は『東海』がトップ
EVの普及による業績への影響を地域別でみると、「プラスの影響」が最も高いのは『北関東』の13.8%。次いで、『南関東』の12.4%、『北陸』の12.2%、『四国』の12.1%となった。
一方、「マイナスの影響」が最も高いのは『東海』が20.6%と突出。内燃機関を動力源とする既存の自動車産業は裾野が広く、関連企業が多数存在するが、その中心地である『東海』地域への影響は大きいという。次いで、『中国』(16.5%)、『東北』(15.1%)が続いた。
(2)EV事業への参入
2-1. EV事業、全体の1割が参入へ
EV事業への参入については、「3年以上前から該当する事業あり」が3.4%、「3年以内に新規事業として参入済み」が1.3%、「参入予定あり」が5.3%となった。
全体の1割が『参入済みもしくは参入予定』であり、何らかのかたちで拡大するEV市場に関わっていく意思を持っていることがわかったという。
なお、「参入予定なし」は67.4%に達しており、「分からない」も22.6%あり、本格的な参入の判断はまだ先のようであることがうかがえる。
2-2. 規模別、「大企業」ほど参入に前向き
EV事業への参入について、規模別にみると、『参入済みもしくは参入予定』が「中小企業」では9.1%であるのに対し、「大企業」では15.0%となり、「中小企業」を5.9ポイント上回った。
「参入予定なし」でみても、「中小企業」が68.3%、「大企業」は62.4%と5.9ポイントの差に。EV事業への参入について、「大企業」の方が「中小企業」より前向きな姿勢を持っていることがわかる。
企業からは、「いまは業界環境が一変する過渡期」との声があり、充電インフラの設備工事に商機を見出している事例が多く聞かれたほか、車両や電池に関わる様々な部材、センサーなどの開発、製造も多くの企業が手がけ始めており、ワイヤレス給電や水素エネルギーなど、先端分野の研究・開発を行っている事例も。
2-3. 地域別、EV事業参入に積極的なのは『北関東』、次いで『東海』
EV事業への参入を地域別にみると、『参入済みもしくは参入予定』が最も高いのは『北関東』の14.0%。
トヨタなどに比べて出遅れていたSUBARUが、本拠地とする群馬県でガソリン車との混流生産、更には新工場での専用ラインを計画するなどEVシフトを本格化させたことが背景に。
ホンダが栃木県のエンジン部品工場閉鎖を決定するなど逆行する動きもあるが、トヨタや日産のEV向けで商機を掴んだ企業もあるという。
第2位は『東海』の13.0%。EV普及で「マイナスの影響」が最も大きいのが同地域であり、自動車産業の集積地として新陳代謝が進む可能性があるとのことだ。
【調査概要】
調査期間:2023年7月18日~31日
対象:全国2万7,768社
有効回答企業数:1万1,265社(回答率40.6%)
<参考>
TDB「EV事業参入は全産業の1割 本格化への課題多く EV普及で「プラスの影響」が大きいのは『北関東』、「マイナスの影響」は『東海』」