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検索エンジン、オンライン広告市場における変化、グーグルのシェアは減少傾向
GAFAMの中でも、ジェネレーティブAI関連の取り組みで一歩リードするのがマイクロソフトだ。OpenAIへの巨額投資を通じて、GPT4など、OpenAIが開発するフラッグシップAIモデルへの優先的なアクセスを確保し、Officeといった主要プロダクトに統合している。
注目されるのは、マイクロソフトが同社検索エンジンであるBingにGPT4を統合したことによる、グーグルへの影響だ。
現在グローバルにおける、検索エンジン市場、オンライン広告市場では、グーグルが依然首位を維持している。しかし、ジェネレーティブAIの登場によって、市場シェアは大きく変わる可能性が高まっている。
Statistaのまとめによると、2023年3月時点の世界の検索エンジン市場シェアは、グーグルが85.53%で首位、これにBingが8.23%、Yahoo!が2.44%で続く構造となっている。
2020年1月時点では、グーグルが87.35%、Bingが5.53%、Yahooが2.83だった。この3年ほどで、グーグルは約2%のシェアを失った一方で、Bingがほぼ同程度シェアを増やした格好となる。
マイクロソフトが自社の検索エンジンBingや自社ブラウザのEdgeとジェネレーティブAIを統合したことで、ウェブ検索におけるユーザー動向が今後どのように変化するのかに注目が集まる。
検索エンジン市場での優位性により、グーグルはデジタル広告市場でも長らく首位を維持してきたが、この状況にも大きな転換点が訪れようとしている。
こちらもStatistaのまとめであるが、2023年の市場シェア予測では、グーグルが27.75%で首位を維持しつつも、メタが25.2%とグーグルに急接近すると予想されているのだ。また、アマゾンも着実にシェアを伸ばしており、2023年は7.1%に拡大する見込みとなっている。
2016年移行の動きを見ると、グーグル、メタ、アマゾンのデジタル広告市場シェアの推移は対象的だ。2016年のグーグルのシェアは31.5%と、2位のメタ(14.3%)を2倍以上引き離していた。アマゾンのシェアも1%に満たない状況だった。
ジェネレーティブAI搭載で変わるグーグル検索
検索エンジンとデジタル広告市場で、厳しい競争に晒されるグーグルだが、ChatGPTやBingへの対抗策として現在、独自に開発したチャットAI「Bard」を試験運用している。
一方グーグルは、Bardの展開に加え、グーグル検索にジェネレーティブAIを搭載したり、YouTubeコンテンツ制作者向けのAIツール展開を計画するなど、同時に複数のアプローチを進めている。
まずグーグル検索にジェネレーティブAIを搭載する仕組みは、「Search Labs」と呼ばれるプログラムを通じて、一般ユーザーを対象に試験運用が実施される。Bardと同様に、ウェイトリストに登録したユーザーに順次開放される見込みだ。
このSearch LabsにおけるジェネレーティブAI検索では、主に3つの新しい検索機能のパフォーマンスが注目される。
1つ目は、ジェネレーティブAIを搭載したことで、複雑なトピックを検索しやすくなる点。2つ目は、特定の質問に対するピンポイントの回答を生成できる点。そして、3つ目が検索エンジンが検索商品の要素を理解し、その情報を必要に応じて示す点だ。
1つ目の複雑なトピックを検索しやすくなる理由は、ジェネレーティブAIが、検索された文章を理解し、さらに検討すべき情報を抽出し、それらに関するサマリーを提示してくれるからだ。グーグルは、その例として「Learning ukulele vs guitar(ギターとウクレレの練習方法)」という検索クエリを挙げている。ジェネレーティブAIは、この検索文を理解し、練習の方法、練習時間、練習の難易度などをまとめ、ユーザーがさらに深ぼるべき情報を提示することが可能という。
ジェネレーティブAIが文章を理解できるため、特定の質問に対するピンポイントな回答生成も可能となる。グーグルは「How to get an old coffee stain out of a wool sweater?(ウールセーターから古いコーヒーのシミを取る方法)」を検索事例として挙げている。一般的に、SEO的な観点からいうと、この検索文に対し表示される検索結果は、これらのキーワードを含むコンテンツとなる。仮に検索文と同じ「How to get an old coffee stain out of a wool sweater?」というタイトルが付けられた記事や動画があれば、そのようなコンテンツが優先的に上位表示される。一方、ジェネレーティブAIが搭載された検索エンジンであれば、ウェブ全体の様々なコンテンツから、タイトルに制約されることなく、有益な情報を見つけることも可能になるようだ。
ジェネレーティブAI搭載により、商品検索の形も大きく変わる可能性がある。グーグルは「キッチン用の剥がせる壁紙」や「プールパーティー用のBluetoothスピーカー」を検索クエリの例に挙げている。「キッチン用の剥がせる壁紙」を検索すると、価格やレビュー、購入リンクだけでなく、実際その商品が剥がしやすいかどうかなど、ジェネレーティブAIが重要な要素を理解し、表示してくれるという。また「プールパーティー用のBluetoothスピーカー」であれば、防水・耐水性やバッテリー寿命などの重要情報を自ら探し、表示するようになるとのこと。
YouTubeにもジェネレーティブAI投入へ
グーグルは、検索だけでなく、YouTubeクリエイター向けにも、ジェネレーティブAIツールを展開する計画だ。
CNBCは5月17日、独自入手したグーグルの内部情報として、同社が広告主やYouTubeクリエイター向けにジェネレーティブAIツールを展開する計画を承認したと報じた。
同文書によると、グーグル社内の特定グループは同社が最近発表した最新大規模言語モデル「PaLM2」を活用し、広告主が独自のメディアアセットを生成したり、YouTubeクリエイターに動画の提案をしたりするツールの開発を進める計画を練っているという。
またグーグルは、PaLM2を活用しYouTubeのタイトルや説明文を生成する取り組みを特に若者向けコンテンツを対象に実施、一方クリエイター向けには、関連するトピックに基づいて5つの動画アイデアを提供するという実験も進めている。
さらに、グーグルはStable Diffusionのような画像生成AIの開発にも乗り出しており、広告主の取り込みを急ぐ構えだ。
メタ、アマゾンも広告・検索でジェネレーティブAI投入
検索・広告領域でのジェネレーティブAI活用を進めるグーグルだが、競合の動きも加速しており、市場シェアを死守するのは容易ではない。
たとえばメタは、広告主がジェネレーティブAIを活用した新しい広告ツールを試すことができる「AI Sandbox」を発表。また、同時に広告主がキャンペーン強化に利用できる自動化ツールや製品のポートフォリオである「Meta Advantage」のアップデートも明らかにした。
AI Sandboxには、広告文の複数のバージョンを生成できるテキストバリエーション機能、異なるプラットフォーム用にコンテンツのさまざまなアスペクト比を生成する画像クロッピング機能、テキストから背景を生成し交換できる背景生成機能など様々な生成機能が含まれている。
メタに加え、アマゾンもジェネレーティブAIを活用した検索強化に乗り出している。
The Vergeは5月16日、ブルームバーグの情報として、アマゾンが商品に関する質問に回答するだけでなく、商品比較や商品のパーソナライズドレコメンドを行うチャットAIの開発を進めるため、機械学習に特化したエンジニアを募集していると報じた。アマゾンは、この検索の変革を非常に重要なものと位置付けており、多くのリソースを投入する可能性がある。
文:細谷元(Livit)