ビジネス解像度を高めるリサーチ情報サービスを展開するアックスタイムズは、水素戦略・市場展望シリーズの第2弾として「海外の水素関連政策から読み解くグローバル水素市場の展望と日本の位置付け」を発表した。
■調査結果(抜粋)
【グリーン水素・ブルー水素・グレー水素の供給量推移予測(グローバル)】
~2050年予測:グリーン水素・ブルー水素の構成比98%~
多くの国・地域が2040年~2060年にカーボンニュートラル実現を目指しており、石油資源からの依存脱却を進めているなかで、その代替エネルギーとしてクリーンエネルギーである水素の需要が高まっている。
なかでも、最も環境負荷が低いグリーン水素の市場ニーズが高く、多くの国・地域でグリーン水素製造に関するインフラ整備・技術開発への補助金政策が打ち出されている。
一方で、インフラ整備や技術開発には一定の時間を要することから、需給ギャップの穴埋めとして、CO2回収・貯留技術を用いることで環境負荷を低減させるブルー水素の需要も拡大が見込まれるという。
そうした動きによって、現在は化石燃料由来燃料などから製造されるグレー水素の構成比が大部分を占めるものの、2030年頃にはグリーン水素、ブルー水素を併せた構成比は60%を超え、2040年頃には90%近くを占めるまで供給拡大がみられるとのことだ。
コスト面で課題を有するグリーン水素においても、水電解技術の進歩や水素利用シーンの拡大による経済性の発揮によって、徐々にコスト低減が進むとみられ、同社は、2050年にはグローバル市場で供給される水素の約60%をグリーン水素が占めると予測。
【水素に関する国家施策・ロードマップの策定状況】
日本は2050年にカーボンニュートラルを実現するための重点施策の一つとして、世界に先駆ける形で「水素基本戦略」を策定し、さらにグリーンイノベーション基金(GI基金)による民間の技術開発支援体制などを構築した結果、水素関連技術においてグローバルトップの位置付けを堅持。
諸外国においても、日本に続く形で、水素を主軸とした国家戦略・ロードマップを策定しており、自国・地域の強みや課題に合わせたエネルギー施策として水素の社会実装を強く推進している。
米国では、2022年に策定した「IRA(インフレ抑制法)」を始めとして、環境負荷の低い水素製造への強力な補助政策を打ち出しており、米国内における水素産業の育成を推進。
欧州では、ロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー安全保障体制の見直しが急務となった結果、水素を始めとする新エネルギーの需要が前倒し的に拡大しており、グリーン水素やブルー水素の国内製造基盤構築、および域外からの調達体制の構築を急速に進めている。
また、オーストラリアや中東といった石油資源に恵まれた国・地域でも、グローバル市場で脱炭素化が進む中、新しい対外政策・外資獲得施策として水素関連施策に注力度を高め、特にオーストラリアは地理的に近いメリットを生かし、日本およびアジアの水素需要拡大をビジネスチャンスとした水素輸出産業化を進めているとのことだ。
今後、グローバル市場において水素の中長期的な需要拡大が見込まれる中で、各国・地域では自国の強みを生かしたイニシアチブ発揮を図るとみられ、そのための政策を強化していくものとみられるという。
同社は、日本政府・日系企業においては、グローバル水素市場の動向・海外政府の動きを的確に捉えたうえで、諸外国との対外政策・ビジネス展開を行うことが今後の重点課題となっているとしている。
なお、同調査結果はレポート販売されるほか、水素・新エネルギー活用を推進している経済団体や自治体向けに調査結果の内容を含む講演・セミナーとして商品展開されるとのことだ。
■調査概要
調査目的|幅広い国・地域の水素関連政策を調査し、水素市場における日本の位置付けを分析
調査対象|水素関連の海外政府施策・推進組織・関連企業
調査範囲|グローバル市場
調査方法|業界ヒアリングおよび公開情報調査をベースに専門市場調査員が整理・分析
調査期間|2023年4月~2023年6月
調査実施|アックスタイムズ株式会社 新時代エネルギー・脱炭素テック担当
<参考>
アックスタイムズ『海外の水素関連政策から読み解くグローバル水素市場の展望と日本の位置付け』