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北海道大樹町(以下、大樹町)と共に、アジア初の民間企業に開かれた商業宇宙港「北海道スペースポート(以下、HOSPO)」の事業を推進するSPACE COTANは、橋梁の製作・架設を手掛ける釧路製作所が2023年5月1日、大樹町経済センター内のコワーキングスペースにサテライトオフィスを開設したと発表した。
釧路製作所は、宇宙産業への新規参入を目指しており、更なる営業強化のため関連する産業や情報が集まる大樹町にオフィスを構えたという。
今回の大樹町への進出は、HOSPOのビジョンである宇宙港を核に関連産業が集積する「宇宙版シリコンバレー」の実現に向けた大きな前進となったとのことだ。
大樹町とSPACE COTANは、引き続き新たなロケット発射場や滑走路延伸など設備の拡充を進め、企業誘致やビジネス創出、宇宙産業による地方創生を推進していくとしている。
橋梁、鋼製タンク製造 ものづくり技術で宇宙産業参入|2023年度内にロケットの精密加工部品の製造を目指す
釧路製作所は、主に橋梁および鋼製タンクの製造を行っている企業で、2018年に大樹町内のロケット開発スタートアップ「インターステラテクノロジズ」の試験設備を製造したことがきっかけとなり、現在はロケット発射場設備・ロケット部品の製造で宇宙関連産業への進出を目指しているとのことだ。
2022年11月には航空宇宙関連の国際認証であるJISQ9100を取得。同年12月には社内に航空宇宙準備室を立ち上げ、2023年度内に精密加工部品の製造を行う準備を進めているという。
大樹町のサテライトオフィスには、当面は1カ月に数日程度、社員を配置し航空宇宙関連の営業活動を行い、取引先拡大に合わせて社員を常駐させる予定であるとしている。
宇宙のまち大樹町で進む、航空宇宙関連産業の集積
大樹町は、東と南が太平洋にひらかれた地の利や広大な土地による発射場の拡張性、良好な気象条件等、世界でもトップクラスの宇宙港の適地であり、約40年前から航空宇宙産業誘致を進めてきた。
これまでJAXAやロケット開発企業を誘致し、2021年のHOSPO本格稼働後は関連産業の集積がいっそう進んでいるという。HOSPOの既存設備(1,000m滑走路・観測ロケット用発射場LC-0等)では民間や研究機関、大学等がロケット、小型航空機、空飛ぶクルマやドローン等の次世代モビリティの実験を実施(年間30件程度)。
現在、2022年に着工したロケット発射場LC-1と滑走路延伸の工事を進めており、国内唯一の民間にひらかれた垂直型・水平型ロケットに対応する商業宇宙港として、航空宇宙産業の活性化・競争力強化への貢献を目指しているとのことだ。
大樹町に集積する宇宙関連企業等
2008年 | JAXA(宇宙航空研究開発機構) | 大樹町と連携協力協定を締結し、多目的航空公園内(現HOSPO)のJAXA所有施設を「大樹航空宇実験場」とし大気球による宇宙科学実験等を実施 |
2013年 | インターステラテクノロジズ | ロケット開発スタートアップ企業。同町に本社設立、工場・実験場を持ち、人工衛星打上げロケットZEROを開発 |
2020年 | 国立大学法人 室蘭工業大学 | 超音速無人機の開発に向けた実験を大樹町にて行っている。ISTと共同研究を実施。旧小学校跡にサテライトオフィスを開設 |
2022年 | Our Stars | IST100%小会社の人工衛星の製造・開発を進める企業 |
2022年 | インフォステラ | 人工衛星用地上アンテナのネットワーク化、設置支援サービスを行う企業。初の地上局サイトを旧小学校跡地に設置 |
2022年 | 日本旅行 | 大樹町、SPACE COTANとパートナーシップ協定を結び、学校向けの教育旅行や企業視察等の観光コンテンツを開発 |
2022年 | INCLUSIVE SPACE CONSULTING | 大樹町と人工衛星データの利用促進に関する連携協定を締結。衛星データを使った牛の乳房炎の予測、樹種判別・CO2吸収量推定などのサービス開発を進める |
2023年 | エア・ウォーター北海道 | 大樹町と、宇宙産業とバイオエネルギーの開発に関する包括連携協定を締結。家畜糞尿由来のメタンガスをバイオ燃料として活用する実証実験を実施、今後ロケット燃料として活用を計画。 |
北海道スペースポートとは
HOSPOは、2021年4月に大樹町で本格稼働したアジア初の民間にひらかれた商業宇宙港。大樹町はロケットを打上げる東と南方向に海が広がり、広大な土地による拡張性の高さなどの地理的優位性があることから、世界トップクラスの宇宙港の適地と言われ、約40年前から宇宙産業誘致を進めてきた。
大樹町とSPACE COTANは「北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる」というビジョン実現に向けて、ロケットやスペースプレーンの発射場・実験場を整え、世界の宇宙ビジネスを支えるインフラとして、ロケット開発や宇宙産業の発展に貢献するとのことだ。また、宇宙産業を核とした地方創生、ビジネス創出を目指すとしている。
現在は新たな人工衛星用ロケット発射場LC-1と滑走路延伸工事を進めており、整備資金の一部は企業版ふるさと納税制度を活用している。地域特性を活かした地方創生の取り組みで人口減少に歯止めがかかっていることなどが評価され、大樹町は2022年度の企業版ふるさと納税制度の内閣府特命大臣表彰を受けたという。