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※変動分布図の閲覧方法の詳細は国土地理院のWebサイトで紹介されています。
防災意識の向上に貢献
だいち2号は2014年5月に打ち上げられた地球観測衛星で、合成開口レーダ(SAR)が搭載されています。今回公開された変動分布図は、だいち2号の8年に及ぶ観測データを用いて干渉SAR時系列解析を実施し、作成されました。
宙畑メモ 干渉SAR時系列解析
同じ場所をSARで複数回観測することにより衛星と地表の間の距離変化を求め、その間に生じた地表の動きを検出する解析を「SAR干渉解析」といいます。
干渉SAR(InSAR)とは-分かること、事例、仕組み、読み解き方-
変動分布図の作成で実施された「干渉SAR時系列解析」とは、異なる時期の観測データを用いて作成した多数のSAR干渉画像を統計的に処理することにより、SAR干渉画像に含まれる大気や軌道誤差に起因する誤差を低減することで、個別のSAR干渉画像では捉えることが困難な微小な地表の動きとその時間変化を捉えることができる解析手法です
参考:干渉SAR時系列解析とは
変動分布図からは地震による地殻変動データは除かれています。その理由を国土地理院 測地部 宇宙測地課 課長・佐藤雄大さんはこう説明しました。
「地震による変動を含めますと、局所的な地盤沈下が隠れて見えなくなってしまいます。まずは、(普段は)見えない局所的な変動を皆さんにお示ししたいということで、除去しました。一方で、そういう(地震による)歪みなどを監視する意味もありますので、今後は全体の(地震による地殻変動を含んだ)変動分布図も作成をして地盤の監視をしていきたいと思っています」
また、変動分布図の用途や想定ユーザーについて、佐藤さんは火山周辺に住む方や登山を趣味とする人を例に挙げて、防災意識を高めてほしいと説明しました。
「(火山の)周辺には住民がいて、やはり一度噴火が発生してしまうと、その影響が大きくなります。そのような背景の中で、活火山の動きが、わかりやすく地理院地図で確認できるようになったことは、一般の方々や周辺の住民の皆様に、改めて防災意識の向上に役立てていただけるのではないかと思っております。自治体や研究者、学生、登山者の方々にとっても参考になるような情報だと思います」
「今回の公開に際して、一般の方々がこれまで見たことのないような変動が、この地理院地図から見えるようになりました。どのような活用ができるかは今回が初公開なので、まだ未知数ではありますが、まずは皆さんにこういう地面がどのように動いているかを把握していただいて、理解から今後の活用をどんどん広げていってもらいたいです」
だいち4号への期待
さらに、国土地理院の佐藤さんは、だいち2号の後継機であるだいち4号への期待も語りました。
「この変動分布図は、衛星データが増えれば精度も向上しますので、さらなる衛星データの蓄積に合わせて、更新していく予定でございます。ここで期待されるのは、だいち4号という、だいち2号の後継機です。だいち4号は2号よりも、一度に観測できる幅が拡大します。それに伴い、私ども得られるデータも大幅に増えますので、変動分布図のさらなる精度向上にも繋がることが期待されます。ですので、国土地理院といたしましては、だいち4号の打ち上げと運用開始を心待ちにしているところでございます」
だいち4号は、だいち2号の5倍の観測頻度を実現させることができます。H3ロケット試験機2号機で2023年度に打ち上げられる予定でした。ところが、試験機1号機の打ち上げが失敗した要因の分析など進められていることから、打ち上げが後ろ倒しとなることが懸念されています。
だいち2号のプロジェクトマネージャを務めるJAXAの祖父江真一さんによると、だいち2号は設計寿命を過ぎて運用が続けられているものの「技術的には、(今後)数年というオーダーでは大丈夫だと考えています」と説明しました。だいち2号による観測は継続されますが、観測頻度の向上が求められていて、だいち4号の運用開始への期待も高まっています。
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