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糸魚川総合病院 脳神経外科と糸魚川市 健康増進課の研究チームは、能生国民健康保険診療所、仙台頭痛脳神経クリニックとの共同研究で、「痛み止めの使いすぎによる頭痛(薬剤使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)有病率調査」を日本で初めて実施したという。
コロナワクチン接種後の待機時間を利用したこの調査において、糸魚川地域の生産年齢人口(15-64歳)における痛み止めの使いすぎによる頭痛の有病率は2.32%であることを報告したとのことだ。
なお、同研究は令和3年12月14日に神経科学雑誌「Neurological Sciences」に掲載されることが決まっている。
【背景】
日本における片頭痛の年間有病率は8.4%で、20-40歳代の女性に多いと言われているという。片頭痛を含め頭痛の大半は命に関わることはなく軽視されがちであるが、片頭痛による欠勤や休業、学業や労働のパフォーマンス低下などによる間接的経済損失は1人あたり176万円/年と言われている。
片頭痛を含め頭痛の多くは、①痛いときに飲む「痛み止め」の適切な選択と内服 ②そもそも痛くなって困らないように頭痛の重症度や頻度を改善する「予防薬」の内服により、生活への支障を最小限にコントロールすることができる。
そのため、月に2回以上頭痛があるなど、頭痛により普段の生活に支障をきたしている場合は医療機関で適切な治療を受けることが、患者自身の生活の質の向上および日本の経済発展のために重要であるとしている。
しかし、日本において片頭痛患者の約7割は医療機関を受診せず、市販の痛み止めを使ったり我慢をしたりしているのが実情であるという。
さらに「頭痛になったら困るから痛くないけれど予め飲んでおこう」というように頻繁に痛み止めを使用すると、かえって頭痛が起こりやすくなってしまい、痛み止めを毎日のように使用した結果、脳が痛みに敏感となり、どんどん頭痛が悪化してしまう状態を、痛み止めの使いすぎによる頭痛(薬剤使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)と言うとのことだ。
目安としては月に10回以上痛み止めを飲んでいる場合に、痛み止めの使いすぎによる頭痛になる傾向があるとのことだ。この痛み止めの使いすぎによる頭痛で困っている患者が日本でいったい何人いるのか今まで調べた研究はなかったという。
【方法と結果】
コロナワクチン接種後の待機時間を利用して、糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で糸魚川市民にアンケート調査を実施。その結果、糸魚川地域では15-64歳の人の2.32%が痛み止めの使いすぎによる頭痛になってしまっていることが疑われたという。
【今後の展望】
およそ50人に1人が頭痛に対して適切な治療を受けておらず、痛み止めの使いすぎにより頭痛が悪化してしまっていることが示唆された。これは諸外国の報告とほとんど同じくらいの割合であるとのことだ。
しかし、まだまだ日本において片頭痛に対する社会の認識は乏しく、片頭痛による社会的経済的損失は重大であるという。頭痛は適切な治療でその生活への支障を最小限にすることが可能な疾患であるため、今回の調査をきっかけに、片頭痛への理解、医療機関への適切な受診、痛み止めの使いすぎによる頭痛の予防・啓発が広まることが期待されるとしている。