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新型コロナウイルスの感染拡大の影響により在宅勤務やリモートワークが加速し、私たちの労働環境は以前にも増して多様なものへとシフトしてきている。新しい環境により、それまで感じることのなかったストレスと向き合っている人も多いのではないだろうか。かくいう筆者も出社から在宅への移行組だ。通勤によるオン・オフの切り替えがなくなり、仕事仲間との雑談が減ったことで、気分転換や息抜きが上手くできていないと感じる場面が多くなった。
特に、冬は労働環境に関わらずストレスを感じる人が増えるといわれているため注意が必要だが、その原因はどこにあるのだろうか——。脳神経医学の第一人者としてストレス研究に携わる酒谷薫氏(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 共同研究員(前 特任教授))に、冬ストレスの原因と効果的な対処法を伺った。
働き方の多様化で増えるストレス要因
ビジネスパーソンにはストレスが付きものである。江崎グリコが全国の 20 代〜60 代の働く男女 500 人に行った「ストレスとの向き合い方実態調査」では、7割以上が現在ストレスを感じており、その半数以上がストレスの要因として「仕事」を挙げている。
また、ヒューマネージ社が55万人に行ったストレス調査によると、パンデミック以降に高ストレス者率が増えている。それまでの出社勤務に加え、新たな労働環境として定着しつつある在宅勤務によるストレスも見られるという。酒谷氏も在宅勤務によるストレスには注意が必要だと語る。
「同僚とのコミュニケーション不足に陥り、ストレスを溜め込んでしまう可能性があります。また、家族との時間が増える良さもありますが、逆にそれがストレスに感じてしまう人もいるようです。そして、運動はストレスの低減につながりますが、在宅勤務ではどうしても運動の機会が減ってしまいます。朝から夕方までずっと座っているのは良くありません。通勤の満員電車がストレスになる人もいますが、通勤自体が運動を担う側面があったわけです」
出社勤務では通勤や人間関係によるストレスが考えられる一方で、在宅勤務はコミュニケーションや運動の不足などがストレスを増やす原因になると考えられる。個々人の性格や取り巻く環境にも左右されるが、人とのコミュニケーションや外出などは、気分転換として適度に行えるとよさそうだ。ヒューマネージ社の調査でも、出社と在宅をかけ合わせたハイブリット出社が、ストレス状態が良好だとする結果がある。
ストレスを低減させるヒントを得るためにこちらも参照いただきたい。
日照時間と寒暖差が影響する「冬ストレス」
日々労働環境によるストレスと向き合う私たちだが、冬は季節性のストレスにも注意が必要だといわれている。冬ストレスとは何が原因となり引き起こされるのだろうか。酒谷氏は2つ考えられると語る。
「冬ストレスの原因は、2つ考えられます。1つは日照時間が短いことです。日光を充分に浴びないことで、リラクゼーション効果があるといわれているセロトニンの分泌が抑えられてしまい、気分的にストレスを感じやすくなります。もともと北欧などの日照時間が少ない緯度の高い国で指摘されていたセロトニン不足ですが、日本でも冬の間は注意が必要であることがわかってきました。
もう1つは寒暖差です。暖かい屋内から寒い屋外へ出ると、血圧の上昇が見られます。血圧の上昇は身体に負担をかけてしまうものです。冬は寒暖差が影響するフィジカルストレスにも気をつけましょう」
日照時間がそれほど短くない地域に住んでいたとしても、在宅勤務により家にこもりがちな生活を送っている人は、セロトニン不足に注意が必要だという。
ストレスサインと対処法
ストレスは知らず知らずのうちに心身に負担をかけてしまうものだ。どういったサインを感じたときに冬ストレスを疑うべきなのだろうか。
「寝つきが悪い、夜中に目が覚めてしまう、朝早く起きてしまう、寝ても寝た感じがしないのはストレスが原因かもしれません。それから肌の調子もサインのひとつです。また、冬に限らずに言えることですが、ビジネスパーソンは緊張にさらされる場面が多いと思いますので、頭痛を感じる人もいるでしょう。
実は、物忘れもストレスが原因であることがあります。ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが分泌されると、脳の記憶学習中枢である海馬に影響を与えるので、物を置き忘れてしまう、会議の時間を忘れてしまうなんてことが起こり得ます」
できることならストレスサインを感じることなく毎日を快適に過ごしたい。日頃どんな行動を心がければよいのだろうか。
「まずは運動です。特に在宅勤務の人は、1時間に1回は立ち上がって屈伸やストレッチといった運動をするのが効果的です。そして、朝日を浴びてセロトニンの分泌を促しましょう。これは夜眠りにつく時に必要なメラトニンの分泌にもつながります。また、セロトニンは目から入る光刺激により合成されるので、人工の照明でも効果があります。一番のおすすめはウォーキング。運動とセロトニンの分泌を促す日光浴のどちらもできるので一石二鳥です。
そのほか、心地よいと感じる香りを楽しんだり、好きな音楽を聴いたり、おいしい食事を摂ることもよいでしょう。
普段から“心地よい”と感じられるものを取り入れた生活を送ってみてください。
どれも基本的なことではありますが、自身のストレスの原因を把握し、メカニズムを理解、対処法を心得ておくことで、ストレスを未然に防ぐことができます」
ビジネスパーソンは要注目。ストレス低減が期待できるGABA成分
ストレスへの対処法はさまざまだが、今、ストレスの低減が期待できるGABA(ギャバ:Gamma Amino Butyric Acid)に注目が集まっている。「ストレスとの向き合い方実態調査」では、「GABA 成分」が、ストレス低減に効果があると思う成分で 1 位になるなど、認知度も高い。
GABA成分の神経生理学的研究に従事していた酒谷氏によると、GABA成分とは植物や動物、人間の体内に存在する天然のアミノ酸で、気持ちを落ち着かせる抗ストレス作用があるという。
「ストレスを感じていると神経が興奮状態にあるわけですが、GABA成分には神経細胞の興奮を抑制する作用があります。そのことからストレスの低減や睡眠の質を整える効果が期待できます。GABA成分にはストレス低減機能だけではなく、加齢に伴い低下する論理的思考力や記憶力を維持する機能が報告されているので、ストレス低減に加えて、ビジネスパーソンには注目の成分です」
GABA成分はさまざまな食べ物から摂取が可能だ。発芽玄米には100g中10mgのGABA成分が含まれているほか、トマト・なす・アスパラガス・かぼちゃ・きゅうり・メロン・みかんなど、野菜や果物や、チョコレートの原料となるカカオにも多く含まれている。
最近は、気分転換のおやつとしてデスクの上にお菓子を用意している人も多いが、GABA成分を含んだものをチョイスするのも、ストレスに対するセルフケアとしておすすめしたい。
これからの季節、日照時間の短い日が続き寒暖差を感じる場面も多くなるだろう。ストレスサインを強く感じてしまう前に、ストレスに対する原因や対処法を知り、セルフケアを上手に取り入れていきたいものだ。
GABA(ギャバ)成分を正しく理解するため、ストレス低減、睡眠の質向上、血圧低下、認知機能の維持、筋肉維持・増量など、さまざまな機能を持つGABA成分の基礎知識から最新研究までをまとめたWEBサイトがこちらから確認できる。ぜひ、ココロとカラダの健康づくりに、役立ていただきたい。
文:安海まりこ