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2021年11月のピークからすでに2兆ドルもの価値が失われたといわれる暗号通貨/NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)市場。しかし、NFT/ブロックチェーンゲームへの投資は堅調に推移していることが、米国の投資銀行Drake Star Partnersによる新たなレポートで報告された。
このレポートによると、2022年1月からこれまでに計34億米ドル、直近の四半期においてはプライベートファイナンスの50%ほどがNFT関連ゲーム企業へと投じられており、その額は約12億ドルに上る。
「クリプトウィンター:暗号資産・冬の時代」と呼ばれる厳しい現状においても、投資家を惹きつけているのが、NFT/クリプトゲーム業界のようだ。
「クリプトウィンター:暗号資産・冬の時代」の到来
暗号通貨の価格が下落し、長期間にわたってそのまま低水準にとどまる「暗号資産・冬の時代」。2021年11月以来、暗号通貨市場は3兆ドルから1兆ドル未満へと大幅に落ち込み、暗号市場全体の指標であるビットコインが65%も下落するなど、現在の暗号通貨市場はこの「冬の時代」が到来していると言われる。イーサリアムなどの主要アルトコインも59%以上の下落を記録している。
前回の暗号通貨の冬は2018年から3年続いたが、今回の冬がいつまで続くかは先行き不透明であり、世界最大手のNFTマーケットプレイス「OpenSea」では、取引が5月の史上最高値から99%減少したことを受け、7月に20%の人員削減を行った。ユーザー数が6800万人に達する暗号資産取引所「Coinbase」も6月に従業員の約18%を解雇、株価は現在までに75%下落している。
堅調なNFT/ブロックチェーンゲームへの投資
このような暗号通貨市場低迷の中でも堅調なのが、前述したように、今年すでに34億米ドル以上が注ぎ込まれているNFT/ブロックチェーンゲーム企業への投資だ。
このようなブロックチェーン技術をベースに開発されたオンラインゲームでは、自作したり、カスタマイズしたキャラクターやアイテムなどのデジタルデータをNFTマーケットプレイスで売却し収益を得たり、ゲーム内コンテンツにおける高スコアや勝利、クエスト完了の報酬としてトークンを入手して売却することができる。
つまり、ゲームをプレイしてお金を稼ぐことができる「Play To Earn(P2E)」という点、遊びを収益化できる点が特徴だ。
日本の大手ゲームメーカー、スクウェア・エニックスも参戦
NFT/ブロックチェーンゲームには、『ファイナルファンタジー』シリーズ、『ドラゴンクエスト』シリーズなどで有名な日本の大手ゲームメーカー、スクウェア・エニックスも今年2月にブロックチェーン・エンタテインメント事業部を新設し参戦することを表明。
自社におけるブロックチェーンゲーム・エンタテインメント開発だけでなく、すでに仮想通貨が普及している国を対象に、海外法人を設立するといった方針が示されている。
同社は、ブロックチェーンゲーム『The Sandbox』といった他社への投資も積極的に行っており、香港拠点のNFTゲーム会社アニモカブランズが2020年3月に実施した2.3億円の資金調達ラウンドも主導していた。
NFTトレーディングカードゲーム『Skyweaver』開発会社は約57億円を調達
今秋に入ってからも、NFT/ブロックチェーンゲームプロジェクトへの投資は活発である。
NFTトレーディングカードゲーム『Skyweaver』の開発元であるHorizon Blockchain Games社は、ShopifyのCEOであるトバイアス・ルーク氏を含む投資家から4000万米ドル(約59億円)を調達したと10月上旬に発表している。
ブラウザ版、モバイル版両方がこれまでにリリースされている『Skyweaver』は、ファンタジー世界をモチーフにしたキャラクターのトレーディングカードを使って他のプレーヤーと戦うゲームで、今年6月時点で40万人以上のユーザーを記録している。集めたカードはゲーム内で使用するだけでなくイーサリアムNFTとして売却や取引が可能だ。
ブロックチェーンロールプレイング『Legendary』シリーズは約68億円を調達
キャラクターを操作し、さまざまなミッションをクリアするRPG(ロールプレイングゲーム)分野でも、NFT/ブロックチェーンゲームは注目度が高い。
ゲーム開発会社にブロックチェーン・ソリューションを提供する米国企業Forteが設立した「N3TWORKスタジオ」は、今年5月に4600万米ドル(約68億円)を調達したが、同社の開発する『Legendary』シリーズの『Legendary: Heroes Unchained』は、ヒーローを集めて強化し、モンスターや他のプレイヤーとバトルを繰り広げるNFT・RPGだ。
他のプレイヤーチームとのバトルやミッション、ゲーム内の土地の獲得といったゲームコンテンツで獲得した土地、国、キャラクター、アクセサリーなどのアイテムはすべてがNFTであり、マーケットプレイスで売買し、現実世界の通貨(リアルマネー)に交換可能なトークンを獲得できる。
ローンチ後、プレイヤー集めに苦慮するゲームも
このように盛り上がりを見せているNFT/ブロックチェーンゲーム業界への投資だが、これまでのところ、数千人以上のプレイヤーを集めたゲームは数少なく、今後どうなっていくかはまだまだ不透明だ。
ブラウザベースの3D仮想世界プラットフォーム「Decentraland」は、サムスンなどの有名企業や、ドルチェアンドガッバーナなどの有名ブランドの参加で話題を集めたが、現在毎日約8000人程度がログインするものの、そのほとんどがブロックチェーン関連のアクティビティーは行っていないことが報じられている。
仮想世界でクリエイターとして製作したアイテムを販売することもできるMeta社の主力ソーシャル・プラットフォーム「Horizon Worlds」も、今年2月に月間30万人だったユーザー数が、現在20万人未満に減少している。
ポテンシャルを感じさせるNFTゲーム市場、法整備の行方に注視
現状、英語のみ対応のサービスも多いものの、今後日本でも大手ゲーム会社が日本語対応のゲームを開発することで、ユーザー層が広がり、より身近なものになる可能性を秘めたNFT/ブロックチェーンゲーム。
しかし、ここ数年で急速に市場が拡大している仮想通貨、NFT分野は法律の整備がまだ追いついておらず、今後、設けられる規制の程度によってはその勢いに影響が出ることもあり得る。
スクエア・エニックスも、ブロックチェーンゲーム関連の法規制整理やガイドライン策定に関わっていきたいと発表しているが、これからの動きに引き続き注視する必要がありそうだ。
文:大津陽子
編集:岡徳之(Livit)