「花の国」の最先端フローリストへ。サステナブル花屋さん認証「Green Floristマーク」(オランダ)を深堀り

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「世界一の花大国」のオランダ 

オランダはチューリップのみならず、さまざまな種類を含む花の生産量世界一。意外なことにアフリカ圏などからの輸入も盛んで、世界最大規模の「アールスメール花市場」などを経由して輸出される切り花の量も世界一。生産量一位のみならず、切り花のグローバルな流通の世界的ハブともなっており、「世界の花の価格はアールスメールで決まる」などとも言われている。

春から夏にかけて多くの種類の花を育てやすいおだやかな気候と農業国としての知見、1600年代のいわゆる「チューリップ・バブル」時代から際立つ花を愛でる文化に支えられた「花大国」では、人々の日常も花があふれている。

一方でオランダは、近年注目のサステナビリティ先進国でもある。自然とともにある花卉業界はもちろん無関係ではいられず、また花をよく購入する消費者のうち91%が「少し料金を上乗せしてでもサステナブルな花を選びたい」とする調査もある。そんな流れを受け、最近は花屋さんもサステナビリティに配慮する店が増えている。

「花大国」で最先端のフローリストのステイタス

オランダのGreen Floristマークはそんな「世界一の花大国」で、「サステナビリティに配慮したフローリスト」の認定基準としてもっとも信頼を得ている承認制度。

「自然にやさしく」を超えた包括的なサステナビリティを最優先した同認証は、環境保全、エネルギー対策、ウェルビーイングなどサステナビリティ全般に関して配慮するために透明で公正な基準を導入し、同認定を受けた花屋さんからのブーケの購入が「よりよい地球の明日」につながるビジネスデザインの水準を提示している。

元々、主にビジネス用のギフトを販売するオンラインショップであるTopgeschenken.nlの花部門のイニシアチブとしてスタートしたとのこと。

同店はギフトとして汎用性の高いお菓子やケーキ、フルーツなどの食品をメインに扱っており、「食品フィールドでは一般的であるトレーサビリティや製品の製造・販売が与えるインパクトといったことが、同じ農産物であるブーケの花に関しては全く注意が払われていない」ことへの違和感が社内から生まれた。

そこで「近年の食品のように、消費者に対して生産者や生産方法が透明で、生産や流通の過程においても環境や社会へのインパクトに配慮した花屋さんが普及するよう、認証制度を整備する」という構想が浮上したという。

現在はMPS-ECASという独立法人を設立し、同様にオランダ発の園芸部門のサステナビリティ推進の専門組織であるMPSと提携して、フローリストに特化した認証活動を行っている。

認定を受けたショップのスタッフたち(公式サイトより

同認証の考える「サステナビリティ」

詳しくその内容を見てみよう。

同組織から受けられる承認は、ブーケを対象とした「MPS-A」と、花屋さんのお店を対象とした「Green Florist」の2種類。

同社提携の独立組織の判定によって、以下のカテゴリーで110ポイント中70ポイント以上を満たした花が8割以上使用されており、ラベルにより消費者からのトレーサビリティが保証されているブーケは、「MPS-A認定」を受けられる。

  1. 作物保護
  2. 肥料
  3. エネルギー
  4. 廃棄物

また、自分の経営する花屋さんに「Green Florist」の認定を受けたい場合は、同様にMPS-ECASから依頼を受けた判定組織により、以下のカテゴリーで審査される。

  1. 一般

3カ月のトレーニング期間、グリーン・フローリストの条件に関する知識、経営の透明性の確保、監査の受け入れ、文書化。

  1. 仕入れ

 取り扱う園芸商品の60%以上が、先述のMPSなどの認定を受けているものであること。消費者からのトレーサビリティを保証する情報をラベルに記載する。行動計画の提出。お菓子などの食品を花とセットで販売する場合、100%フェアトレードのものであること。ワックスの利用禁止。塗装を施す場合、バイオベースの塗料であること。

  1. 廃棄

 廃棄物を植物系、プラスチック、紙、木、ガラス、化学物質の6種類に分別。廃棄物の量自体の削減のための行動計画作成(使い捨て容器の廃止など)。

  1. 包装

 ホイル、カバーともにリサイクル可能な原料でできているもの。紙は無塩素紙、もしくはエコ認定済のもの。生分解性のもの以外のプラスチックのキャリーバッグの提供の廃止。

今年6月に利用した際には、防水加工を施してありそのまま家に飾れる無漂白紙でできたボックスに直入れの状態で届いた(筆者撮影)
  1. 衛生

 使用する洗浄剤に塩素を利用しない。店舗、倉庫、オフィス、食堂、トイレの清掃スケジュールの作成。

  1. エネルギー

 100%グリーンエネルギー。6年以内に照明器具を100%サステナブルなものに切り替え。向こう3年のエネルギー対策プランの作成。

  1. 社会的側面

 団体労働協約(CLA)の適用、人事規則の透明化(すべての従業員に閲覧・利用可能)、持続可能な事業運営を実現するための10の基本ルール・マナーを、従業員を含む全スタッフで作成。年ごとのトレーニング計画。年に1度の従業員と雇用者の面接。

  1. 物流

 配送に利用する車両を含め、全ての商用車両が「7年以内に製造されたガソリン/ディーゼル車(0ポイント)~100%電気自動車(75ポイント)」のどれか

これら一つ一つの条件は完全に満たして各数十ポイント、全てを完全に満たすと1000ポイント満点となるが、850ポイント以上で「グリーンフローリスト」の認定を受けることができる。

消費者からの反応は? 

先述の通り、花を日常的に購入する習慣のある人は、選ぶ花のサステナビリティにも関心が高い傾向にあり、同認定を受けた店舗で花を購入した人のレビューは圧倒的に好意的なものが多い。

自身の花の購入が地球と人の未来にとっていいものであるという意識はもとより、花の状態や品質も非常に好評だ。

また、一つ一つのレビューを見ると「店員さんの気遣いが生き生きとしている」「配送してくれたスタッフが誇らしげな笑顔とともに花を渡してくれた」「スタッフ個人の創意工夫が活きていた」など、スタッフの態度を中心としたポジティブなショッピング体験を振り返るものが多い。

「花を通じて人々の日常を彩るのみならず、サステナビリティにも貢献している」という意識が現場にも影響しているのかもしれない。

日本でも「サステナブル+花屋さん」の取り組み 

一方、わが国日本でも「サステナブル+花屋さん」の取り組みが広がっている。

「日本サステナブルフラワー協会」は、なんと仕入れ総量の35%が廃棄されているという、フードロスならぬ「フラワーロス」の現状を変革するために設立された日本初の組織。

花を愛する人の「廃棄される花がかわいそう」という罪悪感を軽減するミッションも追求し、廃棄花のリユーズ・リサイクル製品の販売のみならず、花のリサイクルアートのワークショップや講座などスキルの普及にも力を入れている。

サステナブルフラワー協会の製品(同協会公式サイトより)

また、「植物×社会課題」をテーマとする株式会社LORANS.も、千駄ヶ谷や天王洲アイルなどにカフェ併設店舗やアトリエを3軒経営し、同様にフラワーロスの課題に取り組む。それとともに、障碍者やマイノリティの従業員を積極的に雇用し、「誰もが自分色に花咲く社会を作る」というミッションの実現に向けて企業努力を続けているという。

私たちの心を癒してくれる花々は、地球と人の未来も彩る存在に進化を遂げつつあるのかもしれない。 

文:ウルセム幸子
編集:岡徳之(Livit

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