岩岳リゾートは、世界水準のマウンテンリゾート化の実現に向け、総額21億円を投資し「⽩⾺岩岳マウンテンリゾート」内に輸送力・耐風性・静粛性に優れた新ゴンドラリフトを導入することを決定したと発表した。

開業時期は2024年12月を予定しているとのことだ。

ゴンドラリフト建て替えの背景

近年、日本のスキー・スノーボード人口は1998年の1800万人をピークに減少を続け、2020年には430万人にまで減少し、20年余りで4分の1の水準にまで激減しているという。こうしたなか、国内では、難しい経営状況に陥っているスキー場も少なくないとのことだ。

また、多くのゴンドラリフトやロープウェイ等の索道施設は、市場が盛り上がりをみせた1990年代前半までに建設され、その中には老朽化が進んでいる施設も存在しているが、その建て替えには多額の投資が必要になるため、厳しい経営状況の中では積極的な設備投資による更新が進みづらいのが実情となっているという。

岩岳リゾートが展開する「⽩⾺岩岳マウンテンリゾート」内のゴンドラリフトにおいても、1986年から35年以上に渡って運行しており、老朽化に伴う振動・騒音の多さや混雑日の輸送力不足といった課題に直面しているとのことだ。

こうしたなか岩岳リゾートでは、冬季のスキー場としての集客だけに頼らない通年楽しめる「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート化」を推進。2017年の「白馬岩岳MTBパーク」の開業や2018年の絶景カフェ&テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」の開業を皮切りに、様々なグリーンシーズンの魅力強化に努めてきた。

この結果、2021年グリーンシーズン(2021年4月29⽇〜11⽉14⽇)においては、コロナ禍にも関わらず過去最高の13万4,000人が来場。2013年のグリーンシーズン来場者数約2.5万人と比べると、5倍以上の集客に成功しており、冬季の来場者数を大きく超え、「冬よりもグリーンシーズンに多くのお客様が来場するスキー場」に進化することができている。

こうした成果により同社のキャッシュフローを大きく改善でき、老朽化してきたゴンドラリフトの更新を行うための投資を行うことが可能となったことを踏まえ、今回、輸送力・耐風性・静粛性に優れた新ゴンドラリフトの建設に向けた総額21億円の投資を決定したとしている。

このように、本来閑散期であったはずのグリーンシーズンの積極的な営業展開により、スキー場としての営業継続に不可欠である大規模な施設更新を行うことを可能にした例は昨今の国内のスキー場では珍しく、今後のスキー場運営存続・発展に向けたモデルケースの一つとなるのではないかと自負しているという。

輸送力・耐風性・静粛性に優れた新ゴンドラリフトを採用

新ゴンドラリフトの線路は、既存のゴンドラリフトのほぼ真横に設置予定。線路延長は既存ゴンドラリフトとほぼ同様で、水平長2,149m前後、高低差536m前後となるとのことだ。

今回導入を決定したゴンドラリフトは、索道施設を製造する国内最大手メーカーである日本ケーブル社が手掛ける「UNIGタイプ」を予定。10人乗りの大型搬器を採用し、車内空間も大きく広がることで快適性を大幅に改善。乗降場と搬器は段差がなく(バリアフリー対応)誰でも快適に利用できるとしている。

スキーやスノーボードも搬器内に持ち込めるようになるほか、マウンテンバイクも2台積み込みが可能となるとのことだ。

また、搬器は四面とも強化樹脂ガラスに覆われ、全方位360°のパノラマビューが可能となるため、乗車客で北アルプスの絶景を堪能することもできる。

既存のゴンドラリフトと比較して、スピードも秒速5m/sから6m/sにアップすることで所要時間は現行ゴンドラリフトの約8分から1分以上短縮。輸送力も1,350人/hから1,800人/h(搬器の追加導入により最大2,400人/hまで対応可能)と大幅に向上し、大型連休など混雑日の輸送力不足の解消が期待されるとしている。

さらに、減速運転も可能になることから耐風性に優れる点や新型機種の採用によりメンテナンス期間の短縮もできる点などから、整備等の運休日数の減少とグリーンシーズンの営業日数の増加も可能に。

また、支柱本数は既存ゴンドラリフトの22本から10本程度へと大きく削減。支柱本数の減少や新型のワイヤーロープや索輪の採用により乗車時の静粛性も大きく向上するとのことだ。

新ゴンドラリフト平面図

なお、既存ゴンドラリフトについては、新ゴンドラリフトの営業開始までは現行通りの営業を続け、新ゴンドラリフト完成後に解体を行う予定であるとしている。

ゴンドラオーナー制度導入も検討中

今回、新ゴンドラリフトの建設に当たり、白馬岩岳マウンテンリゾートのファン、スキー場のファンにさらに快適な白馬岩岳マウンテンリゾートづくりに協力してもらい、さらに熱烈な白馬岩岳のファンになってもらうことを目的に、ゴンドラリフト搬器などの『オーナー』になる「ゴンドラオーナー制度」も採用予定。

オーナーになった人には、搬器などへの名前の記載、複数年にわたるシーズンパスの提供、一部施設での特別割引宿泊提供などのサービスを提供予定。詳細は追って公式ホームページにてアナウンスするとのことだ。

さらなる「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート」の実現に向けた取組

今回の新ゴンドラリフトは2024年冬の開業を目標とし、今後必要な許認可の取得や建設工事に入ってくるが、白馬岩岳マウンテンリゾートでは新ゴンドラリフトの建設に留まらず、今後も「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート」の実現に向け、様々な取組を進めていくとしている。

具体的には、山頂エリアでオールシーズンお楽しみいただけるアクティビティを継続して充実させていくほか、山麓エリアのベースセンター機能の再整備の検討も開始しているという。

山麓エリアについては、現在、チケットセンターや更衣室、ロッカー、レンタルショップ、売店、レストラン、スクールカウンターなどの「ベースセンター機能」が複数の建物に点在し、ユーザーにとっての利便性に問題があることや、それぞれの建物も老朽化してきており、快適性の面でも課題があると認識しているという。

このため、こうした機能をまとめた新ベースセンターを今後新たなゴンドラリフト建設後に整備すべく検討も進めていくとしている。

白馬岩岳マウンテンリゾートでは、今後も来場客が白馬の大自然の中での感動を快適に体験できるよう、継続して新たな取組に挑戦していくとのことだ。

【白馬岩岳マウンテンリゾート 概要】
営業期間:2022年4月28日〜11月13日
営業時間:8:30~17:00
料金:入場料(ゴンドラ・リフト往復含む):大人2,400円、小人1,300円、ペット(一頭につき)700円
所在地:〒399-9301 長野県北安曇郡白馬村大字北城12056
TEL:0261-72-2474
駐車場: 800台(無料)
アクセス:東京から約3時間、名古屋から約3時間30分、関西から約4時間30分、最寄IC(長野IC、安曇野IC、糸魚川IC)から幅広道路で約1時間