富士フイルムは、バイオ医薬品の開発・製造受託事業の成長を一段と加速させるため、バイオ医薬品CDMOの中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(フジフイルム ダイオシンス バイオテクノロジーズ)(以下、FDB)の欧米拠点に、総額約2,000億円の大規模投資を行うと発表した。

同投資は、バイオ医薬品市場で高いウエイトを占める抗体医薬品の生産能力増強を目的に、FDBのデンマーク拠点と米国テキサス拠点に対して実施するもの。なお、増強設備の稼働はいずれも2026年を予定しているとのことだ。

抗体医薬品市場は、既存薬の需要増に加え、抗体薬物複合体(ADC)や、バイスペシフィック抗体を用いた薬など新型薬の拡大により、年率10%を超えるペースで成長すると見込まれているという。

このような中、同社は、市場ニーズの高い大型タンクによるバッチ生産方式と、さらなる高品質・高効率生産が可能な独自の連続生産方式の両輪で、抗体医薬品の生産能力の増強を進めているとのことだ。

バッチ生産方式では、2020年6月に、デンマーク拠点への大型設備投資の第一弾として、20,000リットル培養タンク6基の導入など約1,000億円の設備増強を決定。

さらに、2021年1月に、米国ノースカロライナ州に2,000億円超を投じることを決め、同サイズの培養タンク8基を備えた新拠点の建設を行っているという。

また連続生産方式では、同社が業界で初めて開発した、培養から精製まで原薬の一貫生産が可能な商業用連続生産システムの英国拠点への導入を2021年6月に決定。現在、同システムによるGMP製造体制の整備を進めているという。

今回、同社は、現在増強中の生産能力を上回る、抗体医薬品の旺盛な製造受託ニーズを受け、最短で生産設備の立ち上げが可能なデンマーク拠点に、20,000リットル培養タンク8基を追加導入する第二弾大型設備投資を行うという。

同投資により、2026年までに、同サイズのタンク保有数を、デンマーク拠点で20基、全世界で合計28基に拡大させるとのことだ。

また、ESG先進国として世界的に高い評価を受けているデンマークで脱炭素に向けた取り組みを推進するため、今回の増強設備には、天然ガスを動力源とする従来のボイラーに代えて電気ボイラーを導入予定。

さらに、生産過程におけるCO2排出量削減に向けて、電気ボイラーの動力源には、再生可能エネルギー由来の電力を採用していくという。

これらの取り組みにより、FDBのデンマーク拠点では、富士フイルムホールディングスの脱炭素目標(2040年度までにCO2排出量実質ゼロ)に先駆け、2030年度までにカーボンニュートラルの実現を目指すとのことだ。

また、同社は、世界最大のバイオ医薬品市場である米国にも戦略的投資を行い、欧米両市場で連続生産システムによる原薬製造体制を確立。

今回、英国拠点に続き、米国テキサス拠点に連続生産システムによるGMP製造が可能な設備を導入。新薬開発を行う顧客との協働のみならず規制当局との連携で早期商用化を目指し、連続生産システムを用いた製造受託のグローバルな市場形成を図るという。

連続生産システムでは、高い生産効率で高純度な抗体を製造できることに加え、分解や凝集が生じやすい不安定な抗体の製造も可能に。さらに、フレキシブルに生産量を調整できる特長を生かし、顧客の幅広い受託ニーズに対応していくという。

また、抗体生産量の単位当たりのエネルギー消費量を削減※11できるため、環境負荷の低減にも寄与するとのことだ。

同社は、幅広いバイオ医薬品を対象に生産プロセスの開発受託、小規模生産から大規模生産、原薬から製剤・包装までの製造受託ニーズに応えていくという。

また、バッチ生産方式のみならず、連続生産方式による製造受託を通じて製薬企業などに新たな価値を提供し、医薬品業界におけるベストパートナーを目指すとしている。