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日本バナナ輸入組合は、赤坂ファミリークリニック院長・東京大学医学部附属病院医師の伊藤明子先生らの研究グループが行った臨床試験の結果、バナナの長期摂取により日本人肥満者における貧血抑制効果の可能性が確認されたと発表した。
なお、同試験は2021年11月初旬から12月初旬にかけて実施されたもので、同臨床試験の論文は『薬理と治療』2022年5巻に掲載されたとのことだ。
■同臨床試験の概要
25歳以上45歳未満の明らかな疾病のないBMIが24以上の男女31名をバナナ摂取群(バナナを生で1日に可食部120g摂取)とバナナ非摂取群(通常の食事のまま)の2群にランダム化して分け、4週間の摂取期間の前と後の、血液検査、理学検査(体重、BMI)、血圧(収縮期血圧、拡張期血圧)、脈拍数、自覚所見(生活日誌など)、問診を実施。
その結果を解析した臨床試験を行い、以下の結果を確認。
1.「肥満であること」が引き起こす貧血リスクに、抑制効果が期待
一般的に、貧血の主な原因として日常的な鉄の摂取量が少ないことが挙げられるが、肥満者においては、それとは別の理由として、「肥満であること」自体が腸管細胞から鉄を吸収しにくい状況を引き起こし、鉄欠乏ならびに貧血の一因となっていることが、最新の研究で分かってきているという。
肥満者特有のメカニズムで引き起こされた貧血リスクは、同試験結果にも表れているとし、いずれも貧血の指標として用いられるヘマトクリット値、MCV、MCHCにおいて下記の結果が得られたとのことだ。
●血液全体に占める赤血球の割合であるヘマトクリット値が、バナナ非摂取群で低下傾向が見られた。
●平均赤血球容積を示すMCVは、バナナ摂取群と非摂取群の両群ともに有意に低下が見られ、これは小球性貧血の可能性を示した。
●赤血球の細胞内のヘモグロビンの濃度を示すMCHCは、両群で有意に上昇が見られた。これはMCVが両群で低下したことから、赤血球細胞の容積減少にともない、細胞内での濃度が上昇したことが考えられる。
バナナ非摂取群で貧血を示す数値の低下・上昇が見られたことは、「肥満者は普通に生活しているだけで、鉄欠乏を引き起こしている」ことを示していると言えるという。
一方、同試験では、バナナの長期摂取による日本人肥満者における貧血抑制効果の可能性を示唆するデータとして、バナナ摂取群と非摂取群で下記の差異が現れたとのことだ。
●血清鉄(血液中に存在する鉄)は、非摂取群で有意に低下した一方、バナナ摂取者では低下は見られなかった。これは肥満者における鉄の低下を、バナナ摂取が抑制した可能性が考えられる。
●貯蔵鉄であるフェリチンは、バナナ摂取群のフェリチンが70から75ng/mLへ変化したのに対し、非摂取群は79から70ng/mLに低下するなど群間差で有意差が示され、バナナ摂取により、鉄の低下が抑制されたことを示した。
ヘモグロビン値は正常を示していても、フェリチン値が低下している状況は、鉄欠乏性貧血に至る前の「潜在的鉄欠乏状態」と言えるという。
肥満者においては、前述の肥満者特有のメカニズムにより、このフェリチン値が低下した“隠れ貧血”の状態になりやすいリスクをはらんでいると言え、臨床試験の結果、バナナ摂取によりそのリスクを抑制する可能性があることを示唆しているとのことだ。
2.バナナの長期摂取により腹囲が減少
肥満と関連して、バナナ摂取による腹囲への影響の測定では、下記の通り有意差が見られた。
●バナナ摂取群は、腹囲の減少傾向が見られた。バナナを4週間摂取することで、腹囲が平均で約1.5cm減少。
●非摂取群では腹囲が平均約0.5cm増加。
バナナ摂取群で腹囲の減少傾向を示したことは、内臓脂肪面積への有意な作用は見られなかったものの、バナナに含まれるビタミンB6によるたんぱく質代謝の促進や食物繊維による皮下脂肪の減少などの可能性が考えられるとのことだ。