清水建設は、建設3Dプリンティング用に独自開発した繊維補強セメント複合材料「ラクツム」を、粗骨材を混練したコンクリート材に改良し、大臣認定を取得したことを発表した。
これにより、従来は建物の柱・梁の型枠や非構造部材の製作に活用されていた3Dプリンティングを、構造部材そのものの製作に適用できるようになり、建築分野における3Dプリンティング施工の適用範囲が大きく広がるという。
清水建設は、大臣認定を取得したこの“構造用ラクツム”を東京都江東区内に建設中の自社施設「(仮称)潮見イノベーションセンター」の構造部材の一部に適用する予定としている。
なお、同大臣認定は東京コンクリートと共同で取得したものとのことだ。
清水建設が開発したラクツムは、モルタルに合成繊維、混和材を付加した繊維補強セメント複合材料で、形状を保持したまま2m以上の高さまで積層することができるという。
ラクツムの積層体は耐久性にも優れており、積層界面が目視で確認できないほど一体化し、劣化の原因となる水や空気の浸入を助長する気泡や空隙は内部にほとんど生じないとしている。
一方で、モルタル材であるラクツムの積層体は、建築法規の制約により非構造部材にしか適用できず、例えば、埋設型枠としての活用を想定した場合、型枠の厚さの分、構造体の断面積が大きくなってしまうというデメリットがあったが、大臣認定の取得により構造部材への適用が可能になることで、これらの課題を解決。
大臣認定の取得にあたり、3Dプリンティングに最適化したラクツムの材料特性は保持しつつ、高強度コンクリートと同等の性能を発現する調合を確立したとのことだ。
また、材料押し出し方式の3Dプリンティングシステムについても、粗骨材を含んだ材料をスムーズに押し出せるようポンプとノズルに改良を施しているという。
今後、構造用ラクツムを用いて構造部材をプリントするための施工法を確立するとともに、施工現場で実大構造物を直接プリントするオンサイト3Dプリンティングの技術開発を進めていくとのことだ。