資生堂は、ヒアルロン酸(以下、HA)の体積をコントロールする「Shape-Shifting HA技術」を開発したことを発表した。
HAは肌表面で保水膜を形成し、高い保湿効果を発揮する一方、分子が非常に大きいため、肌に塗布しても角層に浸透しにくいという課題があったが、新技術ではマグネシウムイオン(以下Mgイオン)の添加によりHAが収縮し、通常のHAと比べて角層への浸透性が劇的に高まるという。
さらに同技術では、キレート剤の一種であるメタリン酸ナトリウムの添加により、収縮したHA(以下、コンパクトHA)を再膨潤させることで本来のHAの性質を取り戻し、角層水分量を高めることを可能とするとしている。
なお、同研究成果の一部は「日本薬学会第142年会」にて発表されたとのことだ。
■ヒアルロン酸を収縮し角層浸透を高める技術
HA水溶液に各種の塩を添加し、HAの角層への浸透量を測定した結果、塩化マグネシウム(MgCl2)の添加によりHAの角層浸透量が高まることが明らかに。
次に、緑の蛍光で標識したHAを肌の表面に塗布し、断面を蛍光顕微鏡で観察したところ、MgCl2を添加した場合には、MgCl2添加のないHA水溶液と比較し、より多くのHAが角層深部まで浸透する様子を可視化できたという。
さらに、HA水溶液にMgCl2を添加し、HAの体積を測定したところMgCl2の添加により、体積の減少が認められ、これらの結果から、MgCl2がHAの体積を収縮させることにより、HAの角層浸透性を高めたと考えられるとしている。
■コンパクトHAを再膨潤させる技術と肌への効果
コンパクトHAにキレート剤であるメタリン酸ナトリウム(以下SMP)を添加すると、コンパクトHAが再膨潤して体積が増加し、収縮前のHAと同等の体積に戻ることが判明。
次に、肌の表面にコンパクトHAだけを塗布した場合と、コンパクトHA塗布の後にSMP水溶液を塗布した場合の角層水分量の比較を行った結果、コンパクトHAにSMPを加えた場合では角層水分量が顕著に高まることが明らかとなった。
この結果から、SMPによりHAが再膨潤した結果、保水力が復活し、角層水分量を増加させたと考えられるという。なお、高分子であるHAを収縮し、角層に浸透しやすくしたコンパクトHAを、SMP等のキレート剤により再膨潤させ肌の保水力を高める一連の技術を、「Shape-Shifting HA」と呼ぶとしている。
資生堂は、今後も同社の企業ミッションである「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に向け、同技術を未来のビューティーケアを担う同社の重要な技術として、幅広い肌悩みに応えるべく活用していくとのことだ。