パナソニックは、花粉抑制に効果がある「ナノイーX技術」を日々研究しているという。
2022年の花粉の飛散量、東海、北陸、関東甲信、北海道は前シーズンより多く、東京都で昨春の1.5倍といわれている。また、花粉症による経済損失は1日当たり約2,215億円(同社調べ)という試算も出ているとのことだ。
そこで同社は、スギ花粉をサンプルに、花粉の実態を把握する実験を行ったという。
新日本空調のクリーンルーム内にて、無風条件下で撮影を行い、人がスギ花粉を踏んだり、歩いたりする状態を観察した結果、花粉の外皮が粉砕されていき、花粉が粉々になった“粉砕花粉”になることを可視化。
この“粉砕花粉”は、通常の花粉の大きさ、30マイクロメ-トル(1マイクロメートル=1mmの1/1000)よりも小さいナノメートル(1ナノメートル=1mmの1/100万)レベルの微小なサイズのものまでも多く含まれているため、人の移動や行動によって床から空間上に舞い上がることが分かった。
今回の実験では、通常の花粉は舞い上がってから1分20秒ほどで大半が舞い落ちたのに対し、“粉砕花粉”は3分以上と、2.25倍以上の時間にわたり、空間を漂い続けたという。
環境化学や花粉含有物質に関する研究者である王 青躍氏(埼玉大学大学院理工学研究科教授)に取材を行ったところ、破裂した花粉の外皮や内容物がマイクロレベルやナノレベルで粒子化(粉砕花粉化)すると舞い上がりやすくなるだけでなく、PM2.5などの有害化学物質と結びつきやすく、反応性の強い物質に修飾されるとの見解を示したという。
また呼吸器を通じてこれらの微粒子が身体に取り込まれることを防ぐために、花粉を室内に持ち込まない工夫や掃除、空気清浄機の使用などにより、内容物まで花粉を抑制することが必要とのことだ。
【実験結果①】
足で踏むと細かく砕ける花粉。
外皮が割れ、粉々になっていくことで、軽く舞いやすい“粉砕花粉”に変化。
室内で、スギ花粉が付着した床を、人が踏むことで、花粉の状態がどう変化するかを実験。その結果、何度か踏まれたりすることで、花粉の外皮が細かく砕かれていく様子が観察できたという。
この“粉砕花粉”を顕微鏡で確認すると、通常の花粉の大きさである30マイクロメ-トル(1マイクロメートル=1mmの1/1000)ほどよりも小さいナノメートル(1ナノメートル=1mmの1/100万)レベルに砕けていることが判明。軽く舞いやすい状態に変化してしまうことが分かったとしている。
【実験結果②】
通常の花粉よりも舞い上がりやすく、長く漂い続ける“粉砕花粉”。
次に、“粉砕花粉”の飛散の仕方に関する実験を行ったという。“粉砕花粉”が床にある室内で、歩く動作をしたところ、粉砕花粉の上を歩いた直後に、花粉は舞い上がり、いったん舞い上がった花粉は3分以上舞い続けることが分かった。
通常サイズの花粉も同様に実験したところ約1分20秒ほどで大半が床に落ちたことから、“粉砕花粉”は、通常の花粉に比べ2.25倍以上もの時間、空気中を漂い続けることが判明した。
また、花粉は水分を含んだり、大気汚染物質と結合したりすることでも破裂するといわれており、雨の日や湿度の高い日や幹線道路近くでも“粉砕花粉”が発生しやすいと推測できるという。
<粉砕花粉実証動画>
ナノイーX技術の花粉抑制効果について
ナノイーX技術は、水から生まれて水にもどる、人にやさしいごく小さなイオンを発生する技術のこと。部屋のすみずみまで行きわたり、花粉のほかに、カビや菌・ウイルス、ニオイなど、目に見えない空気の汚れを抑える力を持っている。
花粉に対しては、日本の主要な花粉13種類を抑制することが明らかになっており、今回実験した、花粉の中身も含む“粉砕花粉”も抑制するという。