インテージは、2020年から継続的に実施しているSDGsに関する調査の分析結果を公開した。今回は、生活者の日々の行動・商品購買へのSDGsの影響を分析し、企業に求められる対応のヒントを探ったとのことだ。

■この1年でサステナブルな行動を「先導する」層+「積極的にする」層は4ポイント増加

インテージは、サステナブルな行動に対する質問を用いて、回答者をサステナブル行動の関与度によりSuper、High、Moderate、Lowの4層に分けているという(以下、同区分を「サステナブルセグメント」と表記)。

直近の2021年12月調査の結果を2020年12月調査と比較すると、Super層(サステナブルな行動を先導して行う人)が0.7ポイント増加(4.6%→5.3%)、High層(サステナブルな行動を積極的にする人)が3.4ポイント増加(25.1%→28.5%)しているという。

また世代別で見てみたところ、年配層と若年層での増加幅が大きく、60代男性のHigh層が6.3ポイント、60代女性のHigh層が5.2ポイント増加、20代男性のHigh層が3.8ポイント、20代女性のHigh層も3.8ポイント増加していたとのことだ。

SDGsの認知率が約8割に達し、内容理解や共感は今後も進むことが想定されることから、サステナブルな行動を進んで行うSuper層、High層の更なる増加が見込まれるとのことだ。

サステナブルセグメント

■生活者のサステナブルな行動には、世代間の差がある

前述の「サステナブルセグメント」の区分けに用いた質問項目の回答結果から、世代間に行動の差があることが見えてきたという。

図表2は、この10項目を全体の回答率が高い順にソートした上で、各サステナブル行動を行っている人の割合を世代別にグラフ化。全体では食に関する項目の実施率が高いことが見て取れるとしている。

また、世代別の回答結果には2つのパターンがあることがわかるという。

●年配層が高く、若年層が低い行動(10代・20代に比べ、50代・60代が高い)
「使い捨ての割り箸やプラスチックスプーン、フォークなど、不要なものは断る」「食材は地元産のものを消費する」「食品添加物や合成保存料を使用していない食品を選ぶ」の選択率が男女ともこの傾向。

U字型の傾向の行動(10代・20代、50代・60代に比べ、30代・40代が低い)
「リサイクル素材を使って作られた商品を選ぶ」「エコマークがついた商品を選ぶ」「化学物質の入っていない、水を汚さない成分の洗剤を選ぶ」の選択率が男性で、「肌、髪のケア用品、化粧品はオーガニック製品を選ぶ」「社会的格差の解消を助ける、フェアトレード商品を選ぶ」の選択率が女性において、この傾向。

日々の食の中でのサステナブル行動は、在宅率や自炊率が他の世代より高いと思われる年配層の特に女性で意識されていることがわかる。

また、「食材は地元産のものを選ぶ」「添加物や保存料を使わない食品を選ぶ」といった行動は、自身の健康にも影響するため、年齢とともに健康意識が高まるにつれて増えていくと考えられるとのことだ。

一方、U字型の傾向にある行動の背景として、若年層では学校教育の影響もあり「自分の行動でよりよい社会や環境に変えていく」という思いが他の世代より強いこと、年配層においては、他の世代に比べ時間的・金銭的余裕があることが背景にありそうだとしている。

【図表2】世代間に行動の差

■「SDGsに取組む企業を応援したい」はSDGs認知者の53%、「SDGs関連商品・サービスを購入・利用したい」は45%。SDGs意識にも世代差あり

図表3はSDGs認知者に対してSDGsへの関与度や取り組む企業・関連商品についての意識を聴取した結果となっている。

いずれの項目も5割前後が「そう思う」あるいは「まあそう思う」と回答し、SDGs認知者の約2人に1人が、企業の社会貢献活動にも注目し「取り組む企業を応援したい」「SDGs関連商品・サービスを購入・利用したい」と感じていることがわかった。

SDGsが生活者と企業との関係性構築や、マーケティング活動と切り離せない要素となってきていることがうかがえるとのことだ。

【図表3】SDGsへの関与度や取り組む企業・関連商品についての意識

また、世代別に見るとこちらも女性ではU字型傾向が見られ、若年層と年配層で共に高く、男性では40代が他の世代より低い「V型傾向」が強い結果となった(図表4)。

40代男性がV字型に落ち込んでいる背景として、「時間のゆとり」「心のゆとり」「お金のゆとり」がキーワードにあるようだとしている。

同調査の中でこれらについて聴取したところ、40代男性は「とてもゆとりがある」あるいは「まあゆとりがある」と答えた人の割合は、全体の回答割合に比べ少ない結果となったとのことだ。(それぞれ-9.7ポイント、-7.8ポイント、-4.6ポイント)。

【図表4】世代別に見たSDGsへの意識

同調査の分析から、SDGsに関する行動や考え方には各世代のライフスタイルや時間的・精神的・金銭的な余裕、学校教育などの影響が大きく影響していることが浮き彫りになったという。

メディアで取り上げられる機会が増え、SDGsが生活者の関心事となってきている今、企業としては投資家向け中心だったESG活動を、商品やサービスを介し生活者へ向けてSDGsの取り組みを発信し貢献するステージへと変革する時期を迎えているのではないかとインテージは考察している。

またSDGs関連の商品・サービス戦略の立案に当たっては、生活者をひと括りにせず、世代別のマーケティング戦略が必要といえそうだとのことだ。

調査概要】
<2021年12月調査>
調査地域:全国
対象者条件:15~69歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より母集団構成比にあわせて抽出しアンケート配信および回収
標本サイズ:n=10,003
調査実施時期:2021年12月14日~12月16日

<2020年12月調査>
調査地域:全国
対象者条件:15~69歳の男女
標本抽出方法:弊社「キューモニター」より母集団構成比にあわせて抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2020年度の構成比にあわせてウェイトバック
標本サイズ:n=10,572
調査実施時期:2020年12月4日~12月7日

<参考>
インテージ『SDGsに関する調査の分析結果