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帝国データバンクは、2022年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施し、結果を公表した。なお同調査は、TDB景気動向調査2022年1月調査とともに実施したとのことだ。
■2022年度、企業の54.6%で賃金改善を見込む。ベースアップは過去最高の水準に
2022年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む企業は54.6%となり、2年ぶりに5割を上回った。
一方、「ない」と回答した企業は19.5%と前回調査(28.0%)から8.5ポイント低下したとのことだ。
賃金改善の状況について企業規模別にみると、「大企業」「中小企業」「小規模企業」の3規模全てで、前回調査の2021年度見込みから賃金改善見込みの割合が上昇していたという。
また、業界別にみると、「製造」が59.7%で最も高く、次いで「建設」が57.2%、「サービス」が54.0%と続いている。
賃金改善の具体的な内容をみると、「ベースアップ」が46.4%(前年比10.5ポイント増)、「賞与(一時金)」が27.7%(同7.4ポイント増)となり、それぞれ増加。
「ベースアップ」は2019年度の45.6%を上回り、調査開始以降で最高の水準となったとのことだ。
■賃金改善の理由、「労働力の定着・確保」が最多。一方、原材料の高騰はマイナス材料
2022年度に賃金改善が「ある」と回答した企業にその理由を尋ねたところ、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が76.6%(複数回答、以下同)と最も多い結果となった。
また、「労働力の定着・確保」以外の賃金改善する理由としては、「自社の業績拡大」が38.0%、「物価動向」が21.8%、「同業他社の賃金動向」が18.4%、「最低賃金の改定」が17.9%と続いた。
一方で賃金改善が「ない」企業にその理由を尋ねたところ、「自社の業績低迷」が64.7%(複数回答、以下同)と2021年度見込み同様に最も多くなったという。
続いて、「同業他社の賃金動向」が17.6%、新規採用増や定年延長にともなう人件費・労務費の増加といった「人的投資の増強」が15.5%、「物価動向」が14.2%となった。
賃金改善が「ある」、「ない」ともに、「物価動向」を理由にあげる企業が2021年度見込みと比べ上昇していることがわかったとしている。
帝国データバンクが2022年1月に実施した「原材料不足や高騰にともなう価格転嫁の実態調査」によると、原材料の不足や高騰の影響を受けている企業は77.3%となった。また、原材料価格の高騰に対して少なからず価格転嫁ができている企業は4割程度に留まっているという。
そこで、価格転嫁の状況別に、賃上げの有無を確認したところ、「影響はあるが、価格転嫁は全てできている」(60.9%)や「8割程度できている」(65.7%)、「5割程度できている」(63.7%)など、5割以上の価格転嫁ができている企業においては、6割を超える企業で2022年度に賃改善があると見込んでいたという。
一方、「2割程度できている」(58.7%)や「価格転嫁は全くできていない」(51.8%)は5割台となり、価格転嫁が進んでいない企業では、進んでいる企業と比べて賃金改善が「ある」割合が低い傾向となった。
■2022年度の総人件費、「増加」を見込む企業は67.1%。2021年度から一転し大幅増
政府は2021年12月に発表している賃上げ促進税制において、資本金1億円超の企業向けでは、「継続雇用者の給与等支給額が前年度比で3%以上増加」した企業へ15%~30%、資本金1億円以下の企業向けでは、「雇用者全体の給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加」した企業へ15%~40%の税額控除をするとしている。
そこで、2022年度の自社の総人件費が2021年度と比較してどの程度変動すると見込むかを尋ねたところ、「増加」を見込んでいる企業は、67.1%と2021年調査から12.9ポイント増と大幅に増加。
一方で、「減少」すると見込む企業は8.7%(前年比7.0ポイント減)となり、この結果から総人件費の増加率は前年度から平均2.68%増加すると見込まれるとした。
また、資本金1億円超の企業において、総人件費の増加率が3%以上とした企業は27.2%、資本金1億円以下の企業において、総人件費の増加幅が1%以上とした企業は67.7%となったとのことだ。
調査期間:2022年1月18日~2022年1月31日
調査対象:全国2万4,072社
有効回答企業数:1万1,981社(回答率49.8%)
※なお、賃金に関する調査は2006年1月以降、毎年1月に実施し、今回で17回目
帝国データバンク『2022年度の賃金動向に関する企業の意識調査』