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前年比3.5倍増、急増したベンチャー投資
2021年は世界各地で、ベンチャー投資が記録的な伸びを見せた年となった。
Atomicoのデータによると、欧州地域における2021年のベンチャー投資額は、1210億ドル(約13兆8500億円)と過去最高を記録。2020年の410億ドル(約4兆6935億円)から3倍の伸びとなった。また2021年だけで、評価額10億ドル(約1144億円)以上のユニコーン企業が98社誕生したという。これにより同地域における累計ユニコーン数は321社に拡大した。
一方、米国のベンチャー界隈も2021年は、記録尽くしの年となった。
PitchBookが2022年1月6日に公開したデータによると、米国では2021年のユニコーン企業に対する投資額が710億ドル(約8兆1279億円)と2020年の200億ドル(2兆2895億円)から3.5倍以上増加。また、1年間に登場したユニコーン数も2020年の100社から、2021年は340社と驚異的な伸びとなった。年間のユニコーン企業登場数は過去最高となる。
米国におけるユニコーン企業への投資額は、2014年に58億ドル(約6639億円)、2015年に79億ドル(約9043億円)、2016年に29億ドル(約3319億円)、2017年に77億ドル(約8814億円)、2018年に139億ドル(約1兆5912億円)、2019年に171億ドル(1兆9575億円)、2020年に200億ドル(2兆2895億円)と推移していた。
評価額1兆5000億円超え、NFTトレンドに乗る大型ユニコーン
ユニコーンの定義は、評価額10億ドル以上の未上場企業だが、米国のユニコーン企業の中には、その10倍ほどの評価額を有するスタートアップが多数存在している。
2021年中にユニコーン企業となったスタートアップの中にも、10億ドルの10倍、100億ドル(約1兆1400億円)という評価額をつける企業が複数含まれている。
同年ユニコーンとなった企業で、最も高い評価額となっているのがニューヨークを拠点とするNFT(Non Fungible Token)マーケットプレイス運営のOpenSeaだ。評価額は133億ドルと日本円換算では、約1兆5225億円となる。
CrunchBaseのデータによると、OpenSeaは2017年12月に創業、累計の資金調達額は4億2720万ドル(約489億円)で、社員数は101〜250人と分類されている。
同社は2022年1月4日にシリーズCラウンドで3億ドル(約343億円)を調達、このとき評価額が133億ドルに達したと報告している。同報告によると、2021年のNFTブームを追い風に、同社プラットフォームにおける取引高は前年比600%増を記録したという。
CoinTelegraphが伝えたDune Analyticsのデータによると、OpenSeaの取引高は2021年12月だけで32億5000万ドル(約3720億円)に上ったとのこと。
1兆円超えの暗号通貨取引所スタートアップ
暗号通貨取引所のKrakenも2021年にユニコーンとなったスタートアップだ。
2011年にシリコンバレーで創業した同社、CrunchBaseによる社員数分類は1001〜5000人とされている。これまでの累計調達額は1億3610万ドル(約155億円)、評価額は103億2000万ドル(約1兆1814億円)に上る。
ブルームバーグ2021年6月17日の報道によると、Kraken経営陣は12〜18カ月後に上場する計画を練っているという。
Krakenの競合となる暗号通貨取引所Geminiも2021年にユニコーンとなった米スタートアップだ。
2014年創業で、これまでに4億ドル(約457億円)を調達。現時点の評価額は71億ドル(約8127億円)となっている。
クラウド、セキュリティ、ヘルスケアなどユニコーンに見るテックトレンド
このほか2021年にユニコーンになったスタートアップのうち高い評価額をつけているのは、クラウドセキュリティ企業Lacework、医療テックDatavant、クラウドコンピューティングのCockroach Labsなどで、クラウドや医療系スタートアップが複数含まれているのが印象的だ。今後のテックトレンドを占う上で重要な示唆を与えてくれる情報といえるかもしれない。
クラウドセキュリティのLaceworkは2015年創業で、これまでに19億ドル(約2175億円)を調達。現在の評価額は83億ドル(約9500億円)。
一方、医療データプロバイダサービスを提供するDatavantは、これまでに8050万ドル(約92億円)を調達し、評価額は70億ドル(約8014億円)。Cockroach Labsは6億3310万ドル(約724億円)を調達、評価額は53億8000万ドル(約6159億円)となっている。
PitchBookの予想では、2022年もベンチャー投資熱は継続する見通しで、特に米国ベンチャーキャピタルによる海外投資が増える可能性があるという。世界のベンチャー投資トレンドに乗り、日本からも世界に通用する有望スタートアップが登場することを期待したい。
文:細谷元(Livit)