コロナ禍が後押しとなり、多様化する私たちの暮らし。在宅ワークが定着したことで家族と過ごす時間が増え、今まで以上に「快適な住まいとは?」を考える人も多いのではないだろうか。

“これからの家族の暮らしをつくる1日”をテーマに、積水ハウスが主催するオンラインイベント『SEKISUI HOUSE DAY vol.1』が2022年1月10日に開催された。片づけコンサルタントの近藤麻理恵さん、女優の雛形あきこさん、お笑い芸人のはなわさん、インテリアコーディネーターのMAKOさん、ファイナンシャルプランナーの北野琴奈さんを招いて行われたトークセッションの内容をお届けする。住まいへの関心がより高まるなか、住宅の最新トレンドはどのように変化しているのだろうか? 今回、本イベントから多様なライフスタイルに合わせた住まいづくりのヒントを探る。

新しい生活様式とともに変化した、抑えるべき4つの住宅トレンド

アナウンサーの笹川友里さんがナビゲーターを務め、5時限に分けてトークセッションが行われた。

1時限目は『知らないと損する? 住宅の最新トレンドとは〜これからの住まいの常識をアップデート〜』と題し、母・主人・娘との4人暮らしで戸建てに住んでいるという雛形あきこさんが登壇。住宅事情に詳しいリクルートの堀山晢法さんと横井南妃さんが住まいの最新トレンドを解説した。住まいづくりのトレンドは、大きく以下の4つに集約されるという。

左から、雛形あきこさん・堀山晢法さん・横井南妃さん

トレンド1:家の中を清潔に保つ工夫

コロナ禍の影響もあり、清潔な住まいづくりが求められている。リクルートのアンケートによると、換気性能を必要と考えている人が7割、玄関での手洗い場の必要性を感じているのは5割。いずれもそのうちの3割程度がコロナ禍による考えの変化だといい、住まいづくりに関しても衛生対策への意識が高まっている。

具体的には、玄関口に手洗いができる水回りを設置することや、家の中にウイルスを持ち込ませないためにクロークを設置することなどが挙げられる。雛形さんも「小さい子どもは手洗いを習慣にするのが難しいので、玄関に手洗い場があると嬉しい。おうちが教えてくれるのは最高ですね」と語った。

トレンド2:在宅ワークへの対応

これもコロナ禍が加速させたトレンドのひとつ。「今は打ち合わせや取材もリモートが多い。主人とスペースの取り合いになることもある」と語る雛形さん。

リビングの一角にガラスで間切りした小部屋をつくったり、ウォークインクローゼットや納戸にワークスペースをつくったり。ほかにも趣味の部屋をつくるなどプライベート空間のニーズが高まっている。

イベント時には様々な間取りやトレンドが紹介された。特にこのコロナ禍では自宅でのワークスペースには大きく注目が集まった。

トレンド3:家事動線と時短

共働き世代で注目なのが、家事動線の効率を上げる工夫がされた間取り。ランドリールームとクローゼットを近くにし、水回りなどの家事スペースを集約するなど、時短を考えた間取りが注目されているそうだ。

トレンド4:健康をサポートする家

快適に暮らすことは健康に直結する。その考え方から、換気や風通し、日当たりの良い大きな窓が求められている。今は大きくても結露が出ない断熱性が担保された窓があるため希望する人が多いという。20年30年暮らすことを考え、こういった快適さも重要度を増している。

こうして見ると、コロナ禍は住宅事情にも影響を及ぼしていることがわかる。清潔さへの工夫やワークスペースの確保など、新しい生活様式に対応する住まいづくりがこの2年でトレンドに浮上。トレンドはもちろんのことライフステージにも変化が訪れるため、その変化に対応できるメーカーや担当者と一緒に先を見据えた住まいをつくる時代となりつつある。

新しいLDKのカタチ。人気の“ファミリー スイート”で考える「片づけ」と「デザイン」

2時限目は『こんまりさんと考える、子育てしやすい家づくり~こんまり®メソッドで、お家をときめく空間に~』。世界40カ国で翻訳された『人生がときめく片づけの魔法』の著者である“こんまり”こと近藤麻理恵さんと、積水ハウス住生活研究所所長の河崎由美子さんが登壇した。

左から、こんまりさん(リモートでの出演)・笹川友里さん・河崎由美子さん

積水ハウスの調査によると、子ども部屋があってもリビングやダイニングなどで勉強している子どもが多いことが示され、LDKの中に学習スペースをつくる必要性が見えてくる。そのほか、子育てしやすい環境には、子どもの様子を見られる対面式のキッチンや、リビングの一角に遊びのスペースを設けることが望まれているという。

そうしたなかで、積水ハウスは“ファミリー スイート”を提案。“ファミリー スイート”とは、それぞれが別のことをしながらも同じ空間にいられるようにLDKの仕切りをなくし、ホテルのスイートルームのようにつながった空間のことだ。

同じ空間を共有するからこそ気になるのが片づけ。こんまりさんが考える共働き世代が子育てしやすい住まいとは、「物の定位置が決まっていて片づけがスムーズな家」。誰かに負担がかかる片づけではなく、それぞれが自分の物を片づけることで心の余裕が生まれ、結果的に子育てにも良い影響があると考えている。ここで片づけの「こんまり®メソッド5ステップ」を紹介する。

イベント時で紹介された「こんまり®メソッド5ステップ」

ステップ1:「理想の暮らし」を考える

どうして片づけをしたいか、片づけの末にどんな暮らしをしたいのかのゴールを考える。

ステップ2:「モノ別」に片づける

洋服なら洋服、本なら本とモノ別に片づける。その際一箇所に集めて残したい物と手放したい物を選ぶ。

ステップ3:触った瞬間に「ときめき」を感じるかどうかで判断する

見るだけではなく、手に取り触った瞬間に「ときめき」を感じるか否かで要る物と要らない物を判断する。

ステップ4:正しい順番で片づける

洋服→本→書類→小物→思い出品の順番で片づける。手放すことが難しい思い出品などは最後にし、片づけを進めるなかで“ときめき感度”を磨いていく。

ステップ5:家にある「あらゆるモノの定位置」を決める

すべての物に定位置を決めることで、スムーズに戻せるようになる。

こんまりさんは「片づけにより自分の大切なものがわかり、自分の価値観がはっきり見えてくる。片づけを通してときめく生活を送ってほしい」と締めくくった。

続く3時限目は『対話から始まる、暮らしのデザイン~家族にとっての理想の空間のつくり方~』と題し、インテリアコーディネーターのMAKOさんと、積水ハウスデザインディレクターの中原潤平さんが登壇。

左から、MAKOさんと中原潤平さん

仕事や運動、テレビやインターネット、そしてくつろぎの空間と、リビングにそれぞれが好きにできる空間がないと部屋にこもりがちになり、コミュニケーションが希薄になると考えられる。また新築を建てる人の6割が“ファミリー スイート”の考えに賛同し、住まいづくりの参考にしているという。

“ファミリー スイート”のような広い空間には、どのようなアイテムを選んで配置していけばいいのか? MAKOさんから“ファミリー スイート”に役立つインテリア術が紹介された。ポイントは2つ。

ポイント1:可変アイテムを使用する

例えば、置き場所が固定されがちなL字型のソファーよりも「I字型のソファー+1人がけソファー」のように置き場所を変えやすい物を使うことで、異なる用途に対応できるようにしておく。

ポイント2:ゾーニングする

ラグやグリーン、ボックス収納やオープンラックなどを活用することで、子どもの遊び場やワークスペースなど、間仕切りがなくてもちょっとしたプライベート空間を演出できる。

中原さんによると、これまでのLDKの考え方は「何帖の空間が欲しいか」であったが、今は「どんな暮らしがしたいか」というこだわりや、「どんな家具を置きたいか」といったインテリアを中心とした住まいづくりにシフトしているという。また、お気に入りのアートや家族写真、季節の行事に関する飾りが置ける空間を設けることも、その家族らしい住まいづくりには必要な要素だと語った。

目を向けるのはライフスタイルだけではない。考えるべき住まいの経済と環境とは

4時限目は『意外と知らない家づくりの「土地」と「お金」~つまずきやすい「土地」と「お金」を徹底解説~』をテーマに、ファイナンシャルプランナーの北野琴奈さんと積水ハウス大阪北支店店長の椎葉達也さんが、気になる土地とお金の問題について語った。

左から、北野琴奈さん・椎葉達也さん

土地選びに平行して気になるのが実際にかかるお金の問題。土地と建物の値段だけを考えがちだが、それ以外にも土地に関わる諸費用(仲介手数料や固定資産税など)、建て始める前の解体や造成費用、住宅ローンや火災保険、お庭などの外構工事、そして消費税(土地にはかからない)がかかる。多くの場合が予算オーバーになるため、予め諸費用を視野に入れておく必要があることが示された。

北野さんのもとには「賃貸にすべきか持ち家にすべきか」という相談が多くあるという。次の計算式に当てはめると、どちらがお得か算出される。

それぞれに入る価格は、エリアや家の大きさによって大きく異なる。また、持ち家の方が大きな数字になることがあるが、資産として考えると同等かそれ以上の価値を持つ場合も。今年2022年度には住宅ローン減税(住宅ローンの借り入れに伴い、年末に所得税から控除される制度)も改正されるため、様々な要素を考慮しながら住まいづくりを進める必要がある。

最終の5時限目は『戸建の常識を覆す「ずっとお得」の秘密〜経済的で、災害にも強い住まいづくり〜』をテーマに、いま注目を集めるZEH住宅を取り上げる。最近、佐賀県から横浜市に引っ越したというはなわさんと、積水ハウス東京北支店の浜田将行さんが登壇した。

右から、浜田将行さん・はなわさん

ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称。太陽光発電など消費エネルギーをつくり出し、光熱費を概ねゼロにできる住宅のこと。環境への配慮、光熱費の削減、災害時に自家発電ができるといった3つのメリットが挙げられる。

初期費用はかかるがランニングコスト(光熱費)を削減できるため、生涯コストが抑えられるのもメリット。積水ハウスで建てられる住宅の91%がZEHを採用している。

2016年の熊本地震や2019年の九州北部の豪雨被害を目の当たりにしているはなわさんは、災害時にも強いZEH住宅について「素晴らしい。もっと早くに知りたかった」と語った。

このように住まいを取り巻く環境も日々大きく進化している。土地や費用はもちろんのこと、家事負担の減る間取り、新しい生活様式に即したスペース、好みのインテリアやデザイン、家族とのコミュニケーション、ライフステージの変化、そして災害や環境対策まで。快適な住まいづくりには多くの視点が必要だ。

一生に一度の大きな買い物だからこそ、自身や家族のライフスタイルやこだわりを見つめ、最新の情報をもとに長く快適な住まいづくりを検討してはいかがだろうか。

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取材・文:安海まりこ