フィリップ モリス ジャパン合同会社(以下、PMJ)は今回、山形県の蔵王索道協会と連携し、「煙のないマウンテンリゾート」実現に向けたプロジェクトをスタート。山形蔵王温泉スキー場内すべての紙巻たばこ用喫煙所が、加熱式たばこ専用エリアへと整備され、2021年12月16日から利用が開始された。

1985年から日本市場でたばこビジネスを始め、現在は「煙のない社会」をビジョンとして掲げるPMJ。喫煙環境が年々変化する中、会社の社会的責任は何かと考えて出した答えは、紙巻たばこ事業から段階的に撤退すること、そして喫煙を続ける成人喫煙者の健康と周囲への影響を低減するため、煙を出さない「加熱式たばこ」への切替えを進めることだった。

2014年から、紙巻たばこに代わる新たな選択肢として加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」を提供する同社は、喫煙環境の変化を先取りし、紙巻たばこから加熱式たばこへの切替えを目指してきた。それと並行して、観光地を中心に「加熱式たばこ専用エリア」の設置を進め、誰もが快適に過ごすことのできる「煙のないランドマーク」を増やすべく活動を続けている。

今回「煙のないランドマーク」に加わった蔵王温泉スキー場は、世界に誇る樹氷の造形美と、蔵王連峰を見渡す絶景の大パノラマが魅力のマウンテンリゾートだ。爽快な滑走が楽しめるパウダースノー、変化に富んだゲレンデ・コースはすべてのスキーヤー・スノーボーダーを魅了してきたが、コロナ禍の影響で集客に苦しむシーズンが続いた。さらに、施設の老朽化に加え、紙巻たばこの喫煙マナーに対するクレームは悩みの種となっていた。

これらの課題を解決するひとつの手段が、PMJが新設した加熱式たばこ専用室だ。

今回は、「煙のないマウンテンリゾートへ」プロジェクトに携わる人々に話を聞きながら、蔵王温泉エリアの魅力アップにつながる本取組みの紹介、またPMJが目指す「煙のない社会」の真意に迫る。

喫煙環境とルールを見直し、誰もがクリーンで豊かな自然を楽しめる場所に

本プロジェクトをPMJとともに推進する蔵王索道協会会長の宮林伸一氏(以下 宮林)は、本取組みの背景、今後の展望についてこう語る。

蔵王索道協会 会長 宮林 伸一氏

宮林「蔵王は、豊かな自然に囲まれたスキー場です。国内外のお客様にこの環境を末永く楽しんでいただけるよう、さまざまな取組みを行ってきましたが、昨今のコロナ禍で苦しい時期が続きました。ようやくお客様をお迎えできる状況となり、これまで以上に気持ちよくクリーンな空気のもとで蔵王の自然を味わっていただきたいという想いから、喫煙環境の見直し、喫煙ルールの整備に取組むことになりました。加熱式たばこ専用エリアの整備や、さまざまな形で喫煙ルール変更の周知をいただき、PMJの多大なご協力に感謝しています。蔵王温泉スキー場の魅力に、“クリーンな環境”が加わったという事実をお客様にも積極的に伝えていきたいと思います」

このプロジェクトに賛同した上村愛子氏(元スキーモーグル日本代表)、伊東秀人氏(元アルペンスキー日本代表)は、蔵王の魅力と「煙のないマウンテンリゾート」として生まれ変わることへの感想をこのように述べる。

伊東 秀人氏

伊東「私は蔵王が地元なので、スキーを始めた3歳の頃から何万回滑ったかわかりません。地球の恵みを感じながら滑ることができる、素晴らしいスキー場です。今回、PMJさんと『煙のないマウンテンリゾート』に向けて取組もうと決めるまで、喫煙環境の整備がどれだけ重要か、正直イメージできていなかったんです。しかし、喫煙や環境問題に対する社会の意識が高まっていく中で、喫煙環境の整備が『自然と人を守る活動』なんだと気付き、絶対に取組むべきだと感じました」

上村「私も、地元のスキークラブでゴミ拾い活動をしていた頃から、環境問題には関心がありました。自然が守られ、誰もが山の美味しい空気を味わえる未来につながるプロジェクト、素晴らしいと思います」

伊東「蔵王は、ウインタースポーツはもちろん、温泉もあるし、料理も抜群においしい観光地です。コロナ禍で苦しいなか、自分たちにできることは何かを考え、お客様が安心して安全に楽しんでいただける環境をPMJさんとともに整えました。ぜひ、たくさんの方に遊びに来ていただきたいです」

上村「誰もが安心して山に遊びに来て、紙巻たばこの煙を感じずに心置きなく景色やスノースポーツを楽しめる環境が整いました。煙のない環境がみんな笑顔をつくりますし、それが今まで以上に蔵王の自然を楽しんでくれることにつながると思います。この活動を他のマウンテンリゾートにも展開できたら素晴らしいですね」

日本はスモークフリー先進国。さまざまな取組みで蔵王の自然を守る

PMJの小林 献一副社長は、地域や企業とともに目指す「煙のない社会」について、日本が先進国であると話す。

PMJ 小林 献一副社長

小林「わたしたちは『煙のない社会』を目指しています。まず、喫煙をされていない方には喫煙をはじめないようお伝えし、喫煙されている方には禁煙を推奨しています。日本では、2014年に紙巻たばこから加熱式たばこへと切替える選択肢ができ、以来、紙巻たばこの需要は減少に転じました。

今後10年で周囲の環境が整えば、紙巻たばこの販売終了も目指していますし、喫煙環境のアップデートがより重要になります。本プロジェクトも含め、世界のなかでも日本がスモークフリーのトップランナーであると、積極的にアピールしていきたいと思っています」

また、プロジェクトの開始に伴い、写真家としての顔を持つ上村氏は「蔵王温泉エリア」の雄大な自然を切り取った写真作品を展開。

上村 愛子氏

上村「こちらは、蔵王ロープウェイさんの山頂から撮影した写真です。『三段紅葉』といって、山すその木々の緑、その上を彩る紅葉の赤や黄色、山頂を飾る雪の白を山頂から一望できたんです。寒さを忘れるほど美しい光景に、その場から離れられませんでした。美しい自然を守っていくためにも、今回のような活動が必要なんだと思います」

伊東「木をまとう白い氷は、樹氷へと育っていく赤ちゃんです。わたしたちは日々自然と向き合って、日々変化する風景の中で生きています。その中で、解決すべき問題も浮かび上がっていたので、蔵王エリアとPMJさんが一緒に環境整備に取組めたことに心から感謝しています」

小林「素晴らしい風景を見せていただき、この自然を守りたいという想いを新たにしました。ごく一部ではありますが、環境整備に協力できて光栄です。上村さんのお写真は、蔵王温泉スキー場エリア各地に掲示されていますので、たくさんのお客様にご覧いただくことで、蔵王温泉の美しさと、その保全の重要性を意識していただければと思います」

蔵王温泉エリアの課題解決につながる加熱式たばこ専用エリア

PMJチャネルアクティベーションマネジャーの鶴岡 斉氏は、「煙のないランドマーク」を全国に拡げる活動、そして今回新設された加熱式たばこ専用室についてこのように説明する。

PMJ チャネルアクティベーションマネジャー 鶴岡 斉氏

鶴岡「わたしたちは『煙のない社会』実現を目指した取組みを全国各地で行っています。施設内だけでなく、地域全体での環境整備にも取組んでいます。

蔵王には紙巻たばこの喫煙所が20カ所ありましたが、今回、それらを閉じ、加熱式たばこ専用室をゲレンデ内に8カ所、タウンエリアに2か所新たに整備しました。蔵王ならではの風景である樹氷が美しいエリアには、木目調のパーテーションを使って風景に馴染むように。壮大な景色が広がる場所にはガラス張りのブースを配置しました」

上村「蔵王温泉スキー場は広大なので、これだけたくさん整備いただけるとマナーも守りやすくなってみんなうれしいですね。風景に馴染むデザインや色味もおしゃれですし、景色を楽しんでほしいというPMJさんの想いに共感します」

伊東「今までも所定の場所で喫煙をお願いしてきましたが、喫煙マナーに関するご意見はありました。お客様全員にマウンテンリゾートを楽しんでもらえる、安心・安全な環境を整えられたことをうれしく思いますし、地域でもこのプロジェクトを盛り上げようと、PRに励んでいます。多くの方に、蔵王温泉エリアの新たな取組みを知っていただきたいです」

蔵王ベースセンタージュピア前 加熱式たばこ専用エリア

蔵王ベースセンタージュピア前の加熱式たばこ専用エリアは、蔵王の木々をイメージさせるガラス張りの外観となっており、蔵王の風景を楽しむことができる。

「煙のない社会」をつくるため、地域と連携して環境整備を実行する

日本国内では、2020年4月1日、改正健康増進法が全面施行され、望まない受動喫煙を防止するための取組みがルール化された。多くの人が利用する施設内での喫煙は原則禁止だ。そんな中、PMJは「ハーム(害)リダクション(低減)」という考え方に基づいたソリューションを提案している。「ハーム リダクション」とは、喫煙のような健康被害や危険をもたらす行動習慣を直ちに阻止できないときには、その被害や危険を可能な限り最小限に抑えることを主たる目的としようという考え方のこと。

同社の加熱式たばこに代表される、紙巻たばこの代替品開発や、地域や企業と連携した加熱式たばこ専用室の導入なども、こうした考えに基づいている。

その他にも、PMJは「煙のない社会」を実現するためにさまざまな社会的取組みを行っている。そのひとつが、加熱式たばこの成人ユーザーのマナー向上を目的とした啓蒙活動だ。今回も、「煙のないゲレンデ」蔵王・白馬特別アンバサダーである上村氏が、蔵王スキー学校・蔵王スノーボードスクールの3名を「スモークフリー・アンバサダー」に任命。今後、蔵王温泉エリアが「煙のないマウンテンリゾート」であり続けるために、喫煙マナーの周知を行い、ゲレンデ環境向上に向けて活動する彼らの活動に期待が集まる。

今回の蔵王温泉エリアのように、加熱式たばこ専用室や専用エリアの整備によってエリアの環境改善を進める活動も「煙のない社会」実現に向けた取組みだ。記者発表会では、蔵王温泉スキー場が「煙のないマウンテンリゾート」へと生まれ変わる第一歩に立ち会うことができた。PMJの「煙のない社会」への強い想いから、新たな「煙のないランドマーク」が生まれていくことは、喫煙環境のアップデートによる公衆衛生の推進にもつながっていくのではないだろうか。

取材・文:岡島梓
写真:益井 健太郎