フェイスブック社名変更、マイクロソフトの発表で注目される「メタバース」

日本国内でも何かと注目を集める米テック大手「GAFAM」の動向。今後は「メタバース(仮想共有空間)」を軸に様々な展開が見られるようになるはずだ。

すでに、GAFAMの一角フェイスブックは社名を「メタ」に変更し、メタバース事業へ大きく舵を切っている。

またマイクロソフトもこのほどメタバースを意識した新サービスのリリース計画を発表し、テック/ビジネスメディアの注目を集めている。

メタの創業者マーク・ザッカーバーグ氏によると、メタバースとはモバイルインターネットの次にやってくるデジタル時代(successor)のことを意味する。モバイルインターネットでできることがVRやAR空間でできるようになる時代だ。

SNSのチャットを例にとると、利用者はアバターとしてジェスチャーを加えVR空間でインタラクティブに会話することが可能になる世界。

フェイスブックとマイクロソフトという巨大テック企業がメタバースシフトを表明したことは、今後世界各地の市場に大きな影響を与えることが見込まれる。

特にマイクロソフトは現在、時価総額でアップルを上回る世界最大の上場企業であり、テクノロジー産業や他の産業に与える影響は非常に大きなものになるはず。

実際フェイスブックやマイクロソフトのメタバース関連の発表を受け、NVIDIAやAMDなどメタバースに関連するといわれる企業への投資資金が急速に集まり始めている。

マイクロソフトのメタバース取り組み

以下では、世界最大の上場企業マイクロソフトがどのようにメタバース事業を進めようとしているのか、同社の最新発表から推察してみたい。

フェイスブックがメタに社名変更したのは2021年10月28日。そのわずか5日後となる11月2日、マイクロソフトは同社のオンラインコラボツール「Microsoft Teams」をメタバース仕様に進化させる計画を明らかにした

Microsoft Teamsは、チャットやビデオ会議を可能にするビジネス向けのオンラインツールだ。ZDNetによると、2019年11月時点における同ツールの1日あたりのアクティブユーザー数は2000万人だった。コロナ禍のリモートワークシフトでユーザー数は急増、2021年7月には月間アクティブユーザー数が2億5000万人に達したと伝えている。

このMicrosoft Teamsのメタバース仕様とはどのようなものなのか。

まず大きな変化の1つとして挙げられているのが「3Dアバター」の導入だ。

この3Dアバター、利用者の声に反応し、ジェスチャーや表情が自動で生成される仕組みとなっている。これによりビデオ会議参加者の存在感を強化し、参加者全員のエンゲージメントを向上させることが期待されている。

アバターで参加できるMicrosoft Teams(マイクロソフトウェブサイトより)

注目すべきは、通常のビデオ会議だけでなく、このアバターを通じて3次元仮想空間で自由に他の社員と会話や会議ができるモードが追加される点だ。

これは、マイクロソフトが開発している3次元コミュニケーションプラットフォーム「Mesh」の機能を活用し実現するもので、発表では「Mesh for Microsoft Teams」という名称が用いられている。2022年のリリース予定だ。

アバターだけでなく、同社が開発するHoloLensを使えば、利用者の姿を3次元ホログラムとして仮想空間に投影することもできるという。

アバターとホログラムによる会議イメージ(マイクロソフトウェブサイトより)

同社は、アバターやホログラムを活用することで、オンラインでありつつも深いレベルでのコミュニケーションができるようになると説明している。

マイクロソフトはビジネス領域だけでなく、ゲーム分野でもメタバース事業を拡大する計画だ。

同社のサティア・ナデラCEOはブルームバーグTVの取材で、Xboxなどの既存のゲームビジネスを活用し、メタバース事業を拡大する意向を表明。人気ゲーム「マインクラフト」「Flight Sim」「Halo」などをメタバース化する計画であると語っている。

詳細は説明されていないが、ゲームのメタバース化とは、VRヘッドセットでプレイできるような最適化や多数の参加者が同時に同じ体験をできるような最適化を意味する。

VRだけでなく、ARメタバースも開発が進むと思われる。

すでにマイクロソフトは2021年3月、ポケモンゴーの開発企業Nianticと共同で、HoloLens2向けのARポケモンゴーのデモ版を発表している。

Nianticのジョン・ハンケCEOは、ARメタバースの構築に強い意欲を示す人物。ポケモンゴーだけでなく、様々なゲームがARメタバースとして登場することも考えられるだろう。

メタ(旧フェイスブック)のビジネス向けメタバース

Mesh for Microsoft Teamsのリリースで、ビジネスメタバースにおける主導権を握りたいマイクロソフト。一方、メタ(旧フェイスブック)もビジネス領域で攻勢をかける狙いだ。

メタは、同社のVRヘッドセット「オキュラス・クエスト2」向けのビジネスソリューション「Quest for Business」の試験を開始する計画を発表

オキュラス・クエスト2では通常、フェイスブックのアカウントが必要となるが、Quest for Businessではビジネス専用の別のログインが可能となる。2021年末までにベータ版の試験運用を開始、22年にベータ試験を拡大し、23年に本格リリースする予定という。

また近々オキュラス・クエスト2でSlackやドロップボックスなどのビジネスツールが利用できるようになるとのこと。

最近は、ナイキやダイムラーなどのGAFAM以外の大手企業がメタバース取り組みを開始するといったケースが増え、メタバース関連職種の求人も増加傾向にあるといわれている。メタバースをめぐる動きは、今後さらに大きくなっていくはずだ。

文:細谷元(Livit