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GAFAM・テスラ級の企業10社、ユニコーン1000社、環境テックへの期待
テスラの時価総額がこのほど1兆ドル(約113兆円)を突破したとして話題となった。これは海外市場で「環境テック」に対する関心が高まっていることを示す事例の1つといえるだろう。
今海外市場では、上場・未上場に関わらず多くの資金が環境テック企業に流れ込み、大きなトレンドを形成しているのだ。
未上場の環境テックスタートアップを取り巻く投資状況は、DealroomとLondon & Partnersがこのほど発表したレポートに詳しくまとめられている。
同レポートによると、2021年1〜9月の環境テックスタートアップへの投資額は323億ドル(約3兆6800億円)とすでに2020年通年の投資額210億ドル(約2兆3930億円)を超え、史上最高額を記録した。2016年の66億ドルから5倍近く伸びた格好だ。
米国で環境テックにフォーカスするベンチャーキャピタルが増えたことや米国政府が環境取り組みに資金を注入する姿勢を強めていることなどが、投資増の背景にあると思われる。
また、環境テックの重要性と可能性を論じる著名ビジネスパーソンが増えていることも影響していると考えられる。
その1人は、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏だ。
同氏は、2021年10月20~21日に開催された「SOSV Climate Tech Summit」で、環境テックスタートアップの可能性に触れ、将来的にはGAFAMやテスラ級の環境テック企業が8〜10社登場するだろうとの見解を述べた。
時価総額1兆ドルを超えるスタートアップが環境テック分野から10社ほど誕生する可能性があるという。
ちなみに2021年11月11日時点の時価総額は、マイクロソフトが2兆4830億ドル(約282兆円)でトップ。アップルは、2兆4260億ドル(276兆円)で2位となっている。
もう1人は、世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOだ。
このほど、サウジアラビア・リャドで開催された「中東グリーンイニシアチブサミット」で登壇し、今後1000社のユニコーン環境テック企業が登場するだろうとの意見を述べ、メディアの関心を集めている。
評価額10億ドル(約1130億円)以上の未上場スタートアップをその希少性からユニコーンと呼ぶ。フィンクCEOは、次のユニコーン企業は、検索エンジン企業でなければ、メディア企業でもなく、それらはグリーン水素やグリーン農業分野の技術を開発する企業だと語っている。
検索企業「Ecosia」 環境テックスタートアップ向け450億円以上のファンド設立
現在、環境テックスタートアップへの投資は、米国のベンチャーキャピタル(VC)が中心となって拡大している。しかし、欧州のVC業界もキャッチアップする構えだ。
ドイツの検索エンジン企業「Ecosia」はこのほど、環境テックスタートアップへの投資を目的としたVC「World Fund」を新設。ファンドの規模は、350億ユーロ(約457億円)に上る。
Ecosiaは、検索で発生する広告利益の80%を植林プロジェクトに寄付する検索エンジンで、同社自体も環境テックスタートアップと呼ばれている。
2021年11月時点の情報によると、2009年のサービスローンチ以降、これまでに30カ国以上で1億3700万本の植林を実施。現在の月間アクティブユーザー数は1500万人。欧州や英国の大学で同社の検索エンジン利用が広がっているという。
Ecosiaのサーバーは再生可能エネルギーによる電力で稼働しており、植林効果を含め、実質的なカーボンネガティブの仕組みを構築している。ユーザーが同社の検索エンジンで検索すると、検索リクエスト1件あたり最大で1キログラムの二酸化炭素排出が抑制される計算になるとのこと。
そのEcosiaがVC設立で狙うのは、二酸化炭素を2040年までに2ギガトン(20億トン)分を削減するという大胆な目標達成だ。世界全体の排出量の4%を占める割合となる。
World Fundでは、この目標達成に向け、投資対象となるスタートアップを「Climate Performance Potential(CPP)」という指標で評価する。スタートアップが同VCから投資を受けるには、ビジネスとして持続可能であることに加え、年間最低100メガトンの二酸化炭素を削減できる可能性を提示する必要がある。
Ecosiaファンドが資金を投じる環境テック企業
どのような企業がWorld Fundの投資を受けられるのか、同ファンドのポートフォリオから推察できる。
現在、ポートフォリオに含まれるのは、ココアの代替材料を開発するQOA、植物ベースのステーキを開発するJuicy Marbles、リユース可能な持ち帰り用カップを開発するRecupの3社。
World FundのCPP評価で環境に与えるポジティブな影響が非常に大きいと判断された3社となる。
たとえば、ココアの代替材料を開発するQOAの取り組みは、森林伐採や水質・土壌汚染の抑制につながると期待されている。
世界的にチョコレートの消費が増加傾向にある中、その材料となるココアの生産が拡大。それに伴い、多くの熱帯雨林が消失している。
QOAによると、ココア栽培のために失われた熱帯雨林は、300万ヘクタール(約3万平方キロ)に上るという。これは、スイス(国土4万1284平方キロ)やオランダ(4万1850平方キロ)の3分の2以上の面積に匹敵する広さだ。
また、1キログラムのココアを生産するのに、2万4000リットルの水が必要で、水問題の悪化要因にもなっている。
QOAは、2021年10月末にWorld Fundも参加するシードラウンドで600万ドル(約6億8400万円)を調達。本拠地ドイツ・ミュンヘンに、試験用の生産拠点を開設する計画だ。
環境テックへの投資トレンドは一過性のものではなく、今後長期的につづくものと思われる。World Fundを筆頭に欧州では、どのような環境VCが登場するのか、またどのようなスタートアップに資金が投じられるのか、今後の動向に注目していきたい。
文:細谷元(Livit)