コーヒー生豆流通の透明化をめざすオランダ発のグローバルスタートアップTYPICAと、「WORLD FOOD CURATOR」として「食」の新たな価値を創造する住商フーズは、スペシャルティコーヒーのサステナビリティ向上のための共働を開始したと発表した。
流通DXにより、コーヒー生産者と自家焙煎コーヒー事業者(以下、ロースター)が、麻袋一袋単位でコーヒー生豆のダイレクトトレードを可能にする、世界初のオンラインプラットフォーム「TYPICA」(ティピカ)は、2021年4月6日にサービスをローンチ。
現在では、全国600軒以上のロースターが「TYPICA」に登録、約300軒が「TYPICA」を通してコーヒー生豆を購入しているという。
また、住商フーズは1989年設立以降、住友商事グループのビジネス基盤を活用し、世界中の食材と、食に関する様々な情報を収集・整理し、ユーザーの真のニーズや調達先の実情に合った最適解を提案・実現する「食」のプロフェッショナルとして、新たな価値を創造してきたという。
同取組みは、グローバルなスタートアップとしてコーヒー生豆の流通DXを加速させるTYPICAと、長年にわたりスペシャルティコーヒーの強力な販売網を培ってきた住商フーズが、両社の強みを活かし、世界中のコーヒー小規模生産者の収益性とロースターの付加価値を高めるための挑戦をともにすることで、コーヒー業界の永続的な発展を追求することを目指しているとのことだ。
小規模コーヒー生産者の収入減少とTYPICA誕生の背景
国際相場に左右されるコーヒーの取引では、大量生産されたコーヒーの供給量が増えれば増えるほど、小規模生産者の収入が減少するという。
また、地球温暖化による気候変動の影響で、多くの小規模生産者のコーヒー収穫量が減少傾向にあり、高品質なコーヒーの生産地として知られるケニア、エルサルバドル、メキシコなどの小規模生産者は今、深刻な危機に直面している。
ワールドコーヒーリサーチによると、世界で消費されるコーヒーの65%を占める主要品種であるアラビカ種の生産量は、2050年に半減すると予測されているが、今や世界で1日22億杯消費されていると試算されるコーヒー産業は、世界中の小規模生産者の生活を支える主要産業となっている。
こうした状況において、生産者が収入を増やし、生活の質を高める機会を提供することでコーヒー業界の永続的な発展を担うべく、TYPICAは誕生したとのことだ。
同取組みに至った背景と今後の展望
日本国内において、スペシャルティコーヒー業界は拡大の一途をたどっていることから、ユニークなコーヒー生豆の調達ニーズがますます高まっている。
なかでも、品評会などに入賞するような希少性の高い最高品質のコーヒー生豆を求めるロースターが増加しており、その傾向はTYPICAを活用するロースターの購買行動にも顕著に表れているという。
たとえば、希少な最高品質ロットは、各国の生産者がニュークロップのオファーを開始した直後からわずか数時間で完売するケースが多く見られる。
その一方で、小規模生産者にとっての最大の収益源である高品質なボリュームロットは、オファー期間終了後もまだ販売余力を残すことがあり、小規模生産者が育てた様々なキャラクターの高品質なコーヒーを、それぞれの品質に見合った価格でより幅広く市場に届けることを目指したとのことだ。
こうした課題を解決すべく、TYPICAからスペシャルティコーヒーの流通量が多い各商社に共働を提案した結果として生まれたのが住商フーズとの取組み。
同取組みは、ニュークロップのオファー終了時に、TYPICAのプラットフォーム内で完売しなかった小規模生産者の高品質ロットの中から、住商フーズが自社の品質基準で見極めた付加価値の高いコーヒーを選定して仕入れ、流通を促進させるというもの。
また、今後さらに流通DXを加速させ、世界中のマイクロロースターへの販売網を拡充するために、グローバルな生産者ネットワークを保有する複数の企業とのより広範囲なパートナーシップの構築も視野に入れているとしている。
なお、同社は、2025年までに世界で2,000軒以上のロースターと世界30か国5,000軒の農園に利用されることを目標に、「TYPICA」を通じてコーヒーを愛する世界中の人たちがつながり合える世界を目指していくとのことだ。