エクスペディアCEOも期待する「リベンジ旅行」

2020年の夏休みは旅行ができず、多くの人は家に閉じこもっていたが、今年の夏休みは様相が大きく異なる。

米国ではワクチン接種の広がりとともに、観光再開する観光地が増え、旅行者も少しずつ増加しているのだ。

その旅行者の多くは、昨年旅行できなかった分、今年の旅行で奮発する意向で、旅行予算や滞在日数は増加傾向にある。これは「リベンジ旅行」と呼ばれるトレンドであり、大打撃を被った観光産業が復興するための一助となることが期待されている。

エクスペディアCEOも期待する「リベンジ旅行」

オンライン旅行大手エクスペディアのピーター・カーンCEOはリベンジ旅行に期待する1人だ。

GeekWireが伝えたところでは、カーンCEOは投資家へのearning call(収支報告)の中で、リベンジ旅行に言及。どのような名称が付いていようが、人々が旅行に戻ってくることを歓迎すると述べ、リベンジ旅行への期待感を示したという。

2021年第1四半期エクスペディアのホテル予約数は、前年同月比マイナス14%と2020年第4四半期のマイナス66%から回復しつつある状況。カーンCEOによると、旅行者の滞在日数と旅行予算は、普段よりも多くなっているとのこと。

リベンジ旅行トレンドがどれほど影響しているのかは分からないが、投資家の観光産業の見通しも強気だ。2016〜19年頃まで110〜130ドル台で推移していたエクスペディアの株価は、2020年3月に48ドルまで下落したが、その後順調な回復を見せ、2021年5月末時点では170ドル以上と、パンデミック前の水準を超え推移している。

マイアミ2021年3月の様子

リベンジ旅行の促進、ワクチン普及がカギ

多くの人々をリベンジ旅行に駆り立てているのは、ワクチンが普及したという安心感にあるようだ。

リスク対応サービスの米企業Global Serviceの調査では、2021年後半(7〜12月)の旅行に関して、安全性に対する懸念度合いは下がっているとの回答割合は77%に上ったことが判明。Global Serviceは、米国におけるワクチン普及、感染者・入院患者数・陽性者の減少が安心感につながっていると分析している。

安心感の強まりで、海外旅行も増える見通しだ。同調査によると、2021年春〜冬にかけて海外旅行を検討しているとの回答は57%だった。

また、旅行に出かける上で、PCR検査があると安心するとの回答割合は36%だった一方、ワクチンを接種する方が安心感が高いとの回答は73%であることも明らかになった。PCRテストのみでは旅行喚起が難しい反面、ワクチンがさらに普及すれば、旅行者が増加する可能性を示している。

実際、海外旅行に安心して出かける条件には、ワクチン接種(47%)が1位にランクインした。

マイアミやハワイのホテルはすでに満室状態

エクスペディアのカーンCEOが収支報告で語ったところによると、現在米国ではマイアミが旅行者で溢れており、ホテルは満室、レストランも満席で、予約水準はパンデミック前の水準を大きく越えたという。

米国では、マイアミのほかハワイ人気も健在だ。

すでに活況状態にあるといわれるハワイの観光。夏はさらに旅行者が増えることが見込まれている。

夏のピークに備えハワイアン航空は、400人以上の人員を雇用する計画だ。特にマウイ島での人員確保が急務で、緊急を要する職種では雇用契約締結時に2000ドルのボーナスを支給するとのこと。旅行需要の高まりに、一時休暇中の社員を呼び戻したが、それでも対応しきれない状況になっている。

2021年5月初旬の報道によると、現在ハワイアン航空はいくつかの国際線を停止しているが、国際線で使用していた旅客機をテキサス・オースティン、フロリダ・オーランドなど国内線の拡充に活用している。

ホノルルとオーランド、オースティンの2路線に加え、マウイとフェニックス、ロングビーチを結ぶ路線など、新たな国内路線が次々と登場しており、ハワイの観光業は今夏一層活況することが予想される。

ただし、ハワイアン航空が完全に復活するためには、国際線の復活が不可欠だ。

同航空のシャノン・オキナカCEOは2021年第1四半期の収支報告で、今年中にEBITDAがプラスに戻る道筋は見えてきたが、純利益がプラス転換するには、ハワイ島内のフライトと国際線、特に日本からのインバウンド旅行の回復が必要不可欠と説明。パンデミック前、ハワイ島内と国際線を合わせた収益は全体の45%を占めていたという。

ホノルル・関空を結びハワイアン航空(2014年)

夏の旅行シーズン間近、「リベンジ旅行」トレンドは観光産業にどのような効果をもたらすのか、その行方に注目したい。

文:細谷元(Livit