横浜市立大学学術院医学群 臨床統計学 山中 竹春教授、同微生物学 梁 明秀教授、同データサイエンス研究科 後藤 温教授らの研究グループは、昨年8月より「新型コロナウイルス感染症回復者専用抗体検査PROJECT 」を実施し、昨年12月には回復者のほとんどが6か月後も従来株に対する抗ウイルス抗体および中和抗体を保有していることを報告した。
今回の研究ポイントをまとめると以下の通り。
・COVID-19回復者を一定期間追跡した国内最大規模のデータ
・高感度のAIA®-CL抗体検出試薬による抗ウイルス抗体の量と「hiVNTシステム」を用いた迅速測定系の変異株パネルにより、中和抗体を測定
・抗ウイルス抗体、中和抗体のいずれにおいても時間経過に伴う減少傾向を確認
・回復者の多くが、約1年後も検出可能な量の抗ウイルス抗体および中和抗体を保有
・変異株に対する中和抗体保有割合は、従来株に比べて低下する傾向を確認
今回2021年3月末までに採血を実施した約250例のデータを解析し、感染から6か月後と1年後において、抗ウイルス抗体および中和抗体の量はいずれも6か月時点より緩やかに減少する傾向にあることを確認したという。
一方で、依然として多くが抗ウイルス抗体および検出可能な量の中和抗体を有しているという結果も得られたとのことだ。
さらに拡大傾向にある変異株に対する中和抗体の保有割合についても評価を行ったところ、6・12か月時点の中和抗体保有割合は従来株に比べて低下傾向にあることが示されたとしている。
これまで、COVID-19の免疫能の獲得に関して、同PROJECTにおいて、感染から6か月が経過した回復者を対象に参加を募り、同学が開発した精度の高い抗ウイルス抗体検出技術ならびに中和抗体検出技術の2つを用いて感染から6か月後の抗体保有状況を報告してきた。
今回、12か月が経過した検体の抗体測定を行うことで、更なるCOVID-19回復者の長期的な免疫能の獲得について、日本におけるエビデンスの構築に向けたデータを取得することができたとしている。
同研究において開発された全自動抗体検出技術や中和抗体検出技術が、装置と共に社会実装されることで、科学的・社会的意義の高いデータ解析の実施につながり、COVID-19の診断・治療等の向上に役立つことが期待されるという。
今後、変異株の種類のさらなる増加も予想されるため、新たなコロナ変異株が登場した際に、変異株に対する中和抗体保有の状況を集団レベルですみやかに調べることが必要であり、同学の開発した技術を他機関や民間企業などを通じて社会実装につなげられるよう、検証を進める予定を示している。